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難民収容施設


難民申請者の一時収容施設に「イケア・ハウス」を導入




試験的に組み立てられた「イケア・ハウス」 (Keystone)

試験的に組み立てられた「イケア・ハウス」

(Keystone)

スイスへ流入する難民申請者の数が日々増加する中、こうした申請者の一時収容施設の不足が各州で深刻化している。アールガウ州もその例外ではない。同州はその対策として、「イケア・ハウス」の購入を決定した。しかしなぜ、「イケア・ハウス」なのか。その背景を探った。

 今年に入り、アールガウ州でも難民申請者の数が急増している。難民申請者の一時収容施設として、これまでに病院施設、民間救護施設、核シェルターをはじめとする既存の施設が使用されてきたが、これらもすでに満員状態だ。この先さらなる難民申請者の増加が予測される中、同州は追加の一時収容施設の確保を課題に抱える。

 その対応策として、アールガウ州は「イケア・ハウス」とも呼ばれている仮設住宅の導入を決めた。世界中の難民キャンプで生活をする人々の暮らしの改善を目的に、ベター・シェルター社によって同仮設住宅は開発された。開発のために国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とイケア基金が資金的援助を行った。同仮設住宅は数年前にイラクとエチオピアの難民キャンプで試験的に導入され、今年より大量生産が行われている。

 仮設住宅の広さは約17.5平方メートル、収容可能人数は5人。通常のイケアの家具同様、組み立て方法は図で説明されているため、言語に関係なく誰でも組み立てることができる。組み立てには大人5〜6人が必要となり、要する時間は約半日だ。同仮設住宅には暖房設備が備わっていないため、寒い時期の野外での使用は難しい。従って、当面は屋内で使用する他に方法がない。その候補に挙がったのがアールガウ州の州都アーラウから18キロメートルほど離れた、フリックという自治体にある工場跡地だ。

工場跡地に50軒の仮設住宅を設置

 以前工場だった2つの大きなホールに、50軒のこの仮設住宅が設置される計画で、難民認定を待つ約300人が、そこで生活することになる。アールガウ州での審査期間は平均400日。仮設住宅はこの期間の共同生活において、プライベート空間を確保してくれる。

 ホールの一つは男性用、もう片方は家族用だ。男性用の仮設住宅には、簡易ベッドと収納棚、家族用にはベッドや収納棚の他に、ソファー、机、椅子などが設置される。敷地内には、コンテナによる共同のトイレ、シャワー、炊事場、洗濯室、談話室などが用意される。また、敷地内では子供や成人に向けた教育も行われる予定だ。

 アールガウ州の保健・社会問題当局、軍事・人民救済担当のアンデレーアス・フリュッキガー部長によれば、フリックの住民による大きな反対は、これまでに起こっていない。難民申請者の一時収容施設の設置に対して、住民は歓迎の姿勢を示してはいないが、早急に解決されるべき問題の現実的な対策の一つとして受け止めており、従って、住民の反対が原因でこの計画が頓挫(とんざ)することは今のところ考えにくいと彼は言う。しかし、この計画が実現するには、設備などに関する自治体の建設許可が必要で、その許可が下りるのは2016年2月以降になりそうだとフリュッキガー部長は予測している。

災害対策の一環として購入

 住民からの大きな反対はこれまでになかったとはいえ、スイス国内のメディアで同州の仮設住宅導入について報道が行われた際、「難民申請者のプライベート空間を確保する目的で、仮設住宅を購入する必要はない」との批判的な声が一部の読者から挙がった。これに対しフリュッキガー部長は、同仮設住宅の購入は実は昨年から別の分野においてすでに検討されていたものなのだと言う。

 2007年よりアールガウ州では、自然災害から人為災害に至る各リスクとそれに対する対策・管理の調査が法的に義務付けられていた。

 同調査の結果、強化すべき40の課題が浮き彫りとなった。そのうちの一つが、あらゆる災害における住民の一時避難収容所の確保だ。アールガウ州では各住民に対して1カ所の一時避難収容所が用意されており、これまでの危機管理対策に不備はないと思われていたが、実際はそうではなかったとフリュッキガー部長は苦い顔をして言う。その具体例として彼は次の二つを挙げる。

