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COP21プレスレビュー


「パリ協定」温暖化対策で歴史的合意を達成、今後の課題は対策の具体化




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感動的な一瞬。COP21の2週間にわたる交渉の末、温暖化対策への合意に至ったことを宣言する議長ファビウス仏外相 (Keystone)

感動的な一瞬。COP21の2週間にわたる交渉の末、温暖化対策への合意に至ったことを宣言する議長ファビウス仏外相

(Keystone)

パリで開催された国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)では12日、地球温暖化を阻止するための「歴史的合意」と評される「パリ協定」が採択された。今後の最大の課題は、この野心的な目標の達成に向け対策をどう具体化するかだ。そこには大きな仕事が待ち受けているが、スイス各紙は経済にとって気候変動対策は一つのチャンスになりうるとし、むしろ楽観的な見方をしているようだ。

 「これは歴史に残る偉大な出来事だろうか、それとも四半世紀前から行われてきた偽善的な気候政策の単なる持続なのだろうか?」。スイス紙の大半がそうであるように日刊紙NZZは、「パリ協定」に満足感を示しながらも、この野心的な目標を前に慎重さものぞかせる。

 仏語圏のル・タン紙は「主な温室効果ガス排出国を含む世界の約200カ国がお互いの意見の食い違いを超え、気候変動に立ち向かうために合意に至った。(中略)パリ協定によって示された野心は喜ぶべきものだ」と評価する。

「パリ協定」

温暖化対策で、1997年に採択された京都議定書に代わる新たな枠組みとなる「パリ協定」は、地球の気温上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑えるという目標を定め、同時に「気温上昇を1.5度未満に抑えるという努力を続ける」としている。また、2025年から5年ごとに、目標実現への各国の取り組み状況を点検することや、途上国に対する資金援助の増加も盛り込まれた。

途上国への資金援助は、20年以降年間1千億ドル(約12兆円)を下限とし、そこから増額されることが望まれている。資金援助は、途上国が長年にわたって要求していたものだ。

パリ協定により、世界経済がCO2排出削減という新たな方向に向かうと期待されている。そのための改革には、現在世界的にエネルギー源として使用されている化石燃料(石炭、石油、天然ガスなど)の放棄、再生可能エネルギーの飛躍的な促進、エネルギー効率の改善、森林保護の強化などが含まれている。

 だが一方で「人間の活動による温室効果ガス排出量の4分の3の原因である化石燃料は、将来の私たちのエネルギーには必要ない」とし、今後重要なのは、これまでよりも大きく先に進んだ温暖化対策を実行することだ、と指摘する。

 そして、太陽光や風力による発電のコストが劇的に下がったこと、金融セクターの一部で、今後はリスクが大きいとして化石燃料への投資が止められつつあること、また最高レベルの大気汚染に達した中国は、排出削減対策をとるほかに道はないことなどを挙げ、世界は低炭素経済に向かっているとまとめた。

次のチェックは2016年

 仏語圏日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブは、パリの交渉結果を「驚異的だ」と報じた。その社説では、準備段階でフランス外交団によってもたらされた勢いが米国、中国、南アフリカ、インドといった「巨人」を動かし、共に前進させたとし、「温暖化と汚染の被害を直接受けている国々の(取り組みへの)誠実さは、今のところ疑う余地はない。だが、サウジアラビアやベネズエラなど石油産出国が、パリ協定にどのように従っていくかを見守るのは興味深い」と述べる。

 フリブール州のラ・リベルテ紙は、COP21が示した今後の「進路」を評価しながらも、この31ページにわたる協定には目標達成のための方策が欠けていると指摘する。「この協定で世界中が安堵(あんど)したとしても、世界の状況が変わったわけではない。地球の気候の秩序を守るために、一日でも早く各政府は行動を起こすときが来ている。まずは各国議会による批准の署名手続きの始まる16年の春に、それが試される」

 歴史的な合意に至ったことは事実だが、それで世界が救われたわけではなく、化石燃料への依存から脱出するまでの道のりも長く大変なものになる。ドイツ語圏の大衆紙ブリックは、「パリ協定は、これまで環境保護問題を『夢見るエコロジスト』の問題だと考えていた人々への警告だ」と賞賛する。だが同時に、気候に関する次の議会討論でこのサインが無残にも無視される可能性にエコロジストたちは気づいていない、とも書く。

奇跡?それとも惨事?

 具体策が欠けていると同様の見方をするのは、アールガウ州の日刊紙アールガウアー・ツァイトゥング紙だ。「今回承認された措置は、目標達成のための基礎でしかない」。

 さらに批判的なのは、英紙ガーディアンの一節を引用して「パリ協定は、合意に至らなかった場合に比べれば『奇跡』といえるが、合意されるべきだった内容に比べれば『惨事』だ」というル・クーリエ紙だ。

 このジュネーブ州の左派日刊紙は、今後の進行スケジュールを疑問視し、協定が再生可能エネルギーに関する自発的行動に欠けると糾弾する。排出削減目標の達成にはクリーンエネルギーへの移行の必要性はもっともだが、その他の方策としてのCO2の相殺や隔離のメカニズム、化石燃料依存からの脱出が全く考慮されていないこと、そしてCO2を大量に排出する航空機の使用などが問題視されていないことなども指摘している。

気候変動対策は収益につながる

 また、世界レベルの温暖化対策において「豊かな国スイス」が、より大きな役割を果たすよう求めるのは日刊紙ターゲス・アンツァイガーだ。今後、目標達成のための国内対策をどう改善していくかを決定するのは議会だが、その議会で多数を占める右派は、温暖化対策は経済や金融機関、保険会社にとってチャンスであるにもかかわらず環境問題に耳をかそうとしていない、と嘆く。

 グラウビュンデン州の日刊紙ズュートオストシュヴァイツは、パリ協定が採択された今、気候変動対策に投資する価値があると断言する。「国の競争力は、エネルギー転換の速度で測ることができる。それは企業や投資機関にとっても同様だ」

 電動飛行機ソーラーインパルスの生みの親であり、太陽光エネルギーのみで世界一周を目指すベルトラン・ピカール氏の考えも同じ方向性だ。経済金融紙アジェフィでピカール氏は、物事を前進させるものは「問題」ではなく「利益」だとし、「問題を語るより、既にある解決策について語ろう。今では、エネルギー効率を上げ、CO2排出量と資源の使用を半減できるだけのクリーンテクノロジーが十分に存在する。(中略)今後アピールしなければならない相手は、あきらめかけた寄付者ではなく、収益性を求める投資家たちだ」と述べている。


(仏語からの翻訳・編集 由比かおり), swissinfo.ch

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