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CERN「宇宙誕生の謎」解明へ出航!

(Keystone)

「やったぞ、大成功だ」と拍手が沸き起こった。9月10日午前10時28分、宇宙誕生の謎に挑戦しようと建設されたセルンの「大型ハドロン衝突型加速器 」内を陽子ビームが初めて1周した。

同日午後には反対方向に入射された陽子ビームも1周を果たし、加速器の機能の完璧さが証明された。世界の数千人の研究者が参加し、15年間かけて建設された世界最強の加速器は、こうして「宇宙誕生の謎」解明への旅の準備を完了した。

ヒッグス粒子を探せ

 「こんなうれしいことはない。この加速器の複雑さを考えるとき、こんなにスムーズに陽子ビームが回ることは予想外だった。器械、チームなどすべての面で質の高さが証明された。参加したすべての国の研究者にお礼を言いたい」
 と「大型ハドロン衝突型加速器 ( Large Hadron Collider / LHC ) 」プロジェクトリーダーのリン・エヴァンス氏は興奮気味に語った。

 LHCは、宇宙が誕生した瞬間を人工的に再現する目的で、ジュネーブのフランスとの国境に位置する「セルン ( 欧州合同素粒子原子核研究機構・CERN ) 」で建設された。宇宙の誕生、すなわちビッグバンが起こった1兆分の1秒後の宇宙と同じ温度 ( エネルギー ) を、光とほぼ同じ速度に加速された陽子ビーム同士を正面衝突させることで作り出す。

 ビッグバン直後は、すべての素粒子が質量を持たず光速で飛び、エネルギーだけが存在するような世界だった。やがて宇宙の温度が下がるにつれ、クォークや電子などの素粒子は「ヒッグス場」の抵抗によって質量を持つようになる。しかし、物の重さ ( 質量 ) の起源となる「ヒッグス場」の存在を証明するには、最低1個でも「ヒッグス粒子」が見つからなくてはならない。LHCの第1の目的は、実はこのヒッグス粒子の発見にあるという。

 さらに、1年ほど前からその存在が理論的に考えられ、我々の体を絶えず突き抜けていながら、目には見えない暗黒物質 ( ダークマター、光が無い物質 ) と呼ばれる新粒子の発見も期待されているという。

水平線の向こうにはヒッグスの大陸

 「今日は、長年苦労して作り上げたLHCがやっと始動した、記念すべき日だ。しかしこれで終わりではない。水平線の向こうにはヒッグスの大陸が見え、それを探索に行く船が完成した気分だ。今日はその竣工式だ」
 と、セルンの「アトラス ( Atlas ) ジャパン」の指揮を執ってきた、近藤敬比古 ( たかひこ ) 教授は、完成を祝いながら今後の抱負を熱く語った。

 日本人研究者100人が参加するアトラスは、陽子ビームが衝突するLHC内の 4カ所に設置されている大型の実験装置だ。ラオバルの「シーエムエス ( CMS ) 」と同様、ヒッグス粒子と理論上予想のついている、新粒子の発見を主な目的にしている。

 このアトラスでは、陽子ビームの1秒間に10億回の衝突から、重要に思える1秒間100回の衝突のみを選び、15秒でDVD ( 5GB弱 )1枚分のデータとして記録していく。この膨大な情報はドイツ、フランス、日本などにコンピューティンググリッド技術で送られ、参加するすべての研究者にアクセスが可能だ。データ解析は各国で分担して行われるという。

 今回の試運転では、陽子ビームは0.45TeV ( 4500 億電子ボルト ) のエネルギー で一周したが、加速はされなかった。加速器の調整を行った1、2カ月後に、初めて5 TeVにまで加速されたビームが正面衝突する。7 TeVまで加速して衝突させ、ビッグバン直後に近いエネルギーを作り出すのは2009年になってからだ。
 
 しかし、ビッグバン直後を再現できるようになっても、ヒッグス粒子を発見するのは、近藤氏によれば、
「世界何億人の人の中から特定の1人を探し出すより難しい」

 だが、2、3年後ヒッグス粒子などが見つかったとき「宇宙誕生の謎」ひいては「我々はどこから来たのか」という根源的な問いに答えが出される。さらに、「今は純粋に素粒子物理学の探求である」という研究プロセスも、1990年にインターネットの技術がセルンで構築されたように、いつか人類の歴史を塗り替えるような発見につながる可能性も秘めているという。

swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 

大型ハドロン衝突型加速器 ( Large Hadron Collider / LHC )

約55億フラン( 約5500億円 ) をかけて「セルン ( 欧州合同素粒子原子核研究機構・CERN ) 」に建設された世界最強の加速器。

1994年に建設が認められ、以後15年間かけて作られた。

宇宙誕生の瞬間に近い状況を再現するため、陽子ビームを、地下約100メートルから150メートルに埋められた全長27キロメートルのリング内をほぼ光速で1周させ、反対方向に入射した陽子ビームと4カ所で、正面衝突させる。

この4カ所には、「アトラス ( Atlas ) 」、「シーエムエス ( CMS ) 」、「アリス( Alice ) 」、「エルエイチシービー ( LHCb ) 」の大型実験装置が設置されている。

日本の研究者約100人は、「アトラス ( Atlas ) 」に参加している。アトラスは高さ25メートル、奥行き44メートルある大型実験装置。

本格的な陽子ビーム衝突の実験は2009年に行われ、結果は2、3年後に出ると考えられている。

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(swissinfo.ch)

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