 地上での一時避難収容施設の不足が明らかになったのが一つ。アールガウ州では避難収容所の多くが地下に設備されているが、地震や洪水の際、住民を地下に避難させることは好ましくない。

 次に、移動可能な一時避難収容施設の必要性が問われた。州内に原子力発電所が多く集中しているアールガウ州は、2011年の東京電力福島第一原発事故直後、とりわけ住民避難に関する項目を再調査した。そこで新たな課題が浮上。これまでの対策では、主に原子力発電所から20キロメートルの範囲内を高線量区域と定義していた。しかし、福島第一原発事故の経験により、現場から離れた地域でも放射性がホットスポットを発生させることがわかったのだ。

 さらに、これまでに導入を考えられていた軍用テントを使用する場合、実際に人が住める状況になるまでに約2日間もかかる点が問題となった。

 こうしたことから、短期間で設置可能かつ移動可能な一時避難収容所の確保が必要とされ、その候補の一つに挙がっていたのが「イケア・ハウス」だ。しかし、昨年の段階でこれは長期的な課題にすぎず、さほど緊急性を有するものではなかった。そんな中、同仮設住宅購入を促した出来事が難民申請者の急増だった。彼らの一時収容施設の確保が、今年の夏以降の緊急課題となったのだ。

住民の日常が阻害されない

 現在は100軒の仮設住宅が納品済みで、残りの100軒は2016年に納品される予定だ。

 当面はまず50軒の仮設住宅を難民申請者用に使い、残りは災害時のために保管する計画だ。しかし、この先も難民申請者の流入が急増し、使用可能な施設が他になければ難民申請者の一時収容施設として使わざるを得ないだろうとフリュッキガー部長は言う。

 フリュッキガー部長は、体育館や病院施設を難民申請者の一時収容施設に充てることで、住民の日常生活が阻害されるという問題が今スイス各地で起こっていると言う。難民問題の一方で、住民の日常は変わらず進んでいく必要があるため、この先新たな代替案が必要となってくる。だからこそアールガウ州にとっては、その一つが同仮設住宅の導入だと彼は言う。

 同仮設住宅を難民申請者の一時収容施設や災害時の避難施設として導入するのは、スイス国内でアールガウ州が初めてだ。他の州も同様に、災害対策の観点から、移動可能な避難収容所の確保を課題に抱えている。今回の試みは、各州のみならず連邦も注目しているという。

経済的利点

アールガウ州は、「イケア・ハウス」をすでにテスト済みだ。メーカーの基準では、3年はもつといわれているこの仮設住宅。しかし、頻繁な組み立てと取り壊しを前提とした使用には、あまり向いていないようだ。

フリュッキガー部長によれば、試験的に難民申請者たちと同仮設住宅を組み立てた際、部品がなくなったり、壊れてしまったりなどの小さなトラブルもあったという。通常のテントと同様、取り扱いには注意が必要だ。また、外装がダンボールのため、保存の際には湿気に十分注意する必要がある。

その反面、コストパフォーマンスは他の代替案に比べて非常によい。仮設住宅1軒は約1200フラン(約14万7千円)、難民申請者一人にかかる費用は家具も含めて500フランだ。

また、他のテントと比べて費用を5分の1に押さえることができる。高価なテントの方が質はよいが、空間の広さと天候に対する耐久性において「イケア・ハウス」と違いはない。さらに頑丈な軍用テントの場合だと、かかる費用はそれ以上だ。

また、維持費や設備費が追加でかかる既存の施設と比較しても、同仮設住宅は経済的だ。例えば、ラウフェンブルク(自治体)では病院施設を難民申請者の一時収容施設に充てている。そこには65〜85人が収容可能だ。その施設の運営にあたって義務付けられている防火設備の費用だけでも、500人を収容可能な同仮設住宅を100軒購入できる。

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