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クラウドファンディング


インドの香辛料をスイスに直送 クラウドファンディングが販路をつなぐ




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クラウドファンディングは地理的距離を縮め、経済システムの違いを埋める (Keystone)

クラウドファンディングは地理的距離を縮め、経済システムの違いを埋める

(Keystone)

インドの小規模農家が作った香辛料を、スイスの消費者に直送。インターネットで資金を集めるクラウドファンディングを活用したこんなビジネスが、スイスで始動した。新規事業を立ち上げる際、銀行を使わず世界中から資金調達ができるクラウドファンディングは、スイスの消費者と国外の生産者をつなぐのに一役買っている。

 香辛料を運ぶビジネスを始めたのは、トビアス・ヨースさん。普段は、チューリヒ近郊に自転車で荷物を運ぶメッセンジャーの仕事をパートタイムでしている。だが、この日運ぶ荷物はちょっと特別。インドからの香辛料が入った箱10個だ。自身のクラウドファンディングプロジェクト「Crowd Container」を通じて、インド南部ケーララ州の小規模農家から仕入れた。

 ヨースさんらのチームが考案したこのプロジェクトは、出資者から注文を受けた後、香辛料を船で輸入し、小売業者を介さず直接出資者へ届ける仕組み。スイスのクラウドファンディングサイト「Wemakeit」を通じ、500人を超える出資者から注文代金として約8万4千フラン(約875万円)を集めた。

 社会を良くしたいというヨースさんの情熱は飛び抜けて強い。ジュネーブで国際関係学を学び、英大手会計事務所アーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young)に2年間勤務した後、天職に出会った。

 先進国と後進国の間で行われる国際貿易の不均衡を打破しようと、様々な国からフェアトレードで仕入れたナッツ類を売る会社に転職。カシューナッツとココナッツオイルの供給網を開拓する目的でインドに赴いた際、今回のプロジェクトの供給元になるケーララ州の都市コーリコードの農家と出会った。

 「彼らには豊富な生産量がありながら、それを売りさばける販路を持っていなかった」とヨースさんは話す。

 スイスのスーパーマーケットや小売店は、農産物の品質が均一で長期保存できない限り、取り扱ってくれない。ヨースさんは経験上、それを良く分かっていた。ところがそのスイスで、このビジネスの可能性を感じる場面に出くわした。生産者が農産物を持ち寄って売るファーマーズマーケットで、買い物客が農産物の見た目にはこだわらず、むしろ生産者から直に購入できることを喜んでいる姿を目の当たりにしたヨースさん。インドの生産者とスイスの消費者をクラウドファンディングでつなぐ試みを始めようと決めた。

 ヨースさんは「私たちのプロジェクトでは、出資者から集めたお金が農家、製造加工業者、そして我々にどう分配されるか明らかにしている。クラウドファンディングがプロジェクトの透明性を完璧なものにしている」と強調する。

 チューリヒの旧市街に住むベティーナ・ミンダーさんは、香辛料を注文した出資者の一人。夫へのプレゼントに購入したという。

 ミンダーさんは「商品そのものに加え、農家と直につながるというアイデアが良い。私はスイス国内でさえ、好んで生産者や生協から直に購入している」と話す。このプロジェクトには理想的な購買者だ。

多額の投資

 ある商品を国際市場に流通させるには通常2~3年かかる。しかしヨースさんにはすでに人脈や経験があり、どんな商品が市場で通用するかを学ぶ機会にも恵まれた。そのため、わずか数カ月で香辛料を市場に持ち込むことができた。だが一般的に、社会的責任と透明性を兼ね備えた供給網の確保には、極めて多額の投資が必要になる。とりわけ、潤沢な資金を持たず、独立した認定機関の認証を得る費用をまかなえない小規模企業には死活問題だ。

 スイスで一定の条件を満たしたフェアトレード商品に認証ラベルを付与する非営利団体「マックス・ハベラー」の広報担当カトリン・ドルフシュミットさんは、「途上国の生産者により良い商売の機会を与えるこのような試みを歓迎する」と話す。

