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年金制度改革案「老齢年金2020」


スイスの年金制度改革をめぐる議会の議論、最終段階に突入




秋の国会で上院に続き下院が28日、女性の年金支給開始年齢を男性と同じ65歳に引き上げることを可決した (Keystone)

秋の国会で上院に続き下院が28日、女性の年金支給開始年齢を男性と同じ65歳に引き上げることを可決した

(Keystone)

スイスの年金受給者数は年々増え続け、老齢・遺族年金(AHV/AVS)制度を圧迫している。1世紀かけて築き上げられてきた社会保障制度を改正する試みは、過去20年間、全て失敗に終わってきた。だが国会で先ごろ、全州議会(上院)に続き国民議会(下院)が、改革案の一つである女性の年金支給開始年齢引き上げを可決したことにより、その歴史が変わろうとしている。

 そろそろベビーブーム世代が定年を迎える時が訪れ、年金の支給額は急増する。そうすれば、年金の財源を提供する「現役」の人口層への経済的負担が増す。50年前は、年金保険料を支払う就労者10人で2人の年金受給者を支えていた。それが今では10人で3人分の年金を負担しなければならない状況にあり、2030年には4人に増えると予測されている。

 スイスの年金制度を支える3本の柱のうち、加入が義務付けられている第1の柱にあたる老齢・遺族年金(日本の国民年金にあたる)では年間約80億フラン(約8400億円)の財政赤字が予測されている。また、就労者の加入が義務付けられている第2の柱、企業年金制度も、平均寿命の延びに加え、企業年金積立金の運用収益が下がり続けていることで影響を受けるとみられる。

財政赤字をどう埋めるか

 このままでは孫世代への年金の支給が困難になり、年金制度の改革が必要不可欠なことについて、議論の余地はない。また老齢・遺族年金と企業年金の支給額を維持する必要性も明らかだ。議論の争点は、「誰が、どれだけ年金保険料を支払うべきか」にある。

 具体的には、国民を長く働かせてその分年金の受給年を短縮させるか、それとも増税などで財源の穴を埋めるのかが議論されてきた。

 そして今、秋の国会で上院に続き下院が28日、女性の年金支給開始年齢を男性と同じ65歳に引き上げることを可決した。今後、この決定に反対するレファレンダムが提起されて国民投票にかけられなければ、女性の定年引上げが施行される。

企業年金額の削減

 第2の柱である企業年金では、給与から積み立てた貯蓄額にかかる年金転換算定率を6.8%から6%へ引き下げる案も、上下院で合意している。例えば、企業年金を10万フラン積み立てた年金者の年間給付額は、6800フランから6000フランへ減ることを意味する。

 だが左派は、企業年金給付額の減額分が何らかの形で補われない場合は、レファレンダムを提起して反対する構えだ。これまでの国民投票の経験から、国民が年金給付額の削減を受け入れないことは明らかであり、企業年金削減案は否決されるという考えだ。企業年金給付額の減額を補う策として、上院は老齢・遺族年金を毎月70フラン増額することを可決。だが下院は、9月25日に行われた国民投票で老齢・遺族年金の1割増しを求めるイニシアチブが否決された結果を受け、給付額増加案を否決した。

若年層への負担が増加

 つまり、すでに決定された企業年金給付額の減額がどのような形で補われるかは、まだ課題として残っている。上院は減額分を企業年金制度内で補うモデル案を僅差で可決したが、若年層は将来的に年金を受けるためにこれまでよりも多くの額を積み立てなければならない可能性が高い。

年金支給開始年齢を67歳に引き上げ

 上院に続き下院は、定年を65歳に引き上げてもなお老齢・遺族年金の財政が窮地に陥った場合、自動的かつ段階的に年金支給開始年齢を最高67歳まで引き上げる案についても可決。この案を右派が「埋め合わせ策」と見る一方で、中道左派は国民の反対は明白だとする。67歳までの定年引上げ案が障害となり一連の年金制度改革案が失敗に終わらないよう、上下院はこの案を年金改革制度案とは別枠で扱うことを決定した。


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(独語からの翻訳&編集・説田英香), swissinfo.ch

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