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スイスの脱原発のゆくえ


ミューレベルク原発、スイスで初の廃炉に決定 残る原発の寿命には制限なし




2010年の検査で、シュラウド(炉心隔壁)の亀裂などが見つかったミューレベルク原発の炉心。この原発は福島第一原発と同じ型だ (Keystone)

2010年の検査で、シュラウド(炉心隔壁)の亀裂などが見つかったミューレベルク原発の炉心。この原発は福島第一原発と同じ型だ

(Keystone)

スイスの電力会社BKWは先週の3月2日、同社が運営するミューレベルク原発を2019年12月20日付けで稼動停止し、廃炉にすると正式に発表した。これはスイス初の廃炉にあたる。一方この発表が行われたちょうどその日、連邦議会の下院が、原発の寿命に制限を設けないと決定。これは上院の決定に添ったもので、この結果、スイスでは原発の寿命に制限がなくなる。この決定とBKWの発表は「偶然ではない」と日刊紙ル・タンは言う。  

 「ミューレベルク原発の稼動停止は、スイスの全5基の原発を監視する連邦核安全監督局(ENSI)の要求に応えたものだ」とBKWはこの日、説明した。 

 だがBKWは、問題が度重なるミューレベルク原発の廃炉を13年にすでに決めており、稼動停止後の廃炉工程計画も練ったうえで1年前の3月、原発周辺の住民に対しその説明会を行っている。そのときの資料によると、第1ステップは使用済み核燃料の取り出しとその輸送で、核燃料は稼働停止後の2020年から取り出され、原発内のプールで約5年間冷却される(20~24年)。 

 その後、2024~30年には、原発内部の放射能汚染されたインフラ施設の解体・除去が行なわれる。第2ステップは、汚染されていない建物の解体にあてられている(30~34年)。

 今回の発表によると、こうした工程計画は、昨年12月に国の環境・エネルギー省に提出済みで、この4月からは解体作業の安全性や費用などが査定され、今年末には最終的に承認される予定だ。

世界一古い原発

 ところで、残るスイスの4基の原発のうち、1969年に建設された世界一古いベツナウ第一原発(BeznauI)が、昨年7月から稼動を一時停止している。これを運営している電力会社アクスポ(Axpo)は、早くて今年7月からの再稼動を見込んでいると説明するが、「巨額な修理費を計算すると、ほぼ間違いなくベツナウ第一も廃炉に追い込まれる」と、ル・タン紙はみている。 

 また、ベツナウ第一とミューレベルク原発が現在生産している電力はスイス全体の1割を占めるが、その発電量は水力と太陽光発電で十分に補えると、BKWもアクスポも見積もっているという。

原発の寿命に制限なし

 一方、ミュールベルク原発の廃炉が正式に発表されたその日、連邦議会の下院ではエネルギー政策「エネルギー戦略2050(SE2050)」が討議されていた。

 このエネルギー戦略は、段階的脱原発を求めて緑の党が提案した2003年のイニシアチブ(国民発議)に対する対案として連邦政府が出したものだ。当初の案では再生可能エネルギーの推進や電力消費量の削減、段階的脱原発などを掲げている。

 しかし脱原発に関しては、今後新しい原発を建設しないとしながらも、既存の原発の寿命についての決定がなく、今回下院で審議されたのがまさにこの点だった。結局、「原発の寿命に制限を設けないこと」を賛成多数で決定した。(賛成131、反対64)

 賛成派の主張は、たとえ連邦核安全監督局が、電力会社の意向に反して稼動停止を要求したとしても、原発から上がる利益と修理費をはかりにかけて、最終的には電力会社が決定を下すものだという。ただし、連邦核安全監督局が10年ごとに安全性を確認した上で稼動許可を更新するという条件は付けた。

偶然ではない

 下院による原発の寿命延長決定とミュールベルク原発稼動停止の発表が同日だったことをル・タン紙が「偶然ではない」としたのは、同原発とベツナウ第一が廃炉になった場合、残る3基の寿命に対し圧力をかけるのを避け、できるだけ寿命を延ばしてその間に再生可能エネルギーや水力発電の生産能力をさらに高めたいと下院が判断した、と見てるからだ。

 また現在、下院(200議席)は、原発維持に賛成の右派国民党(65議)と経済・産業界の利益を代表する右派・急進民主党(33議)の両党が半分を占めるが、今回、延長賛成が過半数を超えたのは、「エネルギー戦略2050のパッケージそのものがこの二つの党に反対されるよりも、原発の寿命延長に賛成することのほうを選んで寝返った」キリスト教民主党などからの票が入ったからだと、ル・タン紙は説明している。

 この下院の決定は、昨年の上院の決定と同じものであったため、今後「スイスの原発の寿命に制限はない」ことが連邦議会の決定になった。しかしそうなると、残る3基の原発の寿命はアメリカ並みに60年などにもなり、エネルギー戦略2050の一つの柱である「段階的脱原発」のゆくえもあやしくなってくる。

 こうした結果に対し原発に反対する左派政党は、原発の寿命に制限を設けるべきだったと主張している。緑の党のバスティアン・ジロ議員は資料を振りかざしながら、「今回の下院の決定は完全な間違いだ。原発は、稼動年数が増えれば増えるほど安全性が低下していく」と怒りをあらわにした。スイスエネルギー基金(SES)の代表も「連邦議会は、福島第一原発事故から何も学ばなかった」と嘆いた。

 今後、「エネルギー戦略2050のパッケージ」の他の議題、例えば再生可能エネルギーの推進資金などについて両院でさらに議論が続く。

スイスの電力供給

水力: 55.8%

原子力: 39.3%

その他: 2.9%

新再生可能エネルギー(廃棄物、バイオマスおよびバイオガス、太陽光、風力: 2%

出典:連邦エネルギー省エネルギー局(BFE/OFEN)、2012年 

スイスの5基の原発

ミューレベルク原発(Mühleberg)、1972年建設。首都ベルンからわずか20キロに位置する。373MW

ベツナウ第一原発(BeznauI)、1969年に建設された世界一古い原発。365MW

ベツナウ第二原発(BeznauII)、1971年建設。これも44年が経過する。365MW

ゲスゲン原発(Gösgen)、ソロトゥルン州にあり1979年建設。985MW

ライプシュタット原発(Leibstadt)、アールガウ州にあり、最も新しく1984年建設。1190MW

swissinfo.ch

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