重力レンズ効果により観測に成功したイカロス(写真左)。右上は2011年時点のもので、イカロスは見えない。右下は、16年の観測時のもの。白く光る点が見える
(NASA, ESA, and P. Kelly, University of Minnesota)
米カリフォルニア大や東京大、東北大などの国際研究チームが2日、「重力レンズ」と呼ばれる自然の増光現象を利用することで、約90億光年離れた恒星をハッブル宇宙望遠鏡で観測できたと発表した。研究チームには、連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)、ジュネーブ大の研究者も加わっていた。
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2018/04/03 11:42
恒星の正式名称は「MACS J1149+2223 Lensed Star 1」だが、ギリシャ神話にちなみ「イカロス」と名づけられた。これだけ遠方の恒星を単独で観測できたのは初めて。手前にある銀河団の強い重力がレンズの役割を果たし、最大で約2千倍明るく見えたという。論文は英科学誌ネイチャー・アストロノミー外部リンク に掲載される。
研究チームの一員で、連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)天文学研究室のジャン・ポール・クナイプ外部リンク 教授は「90億光年離れた恒星を初めて観測することに、とうとう成功した」と喜びを語った。ジュネーブ大天文学部のアントニオ・カヴァ外部リンク 博士研究員は今回の観測成功により、恒星と周辺環境について「膨大な量の情報」を得ることが出来たと述べた。
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