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電力発電


太陽の力、新エネルギーの主力となるか


アンドレアス・カイザー


雪崩予防柵(さく)に取り付けられる太陽光発電装置。ヴァリス/ヴァレー州にて (Keystone)

雪崩予防柵(さく)に取り付けられる太陽光発電装置。ヴァリス/ヴァレー州にて

(Keystone)

太陽エネルギーは今後、スイスの主要な電力源となり、原子力の一部を代替することができると考えられている。太陽光発電業界が早急な設備拡大と助成金を要請する一方で、電力会社はガス火力発電を当面の解決策として提案する。

 スイスの総消費電力のうち、太陽光発電が占める割合は現在わずか1%にすぎない。しかし、この新しい再生可能エネルギーは大きな可能性を秘めている。

 ドイツの電力会社の二番手である「RWE」は、これまで原子力を強く推進していたが、今やその信念をつらぬくことをあきらめ、世界的な原子力プロジェクトからも脱退する意向だ。福島の原発事故後、同社はドイツ国内でのプロジェクトから撤退しなければならなかった。

 ヨーロッパ北部では、巨大なウィンドファーム(集中型風力発電所)が建設されている。また、地中海沿岸で進められている大規模な太陽光発電計画「デザーテック計画(Desertec)」は徐々に具体的な様相を呈してきた。

不明確な枠組み

 スイス政府および連邦議会は2011年、原子力発電所の新たな建設を禁止することを決定した。近いうちに国は基本的な枠組みを作り、エネルギー転換の基盤を整えなければならない。課題となっているのは、今後のエネルギーミックスはどうすべきか、また、それを確保するにはどんな手段があるかを探ることだ。さらに、省エネ対策と脱原発に必要な資金繰りについても検討しなければならない。

 「電力業界は、当然ながら新しい枠組みに適応していくだろう。枠組みが明確かつ信頼のおけるものならば、我々は必要な投資は惜しまないし、電力会社もそれぞれ戦略を立て直すことができる」。そう語るのはスイス電力会社連盟(VSE/AES)広報部のトーマス・ツヴァルド部長だ。

原子力の2割を代替するエネルギーへ

 これまではスイスで消費される電力の約4割を原子力発電が占め、太陽光発電はいわゆるニッチ商品だった。「屋根の上に設置できる分散型太陽光発電装置を用いれば、太陽エネルギーは2割、つまり、原子力の半分を代替することができる。これには緑地などに設置される大規模な太陽光発電装置は含まれていない。残りの半分は、風力発電やバイオマスで補うことができる。また、将来的には地熱発電や小水力発電なども組み合わすことができるだろう」と言うのは、チューリヒ応用科学大学で再生可能エネルギーを教えるフランツ・バウムガルトナー教授だ。

 屋根の上に設置できる太陽光発電装置は、住民だけでなく環境派に反対されることも少ない。そのため、ガス火力発電所やウィンドファームなどの大規模な施設を建設することに比べ、より迅速に設置することができる。

ドイツを手本に

 「太陽光発電の発電量が2割を達成するには、どれだけ早く設備が拡大できるかにかかっている。ドイツでは新しい再生可能エネルギー源による発電量を過去10年間で約13%増やすことに成功した。同じことを達成したいのならドイツの例を模範とするべきだ」とバウムガルトナー氏は言う。

 太陽光発電協会「スイスソーラー(Swisssolar)」のダビッド・シュティッケルベルガー会長はさまざまな研究の成果を基に、太陽光発電で電力消費量の3割から4割を賄えると見積もっている。「現実的には2025年までには2割を達成できる見込みだ」

迅速な対応がかなめ

 太陽光発電がスイスにおいてかなりの可能性を秘めている、という点では電力会社もスイスソーラーも同意見だ。とはいえ、両者に共通するのはそれだけで、いかに迅速にどれだけの電力を太陽光から生産できるか、また費用はいくらかかるのか、といった問題点に関しては両者の意見は二分する。

 「技術的な可能性と経済的な可能性は別問題だ。現実は、太陽光発電には莫大な費用がかかるということだ」とトーマス・ツヴァルド氏は指摘。さらに、シュティッケルベルガー氏は次のように主張する。「(太陽光発電を増やすには)電力固定価格買い取り制度を維持するための資金を増やさなければならない。太陽光発電で総電力消費量の2割を賄うことができると仮定すると、電気料金は1割上昇する見込みだ」