 一方で、ドルフシュミットさんは、製品の倫理性が他よりいかに優れているかをプロジェクトの出資者につまびらかにするべきだと指摘する。

 例えこうした認証がなくても、小規模なプロジェクトにとって、事業の透明性や企業の良心を維持するにはかなりのコストがかさむ。

 エルサルバドル産のコーヒー豆を売る会社「El Imposible Roasters」の共同創設者マリオ・ヴァルディシュピュールさんは「農家から直接購入する方法は時間とお金がかかる。コーヒー豆の仕入れ価格は通常の3倍にもなる」と打ち明ける。

 ヴァルディシュピュールさんは、豆の焙煎機械とルツェルン州の町ホルプに小規模の工場用地を購入するため、クラウドファンディングを活用。目標額の2万フランを超える資金を集めた。豆は中米国の8つの農場から仕入れ、そのうちの1カ所は1年に1袋(70キログラム)しか生産していないという。

 ヴァルディシュピュールさんは「グローブス(スイスの百貨店)のような店だとコーヒー1キログラムの価格は40フラン。だが生産者の取り分はわずか1~2フランだ。その仕組みを変えたい」と話す。

 だが、こうした百貨店と同じ価格でコーヒーを売ったとしても、同じだけの利ざやを得るのは至難の業だ。実際、ヴァルディシュピュールさんのプロジェクトはコストをかろうじて賄えるかどうかの状態で、自分たちに対する給与を支払えるようになるまでに2年かかるという。

 さらにココナッツの花蜜をフィリピンの小規模農家から直輸入する会社「Saganà」を立ち上げたカトレヤ・ロメロ・ファウデさんは、自身の蓄えを切り崩さざるを得なかった。

 ファウデさんは「花蜜の生産農家は、南ミンダナオの市場よりも3~5割高い価格で花蜜を売ることができる。 さらに花蜜を1トン売るごとに、蜜を採る労働者12人分の1カ月分の雇用が保障される」とプロジェクトの利点を語る。

 しかし、クラウドファンディングで集まった資金は目標額1万5千フランのわずか4分の1ほどで、ファウデさんはこれまでに自腹で3万フランを捻出。これもすべて、ココナッツの花蜜を人工甘味料に変わる健康食品に成長させるためだ。

 ファウデさんは、クラウドファンディングに失敗した理由を「フィリピンでの人脈不足とメディアへの露出が足りなかった」と振り返る。

 ファウデさんはもう一度プロジェクトを立ち上げる予定で、今度はココナッツの間作物であるココアの販売も視野に入れている。ビジネスの拡大を目指すのはファウデさんだけではない。冒頭のヨースさんも、香辛料を注文した顧客からフィードバックを集め、感触が良ければ再度クラウドファンディングを行うという。またヴァルディシュピュールさんの会社は、新たにネパールの小規模農家からコーヒー豆を仕入れる計画を進めている。

クラウドファンディングと事業の信頼性

今回紹介したクラウドファンディングプロジェクトの大半が、無農薬やフェアトレード商品をうたう一方、「ビオ・スイス」や「マックス・ハべラー」などの認証ラベルを付与された製品はごくわずか。認証を受けるには多額の費用が掛かる上、製品ごとの査定が必要なためだ。プロジェクトの提唱者がラベルの有無より、事業の透明性を優先するのも無理はない。しかし、虚偽のサステナビリティ(持続可能性)をうたい、消費者をだますような詐欺行為を防ぐことはできるのだろうか?

連邦消費者行政局(BFK)によると、クラウドファンディングの出資者によるそうした類の苦情はこれまでに確認されていない。

同局の広報担当ジャック・ヴィフィアン氏は、スイスインフォの取材に「クラウドファンディングプロジェクトがうたう無農薬やフェアトレードは一種の不正競争であり、ブランド保護に関わる問題だ。ところがこうした問題は貿易業者や消費者が被害を受けた、だまされたと思って初めて表面化する」と懸念する。

クラウドファンディングプロジェクトの出資者を他の投資活動の投資家と同様にみなす連邦金融監督局(FINMA)は、プロジェクトの出資者にも「損失リスク」は生じるとしている。

製品の価格が通常より高くても、倫理的な購買を促進するために皆さんはその製品を購入しますか?皆さんのご意見をお寄せください。

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(英語からの翻訳・宇田薫 編集・スイスインフォ), swissinfo.ch

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