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ファインダー越しの民主主義
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米大統領選

ファインダー越しの民主主義

Cédric von Niederhäusern


 (swissinfo.ch)

11月8日は米大統領選の投票日。米国民は第45代大統領を選ぶが、選挙戦では米国社会が抱える様々な問題点をめぐって、歴史的に前例のないほど世論が二極化した。

 ベルン出身の若き写真家セドリック・フォン・ニーダーホイゼルンさんは1年前に渡米。写真ジャーナリストを目指し、ニューヨークの国際写真センター(ICP)で勉強している。ギムナジウム(スイスの中等教育機関)を卒業後、スイスの様々なメディアでインターンを経験した。見習い先のターゲス・アンツァイガー紙写真部の上司の勧めで、ICPに入学願書を提出。合格通知を受けて3カ月後には、世界中からやってきた学生たちとニューヨークで生活を開始した。

 以前から政治と社会に興味があり、大統領選に照準を絞った。写真はICP教育課程で撮影したもの。

オハイオ州クリーブランド、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

オハイオ州クリーブランド、2016年7月

ニューハンプシャー州 エクセター、2016年2月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

ニューハンプシャー州 エクセター、2016年2月

「終わりのない貧困」、オハイオ州クリーブランド、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

「終わりのない貧困」、オハイオ州クリーブランド、2016年7月

 「ニューヨークは米国を初めて肌で感じた街。子どもの頃に両親と来たことはあったが、あまり覚えていない。そのため、何もかもが新しく、自分を取り巻く新しい環境をオープンに受け入れられた。仕事に関しては『部外者』の立場だったが、選挙の年に渡米するのは特別だってことに、すぐに気がついた。世間のムードは張り詰め、人々はピリピリしている。何かが空気中に漂っていた」

 「まず、米国における軍隊の役割を写真に収めることにした。権力や戦争といったテーマへの考え方は、スイスとはまるで違う。ニューヨークで退役軍人の日のパレードを撮影するまで、軍隊のパレードは一度も見たことがなかった」

射撃クラブ「Amarillo Rifle and Pistol Club」、テキサス州アマリロ、 2016年1月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

射撃クラブ「Amarillo Rifle and Pistol Club」、テキサス州アマリロ、 2016年1月

 「スイスの新聞社の依頼を受けて、共和党の動きを報道するため、現地特派員とテキサス州アマリロに向かった。ニューヨーク市を初めて離れることになり、僕にとって新しい視点が開かれた。アマリロはトラック運転手の町。米国を横断する国道ルート66が通り、はるか遠くまで見渡せる農業地帯だ」

 「ここでは例えばゲーリー・ハッスルさんに会った。射撃場のインストラクターで銃収集家、もちろん全米ライフル協会(NRA)の会員でもある。最近起きた数々の銃乱射事件の記憶がまだ残っている中で、僕は突然、この優しく親切で自信にあふれた米国人に対面することになった。ニューヨークとアマリロはあまりにも違いすぎる。心の葛藤が解消されることはなく、仕事中ずっとそのことが頭から離れなかった」

コロラド州出身のサマンサ・ぺデンさん、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

コロラド州出身のサマンサ・ぺデンさん、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月

ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月

ニューハンプシャー州エクセター、2016年2月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

ニューハンプシャー州エクセター、2016年2月

 「スイス人であることは大きな助けになると思う。スイス国籍というより、スイスがいまだ外国から認められている独立性と中立性のイメージによるところが大きい。スイス人の僕は『不参加の傍観者』であり、何の利益も代表しない。代表するのは、小国スイスだけだ」

オハイオ州クリーブランド、2016年7月

CNN 特派員サラ・ガニムさん、ニューヨーク州マンハッタン、2016年3月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

CNN 特派員サラ・ガニムさん、ニューヨーク州マンハッタン、2016年3月

 「米大統領の座をめぐる選挙戦は多くの写真ジャーナリストにとってキャリアの出発点。候補者間のやり合いに的を絞ったり、欺き、歓喜、不合理な場面にこだわり、そうした場面を暴いたり、コメントしたりする写真家は多い。僕自身はそうしたことには慎重だ。このテーマが重大だからだ。こうした選挙で下される決定は、どんな演出があったとしても、本物だ」

サンセット・パーク、ニューヨーク、2016年4月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

サンセット・パーク、ニューヨーク、2016年4月

米オバマ大統領、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

米オバマ大統領、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月

民主党の選挙演説、ニューハンプシャー州マンチェスター、2016年2月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

民主党の選挙演説、ニューハンプシャー州マンチェスター、2016年2月

「米国の田舎はとても印象深かった。もちろん先入観に裏づけされたことも多かったけれど。ほかの人は米国に強い魅力を感じるけれど、僕にはそうした感覚が元々なかった。だから、憧れから来るような米国のイメージには、まあまあ免疫がついていた。僕が興味を持ち、引き留めるものは人であり、写真を通して人と知り合える可能性だ」

