Jump to content
Your browser is out of date. It has known security flaws and may not display all features of this websites. Learn how to update your browser[閉じる]

ママだって働きたい


母親2人が立ち上げたスイスで人気の求人サイト




ナネッテ・シュタイナーさん(左)とジル・アルテンブルガー・ソブリックさん。フレキシブルな働き方を望んでいるのは、もはや母親だけではないという。 (fbm studio)

ナネッテ・シュタイナーさん(左)とジル・アルテンブルガー・ソブリックさん。フレキシブルな働き方を望んでいるのは、もはや母親だけではないという。

(fbm studio)

今日、スイス社会でも女性の活躍が目覚ましい。ところが妊娠・出産後に母親が再就職するとなると、そこには厳しい現実が待っている。そこで昨年3月、チューリヒに住む母親2人が、経験とスキルを持った子育て中の女性のために、求人情報サイト「jobsfürmama.ch(ママのための仕事)」を立ち上げた。その一人、ナネッテ・シュタイナーさんに話を聞いた。

 「産休後はフルタイムで働くか、それが無理ならば辞めてもらうしかない」。勤務先に第一子の妊娠を伝えたナネッテ・シュタイナーさんは、上司から厳しい選択を迫られていた。チューリヒ大学で経済学を学び、卒業後はフルタイムで働いてきた。電子機器産業の製品・事業開発部責任者としての仕事は楽しく、やりがいも感じている。

 しかし、生まれたばかりの娘を抱えたまま、すぐにフルタイムで職場に復帰することはできなかった。結局16週間の産休後、退職を決めた。33歳だった。

「高キャリア組」が抱える問題

 「もう一度、働きたい」。シュタイナーさんがそんな風に思い始めたのは、子育てにも多少慣れた34歳の時だ。

 子育ての傍ら、友人が経営する店の販売やマーケティングの仕事を手伝ってはいたし、夫の収入だけで家族は十分暮らしていけた。それでも子どもの母親としてではなく、一個人として社会から認められたいという気持ちがあった。「子どものことは大切だが、家族とキャリアの両立ができるなら、それがベストだと思った」

 将来はフルタイムで働くにしろ、まずは勤務日数が週2日の仕事を探し始めた。しかし、シュタイナーさんはすぐさま「高キャリア組」ならではの問題につきあたる。(スイスでは正社員であっても勤務日数を週3日や4日に減らすことは珍しくない)

 出産前のスキルを生かしたいと思えば、フルタイムの仕事しか見つからない。勤務日数を制限して探せば、経験やスキルが問われない仕事しか見つからない。

 一度、出勤日が週2日という理由で秘書の求人に応募した。とりたてて就きたいポジションではなかったが、もしその会社で自分の経験が生かせるポジションが空けば、すぐに応募できるだろうと考えた。しかし採用企業側からは「キャリアが高すぎるので秘書には採用できない」と断られた。

 希望するワークライフバランスを実現しながら、出産前のキャリアや学歴を生かした職に就くことはできないのか。ひたすら求人に応募する日々が続いた。

サイトの立ち上げ

 きちんとした学歴や資格があり、出産前にキャリアを築いてきたにも関わらず、それを生かした再就職が思うようにいかない母親は、きっと他にもたくさんいるに違いない。そんな、経験やスキルを持った子育て中の女性のための求人情報サイトがあれば…。

 ちょうどその頃出産を終え、子育ての真っ最中だった友人のジル・アルテンブルガー・ソブリックさんにサイトのアイデアを伝えたところ、すぐに話が盛り上がった。ビジネス化の可能性を感じ、友人や知り合いのヘッドハンター、子育て中の母親たちにサイトのアイデアを話してみると、肯定的な反応を得ることができた。「やってみよう」。そう決めた。

 それから1年かけて、アルテンブルガーさんとともにサイトの立ち上げ準備をした。求人広告を掲載しないかと企業に声を掛けてまわりながら、PR戦略を練った。立ち上げ資金は全て自分たちで用意した。また、スイス社会全体における女性の積極的な登用を評価する風潮や、企業がスイス国内にいる人材だけで労働力不足をカバーしようとする動きも追い風となった。確実に始め時は今だと感じた。

 こうして2014年3月27日、経験とスキルを持った子育て中の女性のための求人情報サイト「jobsfürmama.ch(ママのための仕事)」がオープンした。

母親が安心して応募できる求人

 サイトがオープンしてからの反響は予想を超えるものだった。ドイツ語のみで、かつスマートフォンアプリも未開発の状態でのサイトオープンだったにも関わらず、戦略的に行ったPR活動が功を奏し、登録者はオープンから4日で500人を超え、5カ月を待たないうちに2千を突破した。「本当に驚いた。こんなに一気に増えるとは予想していなかった」

 基本的なサイトの仕組みは、他の求人情報サイトと変わらない。個人情報を記入して登録すると、サイトに掲載されている求人情報を検索・閲覧出来る。女性に限らず、子育て中の父親など基本的に誰でも無料で登録可能だ。一方、企業は1件の求人広告につき、30日の掲載期間で300フラン(約3万6千円)を支払う。求人欄にはマーケットリサーチアナリストや人事課長など、経験や学歴を生かせるポジションが並ぶ。

