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ローザンヌで羽を広げるバレエダンサー

ローザンヌバレエ決勝、中尾太亮さん3位、山元耕陽さん4位入賞 1位はミケーレ・エスポジートさん

バレエ
「今日はコンテポラリーのほうが良く踊れた」と山元耕陽さん。コンテンポラリーは、青春の様々な側面を描いたさわやかな作品「Yondering(ヨンダリング)」 swissinfo.ch

2月4日に行われたローザンヌ国際バレエコンクール2017の決勝は、中尾太亮(たいすけ)さんが3位、山元耕陽(こうよう)さんが4位に入賞するという快挙だった。1位は、イタリア人だがチューリヒのバレエ学校で学ぶミケーレ・エスポジートさんだった。エスポジートさんは、特にコンテンポラリーの「ニジンスキー」の圧倒的な演技でベストスイス賞も獲得した。

 中尾さん(17歳)は、愛媛県出身で現在ドイツ・マンハイムバレエアカデミーに学ぶ。昨年もローザンヌに出場したが足の怪我で準決勝の舞台に立てなかったため、「1年振りにここに来て、昨日と今日と2回も舞台で衣装をつけて踊れ、そのことがうれしかった上に賞までいただいて、とにかくうれしいです」と語った。

 「今日は昨日よりも良くできたと自分では思うし、とにかく楽しく踊れた。クラシックとコンテンポラリーではクラシックのほうが緊張した分うまく踊れた」と話した。こう語ったクラシックの「白鳥の湖」は、驚くほど高くジャンプし、ジャンプ以外のポジションもきちんと決まり美しかった。踊った直後、会場から歓声が起こった。

 クラシックのコーチを務めるパトリック・アルマンさんは、中尾さんを「テクニックがしっかりとしてきれいな上に、控えめな優雅さと気品がある。本当に美しい。直ぐにもカンパニーで踊れる力を持っている」とほめた。そしてそれは、惜しくも入賞を逃した太田倫功(りく)さんも同じだと述べた。中尾さんは将来、クラシックに重点を置くカンパニー、例えば英国ロイヤル・バレエ団で踊りたいという。

クラシックのコーチのパトリック・アルマンさんは、中尾太亮さんを「ジャンプを含めテクニックがきれいで正確。それに控えめな優雅さがある。本当に美しい」と絶賛した swissinfo.ch

 アルマンさんは4位で入賞した「アクリ・堀本バレエアカデミー」の山元耕陽さんについても、「彼はスタイルもいいし、感じのいいさわやかなダンサーだ。しかも基礎のテクニックがしっかりしている」と高く評価した。

 入賞後に山元さんは、「決勝の舞台で踊れたことがうれしいし、さらに賞をもらったことがうれしい。これをバネにして海外で活躍したい」と話した。

 「アクリ・堀本バレエアカデミー」の堀本美和先生は、「今年はとてもレベルが高い。そんな中で賞をいただいて、本当にうれしいです」とコメントした。

ゴヨ・モンテロさんのコメント 

 コンテンポラリーのコーチとしてここ数年コンクールに参加し、今年は審査員を務めたニュルンベルク・バレエ団の芸術監督・振付家のゴヨ・モンテロさんは、「今年は本当にレベルが高く、ローザンヌバレエにとっては大成功の年だった。だが、そのために8人を選ぶのはとても大変だった。それぞれのダンサーに個性があり、それぞれが良いからだ」と話した。

 決勝に進出した日本の3人の男子については、「素晴らしいテクニックを持っている」とコメントした後、決勝に進出した女子の藤本結香さんを「彼女は強い個性を持っている。これからの成長が大いに期待できる」と述べた。

1位のミケーレ・エスポジートさん

 1位は、イタリア人だがチューリヒのバレエ学校「チューリヒ・ダンス・アカデミー」で学ぶミケーレ・エスポジートさんが受賞。「ショック状態の中にいる。とにかく信じられない」と喜びを語った。今日のエスポジートさんのクラシックは、空を飛ぶようなジャンプが美しい上に各ポジションを丁寧に決め、観客からブラボーの声が飛んだ。だが、圧巻はジョン・ノイマイヤーが振付けたコンテンポラリー、「ニジンスキー」だった。