 ツヴァルド氏はまた、こう指摘する。「問題は、ドイツのように莫大な助成金をつぎ込んで太陽エネルギーの利用を急拡大すべきか、もしくは、経済性を重視して太陽光発電設備の価格が下落するのを待つかだ」

当面の解決策としてのガス火力

 一方で、電力会社は原子力の代替として、ガス火力発電所の建設に力を入れている。「まずは原子力の代わりとなるエネルギー源を確保するのが先決だ。ガス火力にたどり着いたのには、さまざまな理由がある。水力発電所の拡大には限界があり、輸入だけに頼るのは、政治的に望ましくないだけでなく非現実的でもある」とツヴァルド氏は説明する。状況次第で、電力会社は4から8カ所に新しくガス火力発電所を建設する予定だ。

 しかし、化石燃料を使用するガス火力発電は二酸化炭素を排出するため、スイスの温室効果ガス削減目標と矛盾する。とはいえ、太陽光発電にも欠点はある。原子力、水力、ガス火力に比べ電力生産量が不安定なのだ。

未来のシナリオ

 常に一定の電力を供給するために、別の案も用意されている。冬は日照時間が短く、発電量が限られる一方で、風の強いバルト海ではウィンドファームがフル起動する。そこで作られた余剰な電力を輸入することで、国内の揚水発電を稼働し、太陽エネルギーの不足分を補うことができるというものだ。

 また、北アフリカやスペインに建設予定の大規模な太陽光発電所は、いずれ年間を通して、安定供給ができるほど十分な電力を生産できるという。

 さらに太陽光発電の余剰分を蓄電池に充電する技術は、近い将来、飛躍的に向上することが期待されている。

 分散型の太陽光発電には送電網の拡張が必要だが、それ以外にもいわゆる「スマートグリッド」の導入が重要になる。これは、最新通信技術を利用して電力の需要と消費を正確に制御し、最適化する次世代送電網だ。

巨額の投資

 太陽光発電を中心とするエネルギーミックスを実現可能にするためには「巨額の投資が必要なことはもちろん、分散して電力を生産することが重要だ。問題は時間と資金の調達だ。そのためには個人投資家が関心を持つような魅力的な条件が必要だ。再生可能エネルギーや送電網の拡張には何十億フランもの資金が必要になるだろう」とトーマス・ツヴァルド氏は言う。

 「新しいことを始めるには、投資は必要不可欠だ。節約を続けながらエネルギー転換の実現を語ることはできない。長い目で見て利益を得たいなら、今は投資するしかない」とフランツ・バウムガルトナー氏も同調する。「エネルギーは常に政治的な課題だ。水力発電の導入にも当初は巨額の投資が必要だったのだ」

エネルギー転換

2011年5月25日、スイス政府は段階的脱原発を決定、連邦議会もこれを承認した。

こうして、2020年から2034年までの間に、既存の5基の原発を寿命まで稼働させた後廃炉にし、改修や新原発建設は行わないことが決まった。

さらに、2012年3月、連邦行政裁判所はミューレベルク(Mühleberg)原発に関し、解決されていない技術的問題が残っているため、無期限の稼働許可を与えることはできないとの判決を下した。

この判決によると、ミューレベルク原発は2013年に廃炉になる。しかし、同原発の運営会社がこの判決に対し異議を唱(とな)えたため、この決定はまだ確定していない。

2012年5月、政府は「エネルギー政策2050」の詳細を発表。

電気消費量の削減(エネルギーの効率化)や水力発電の増強、新しい再生可能エネルギー、そして必要に応じて化石燃料による発電(火力発電所やコンバインドサイクル発電所の建設)や輸入によって電力供給の安定化を図ること目標とする。

さらに、送電網を早急に拡張し、エネルギーの研究開発にも力を入れる。

政府は、2012年の晩夏までにはエネルギー政策をさらに具体化する意向だ。

スイスの電源別発電割合

水力: 55.8%
原子力: 39.3%
その他: 2.9%
新再生可能エネルギー(廃棄物、バイオマスおよびバイオガス、太陽光、風力): 2%

出典:連邦エネルギー省エネルギー局(BFE/OFEN)


(独語からの翻訳、徳田貴子), swissinfo.ch



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