 「このサイトに求人広告を掲載していることで、その企業が子育て中の母親の雇用に積極的だということがわかる。そのため子育て中でも安心して応募できる。このサイトの利点はそこにある」という。

 また、「Klein aber fein(小規模だが質が良い)をモットーに運営している」ところが、他の求人情報サイトと大きく違う点だとシュタイナーさんは説明する。登録者が自身のアカウントに載せる履歴書には運営側からチェックが入り、「きちんと目を通し、登録者による記入漏れや誤記入を防ぐことで、サイトの質を高く保てるよう管理している」。

 求人情報と併せて設置されているのが、働くママのためのノウハウ情報ページだ。就職活動における用語説明からはじまり、働くママとしての注意点や託児所の連絡先など、ためになる情報が多い。

母親は優れたオーガナイザー

 現在も営業活動の一環で企業訪問を続けるシュタイナーさんは、「基本的に子育て中の女性を雇うということに積極的、もしくは好意的な企業は多い」という。ただ、小規模の会社の中には、急な欠員が出たときにその代わりがいないという理由から、子育て中の女性の採用をためらうところもある」と現状を話す。

 しかし、「それは個人の仕事に対する向き合い方の問題であって、母親であるかどうかは関係ないことだ」とシュタイナーさんは反論する。

 「基本的に母親は再び働けることに喜びを感じ、モチベーションが高い。また子どもを迎えに行く時間があるため、無駄に残業することは出来ない。だからこそ制限された時間の中で集中して効率的に仕事をするし、段取りも良い。そして忘れてならないのは、彼女たちは母親であるという時点で、既に優れたオーガナイザーであるということだ」

 ただ、母親は欠勤・遅刻・早退しやすいというようなイメージを避けるためにも、「例えば大事なミーティングがある日に子どもが風邪をひいてしまった場合は、数時間だけ子どもを見てくれる人をオーガナイズし、そのミーティングだけは参加できるようにする姿勢が大切だ」と話す。

優秀な人材を雇用するためのカギ

 では、こうした母親を採用するために雇用者側に求められることは何かという問いには、「もっとフレシブルでダイバーシティー(多様性)のある働き方を提供することだ」と話す。そうすれば、「優秀な人材を更にたくさん見つけることができるし、出産・子育てを理由にした離職率もさがる」。

 また、「柔軟で多様な働き方を求めているのは、もはや子育てをする母親に限ったことではない」とシュタイナーさんは付け加える。

 スイスでは母親と父親がそれぞれ時短で働き、2人で子どもの世話をするというケースが増えつつある。また高齢化社会が進み、高齢の家族の世話をするためにフルタイムで働けない人も増えた。そして、インターネットが身近な若い世代にとってはもはや、時間や場所にとらわれない働き方はごく普通のことになっている。趣味に本格的に打ち込み、仕事と両立させるために柔軟な働き方を希望する人も増えている。

サイトの今後

 シュタイナーさん自身も現在、子育てと仕事を両立させながら、時間や場所にとらわれない働き方を実現中だ。満足のいくワークライフバランスが築けているという。

 「働く母親の再就職支援という形で始まったこのサイトだが、ゆくゆくは在宅勤務やジョブシェアリングなど、多様な働き方を推進する求人情報サイトにしていきたい」と将来の展望を語る。

 また、スイスに住んでいるが母国語が英語で、スイスの公用語は満足に話せないまでも、それまでのキャリアを生かして働きたいと思っている人たちの就職も支援出来るようなサイトのビジョンも描いている。

求人情報サイト「jobsfürmama.ch(ママのための仕事)」

経験、スキル、学歴を持ち、子育て中でも働きたい女性のための求人情報サイト。求人の分野は医療、福祉、マーケティング、研究などさまざま。現在はドイツ語のみの運営で、求人広告はスイスにオフィスがある企業がメイン。将来的にフランス語、イタリア語、英語でもサイトをオープンし、国外の求人情報も掲載予定。

ドイツでも同名のサイトがオープンした。シュタイナーさんとアルテンブルガーさんの考えに共感したシモーネ・ヴェンデルンさんとサビーネ・ソブリックさんが運営。

著作権

すべての権利を留保します。swissinfo.chウェブサービスのコンテンツは著作権で保護されており、私的使用目的でのみご利用いただけます。それ以外のウェブサービスのコンテンツ利用、特に拡散、変更、転用、保存、複写する場合は、swissinfo.chの書面による同意を必要とします。私的使用以外でご利用される場合は、contact@swissinfo.ch へご連絡ください。

私的使用以外の利用において唯一認められるのは、特定のコンテンツへのハイパーリンクを自分のウェブサイトや第三者のウェブサイトに設定することです。また、広告のない環境にswissinfo.chウェブサービスのコンテンツを原文のまま掲載することもできます。swissinfo.chウェブサービスでダウンロード用に提供しているすべてのソフトウェア、ディレクトリー、データ、およびそのコンテンツに対しては、私用の機器へのダウンロードや保存に限定した、譲渡不可能で非独占的な単純ライセンスを譲渡します。他のすべての権利はswissinfo.chに属します。特に、販売や商業的利用は固く禁止します。

×