 「米国に対して批判的な見方はある。特に選挙戦に関して、僕たちにとっては馬鹿げていたり、理解しにくかったり、愚かに見えたりする場面が数多くある。渡米から1年経って初めてスイスに戻ったが、こうした意見に対しては『うん、そうだね。だけど…』と返事をしようと思っている。僕が昨年訪れたのは50州中10州未満。ニューヨーク州、テキサス州、ニューハンプシャー州、ミネソタ州、ペンシルべニア州、オハイオ州、バージニア州だ。僕が米国で見たのはごく一部分。だが、自分の人生の一部であり、その年に自分が経験したほんのわずかな個人的な思い出も含まれている」

民主党の選挙演説、ニューハンプシャー州マンチェスター、2016年2月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

民主党の選挙演説、ニューハンプシャー州マンチェスター、2016年2月

 「僕のやり方はどちらかと言えば詩的で、客観的であることを目指していない。写真には僕自身が多く投影されていて、シンボルを通じてそれが表れることもある。写真が自ら語りかけると同時に、見る人を一つの方向に導きたい」

抗議運動「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」の集会に出動する警察、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

抗議運動「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」の集会に出動する警察、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月

マルコ・ルビオ氏(共和党)の出馬を応援する支持者、ニューハンプシャー州ロンドンデリー、2016年2月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

マルコ・ルビオ氏(共和党)の出馬を応援する支持者、ニューハンプシャー州ロンドンデリー、2016年2月

民主党全国大会、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月

 「これは、民主党のバーニー・サンダース上院議員を応援したい若者たちが行った数あるイベントの一つを撮影したもので、予備選挙中にニューヨークで撮った写真。写真には若者たちの不満も表れている。政治制度は操作され、政治機関への信頼が失われているのだ。信頼の失墜は、国をもともと信用しないトランプ支持者よりも、若い民主党支持者の間で強く表れているように思える」

民主党全国大会、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

民主党全国大会、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月

 「手にバラを持った女性警察官の写真。撮影直前に、フロリダ州オーランドではゲイが集まるナイトクラブで銃乱射事件が起きたが、現地の出来事とこの写真にあまり関連性はない。しかし、この写真は米国で相次ぐ白人警官らによる黒人射殺事件や、黒人による警官襲撃事件をめぐる議論で激しく揺れる情動を呼び起こす。この写真はこうした事件すべてを表しており、僕の仕事の『非ジャーナリズム的な部分』を表現している」

共和党全国大会、オハイオ州クリーブランド、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

共和党全国大会、オハイオ州クリーブランド、2016年7月

 「最初は仕事で苦労した。ニューヨークの反トランプ運動を撮った最初の写真は、自分がその場にいたことを証明するに過ぎないように思えた。あまたある写真の中からどうしたら自分の作品が突出できるだろうか。同じようなことをしている写真家が何千人もいる中で、どうすれば生き残れるだろうか。そんなことを考えていた」

米大統領候補ヒラリー・クリントン氏(民主党)の選挙演説、ニューハンプシャー州マンチェスター、2016年2月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

米大統領候補ヒラリー・クリントン氏(民主党)の選挙演説、ニューハンプシャー州マンチェスター、2016年2月

民主党全国大会、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2016年7月

 「写真に子どもや若者が度々登場するのは、おそらく僕もかなり若いからだろう。子どもたちは選挙関連のイベントに連れて行かれ、都合の良いように利用されることもある。子どもたちに発言権はないが、政治プロセスの中で重要な役割を担っていると思う。彼らはこの制度の中で育ち、今日下された決定が彼らの人生に影響を与える。彼らは未来も象徴している」

この前日、フィランド・キャスティルさんが警官によって射殺される事件が起きた。写真は恋人のダイヤモンド・レイノルズさん、ミネソタ州セントポール、2016年7月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

この前日、フィランド・キャスティルさんが警官によって射殺される事件が起きた。写真は恋人のダイヤモンド・レイノルズさん、ミネソタ州セントポール、2016年7月

米大統領選挙に民主党から出馬したバーニー・サンダース氏の集会、ニューヨーク市ブロンクス区、2016年3月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

米大統領選挙に民主党から出馬したバーニー・サンダース氏の集会、ニューヨーク市ブロンクス区、2016年3月

 「ブロンクス区の学生たち。彼らにとって今回が初めての選挙戦だ。彼らは僕と同年代で、おそらく僕個人の政治的立ち位置にとても近いだろう。それでも距離感はある。バーニー・サンダース支持かトランプ支持か、僕がイデオロギーに感化されることはない。もちろん僕だって候補者の誰かをとても身近に感じはするが、それでも盲目的に誰かに追従することには抵抗がある」

ヘイディ・アニマス・ラズカノサン、テキサス州ラレド、2016年4月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

ヘイディ・アニマス・ラズカノサン、テキサス州ラレド、2016年4月

退役軍人の日のパレード、ニューヨーク州マンハッタン、2015年11月 (© 2016 Cédric von Niederhäusern)

退役軍人の日のパレード、ニューヨーク州マンハッタン、2015年11月

写真

Cédric von Niederhäusern

Thomas Kern(2016年9月14日に写真家ニーダーホイゼルンさんと行ったインタビューの一部)

写真編集

Thomas Kern

プロダクション

Luca Schüpbach、 Felipe Schärer

翻訳

鹿島田芙美

著作権

swissinfo.ch