「ニジンスキー」で迫力ある踊りを見せるミケーレ・エスポジートさん swissinfo.ch

 ドミートリイ・ショスタコーヴィチの曲の危機感迫る激しい音とリズムに乗って一つ一つの動きに深く感情を込め表現したこのコンテンポラリーに、観客からの割れるよう拍手は鳴り止まなかった。「ニジンスキー」についてエスポジートさんは、「このバリエーションは、ダンサーであるニジンスキーの人生と彼の狂気を表している。だから、その狂気を一つ一つの動きで表そうとした」とコメントした。

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 ところで、今回7位に入賞を果たしたルーマニア人のディアナ・ジョルジア・イオネスクさんも、チューリヒ・ダンス・アカデミーで学んでいる。 

 スイスはローザンヌ国際バレエコンクールの開催国でありながら、過去ほとんど出場者を出さなかった。だが、2015年に同アカデミーからルー・シュピヒティクさんとラウラ・フェルナンデス・グロモヴァさんが出場し、シュピヒティクさんは決勝に進出。翌年にはグロモヴァさんがコンクールに再挑戦して、5位入賞を果たしている。

 そこへ今回の2人の入賞で、同アカデミーの評判はますます高まるだろう。エスポジートさんは6年学んだ同アカデミーのコーチについて次のように話している。「単にテクニックをコーチしてくれるだけではなく、動きの一つ一つの意味を考えるように、そして感情をそれに込めるように指導してくれるところが、素晴らしい」 

審査委員長、「ダンサーには柔軟性が要求されている」

 今年の審査委員長で英国ロイヤル・バレエ団の芸術監督ケヴィン・オヘア氏は、決勝の直前に、同バレエ団のプリンシパルで2008年にローザンヌバレエに入賞した高田茜さんのことを、「とても踊りが美しい上に、コンテンポラリーの色んな動きができる柔軟性がある」とコメント。

 その後にこう付け加えた。「今日プロのダンサーに求められているのはクラシックもコンテンポラリーも両方踊れる力であり、どんな動きにも対応できる柔軟性だ。今回のコンクールでもそれを重視した」


8人の入賞者

1位 ミケーレ・エスポジート 17歳 イタリア

2位 マリナ・フェルナンデス・ダ・コスタ・ドゥアルテ 17歳 ブラジル

3位 中尾太亮 17歳 日本

4位 山元耕陽 15歳 日本

5位 ローレン・ ハンター 15歳 米国 

6位 スタニスワフ・ヴェグジン 18歳 ポーランド

7位 ディアナ・ジョルジア・イオネスク16歳 ルーマニア

8位 スヌ・リム 17歳 韓国


第45回ローザンヌ国際バレエコンクール

同コンクールは、ブランシュバイグ夫妻によって1973年に創設された。15~18歳の若いダンサーを対象にした世界最高の国際バレエコンクールで、若いダンサーの登竜門の一つとも言われる。目的は伸びる才能を見いだし、プロになるための支援をすることにある。

今年は、2017年1月30日から2月4日まで開催。昨年秋のビデオ審査で、17カ国の計74人が選ばれた。このうち日本からは13人。過去11年間、日本はいつも最多の数のダンサーを送り込んできた。

例年通り今年も、二つの年齢グループ(15~16歳と17~18歳)に分かれて4日間コーチを受け、5日目の2月3日には参加者全員が舞台で踊り、決勝進出者20人が選ばれた。

今日2月4日の決勝では、この20人から7~8人の入賞者が選ばれた。全員同額の奨学金を得て、希望するダンススクールかカンパニーで1年間研修ができる。なお、同コンクールには、世界的に有名な53のダンススクールとカンパニーが協賛している。

今年の審査委員は9人で構成され、審査委員長は英国ロイヤル・バレエ団のディレクター、ケヴィン・オヘア氏。またベルギー王立 ロイヤル・フランダース・バレエ団のプリンシパル、齊藤亜紀さんも審査員の1人として参加した。

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