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聖職者の少年愛者ブラックリスト?

ブラックリストに賛成するマルティン・ヴェーレン氏 Keystone

スイスカトリック総本山のアインジーデルン修道院長がバチカンに対し、児童への性的虐待をした聖職者を総括したブラックリストを作成するよう要請している。

一方、スイス司教会議の会長はリストの作成ばかりではなく、少年愛者を告発することにも反対している。

スイスでも問題

 3月20日、ローマ法王がアイルランドのカトリック聖職者が児童への性的虐待をしていたこと謝罪する書簡を発表したが、スイスでもグラウビュンデン州ディセンティス ( Disentis ) の修道院で19日、新たに約10件の事件が調査されることになるなど、問題になっている。

 こうした中、スイスカトリックの総本山・アインジーデルン ( Einsiedeln ) 修道院長のマルティン・ヴェーレン氏はバチカンに対し21日、児童への性的虐待で訴えられた聖職者のブラックリストを作成することを求める意向にあることが分かった。
「聖職者が異動した場合、管轄する司教が情報を得るため」とヴェーレン氏は日曜日発行の大衆紙「ゾンタークスブリック ( Sontagsblick ) 」に答えている。ヴェーレン氏はスイス司教会議に提案するつもりであるという。

 一方、スイス司教会議のノルベルト・ブルンナー会長は、フランス語圏の日曜版新聞「レ・マタン・ディマンシュ ( Le Matin Dimanche ) 」紙上で
 「その人物が専門的観点からも道徳的観点からも聖職者としての条件を満たしているかということは、各司教区の手にゆだねられている」
 と答え、児童への性的虐待は教会が司法関係当局に組織だって通報されることではないと意見だ。もし、こうした事件が発覚した場合は、犯人が自首するように勧めるべきであり、それが重大な事件の場合は被害者の同意を得て教会が通報するべきであるという。その真意をブルンナー氏は「NZZアムゾンターク ( NZZ am Sonntag ) 」で犯罪者の罪は教会ではなく本人の責任であるという立場で
「教会が機関としてこうした被害者に謝罪しなければならないという考えは理解しがたい。重要なのは司教が遺憾だと思うことであり、自分も遺憾だと思っている」
 と答えた。
 
swissinfo.ch、外電

スイス全体では、わかっただけで約60件起こった。ディセンティス ( Disentis ) の修道院では19日、約10件が発覚したと発表された。
アメリカでは1950~2002年に約4400人の聖職者、1万1000人の児童が性的虐待を受けていたことが2002年に発覚した。
アイルランドでは1930~1990年までに1万5000人の児童が性的虐待を受けていたことが発覚し、司教4人が辞職した。
オーストリアでは1995年、ウィーンの大司教が児童への性的虐待をしていた疑いで辞職。
ドイツでは、約100件が発覚。事件のいくつかは現法王の兄弟の管轄下で起こった。

バチカンが発表したところによると、2001年から約3000件の性的虐待事件があったという。こうした事件は過去50年間続いているという。このうち300件は児童への性的虐待、60%が青少年を対象としたものだった。5件に1件は裁判となり、1割の犯人のみ、法王により聖職免停となった。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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