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ナチスが略奪?貴重な美術品をベルン美術館が公開

絵画
ベルン美術館の作品展 Keystone

ナチスに略奪されたとみられる貴重な美術品を集めた作品展「Gurlitt: Status Report Part 2(グルリットの状況報告 第2部)外部リンク」が、ベルン美術館で開かれている。

 所有していたのは、ドイツ人の故コーネリウス・グルリット氏。2012年、独ミュンヘンにある同氏の自宅アパートを家宅捜索した税関職員が、何千点にも及ぶ美術品を見つけた。同氏はナチスの専属美術商だった父親ヒルデブラント・グルリット氏から受け継いだこれらの美術品を少しずつ密売し、生計を立てていたという。

 グルリット氏は14年に死去。同氏の死後、所蔵品をベルン美術館に遺贈するという遺言が見つかり、大きなニュースになった。

展示されたコレクションの数々

 作品展は2部構成。昨年、ベルン美術館とドイツ・ボンのドイツ連邦共和国美術展示館外部リンクでそれぞれ第1部が開かれた。ベルン美術館では昨年11月から今年3月まで「Entartete Kunst(退廃芸術)外部リンク」と題し、グルリット氏のコレクション約160点を展示。当時の歴史的な背景にも触れた。今回の第2部は、昨年ボンで開かれた内容と同じものだ。

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「ナチスによる芸術品略奪とその結果」

 今回の作品展は「Nazi Art Theft and Its Consequences(仮訳:ナチスの芸術品強奪とその結果)」がテーマ。ヒルデブラント・グルリット氏の役割に焦点を当てた。

 ヒルデブラント氏は母方がユダヤ人だったが、のちにナチス専属の美術商となった。ヒトラーが当時建設しようとしていた「総統美術館」のバイヤーも任され、これらの芸術品はユダヤ人アーティストやコレクター、画商などから破格の値段で買い上げたり、強制的に没収したりしたという。

 作品展にはヒルデブラント氏が入手した絵画や彫刻など計130点が並ぶ。ベルン美術館は「不当に没収されたとみられる全ての芸術品が一堂に会した」と強調。一部はすでに持ち主に返されたが、今回の作品展のため貸し出しを受けた。モネやロダン、ディクスらといった著名な画家の名前も並ぶ。

 作品展は7月15日まで開かれている。

グルリット氏のコレクション

コーネリウス・グルリット氏のコレクションは絵画や彫刻、印刷物、描画など1557点に上る。その中にはマティス、リーバーマン、ピカソ、シャガール、ディクス、ドガなどといった巨匠の作品もある。

ベルン美術館によると、このうち6点が略奪されたもので、4点は本来の持ち主に返還した。4月18日現在で、ナチスに略奪されたと疑われるものは61点あるという。

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ナチス略奪の「退廃芸術」コレクションがついに公開

このコンテンツが公開されたのは、 ナチスに略奪された絵画のコレクション展「Entartete Kunst(退廃芸術)」が、ベルン美術館で2日、始まった。これらの作品が一般公開されるのは初めて。来年3月4日まで。

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(英語からの翻訳・宇田薫)

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