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もぐもぐスイス味 第2弾 その6― モモヨ隊員と「おお、塩の花」 -

白身の魚をクレープ地で包んだ前菜 swissinfo.ch

数年前から、スイスでも日本でも「塩の花」がブームになっている。テーブルに置いたこの塩を、焼いた肉の上や、チーズなどの上に指でぱらぱらとかけ、この塩独特の旨みを味わうのである。

ところが、煮込みやスープなど料理を作る段階で、この塩だけを使うフランス料理のシェフがヴォー州にいると聞いて、普通の塩で料理するのとどう違うのかモモヨ隊員と研究に出かけることになった。

 もともと、フランスのブルターニュ地方のゲランド ( Guérande ) という所の塩田で、海面に最初に浮かび上がってくる塩を「塩の花、フルール・ド・セル ( fleur de sel ) 」という。1キログラムが約30フラン( 約3000円 ) と普通の塩の10倍はするので、この地方でもフォア・グラなどにかけて食べる高級塩だった。それが今では世界のさまざまな場所の、同手法で作られる塩まで人気になった。今回訪れたレストラン「ル・セール ( Le Cerf 、シカの意 ) 」では、しかし、本場のゲレンドの塩の花に今なおこだわり続けている。

深くまろやかな塩の花

 ローザンヌからローカル線とケーブルカーを乗り継いで着いたレストランは、小さな田舎町にあった。かつての修道院を改造しただけあり、中は歴史を感じさせる石の階段やドーム状の天井からなる、静かな空間。

 しかし、実はメインレストランの方はかなりの値段の高級レストランということで、モモヨ隊員と カフェバー ( ブラッサリー ) の方に入った。

 前菜のかぼちゃスープは、一さじ口に入れると、ミネラル分が口の中でサット広がる感じがするが塩辛くない。この深くまろやかな塩味をどう表現すればいいのか。モモヨ隊員は「控えめだけど満足のいく味」と一言。

 メインは野生のカモ肉の煮込み。添え物のナシやシュペッツリ ( パスタの一種 ) など 、おのおのに塩味がほのかで、素材の味の方がしっかりとする感覚は初めて経験するもの。これこそ塩の花の効果ではないだろうか?

 なぜ塩の花を使い始めたのかとシェフに質問。「普通の塩の攻撃的な味がきらいだったから」と明快な答え。口に入れても塩辛くないからどうぞと薦められる。確かに、ミネラルの味はするが塩辛くない。山羊チーズにオリーブオイルとこの塩の花をかけるだけで最高級の一品になるという。

 「デザートにもこの塩を入れるのですか?」「チョコレートのケーキなどに入れます」と新しいものをいつも追求するアーティストのシェフが答えた。

・・・でモモヨ隊員は

 ここは、サービスチームの黒いユニフォームもかっこいい正調フランス料理レストラン「鹿」。の隣、お気楽ブラッサリーの方。なのに突き出しといい前菜といい、カメラも喜ぶその美しさ。

 ウサギのタルタルピスタチオ風味 ( ほんのちょっぴり) は、家庭料理から離れて何千里、ここいずこ、驚きのハッがありますね。 

 メインは野ガモ。うまいかもと頼んでみたものの、そのっ、こんなに小さなカモいるんですね。お姿も一転して地味でらっしゃる。狩猟季節の伝統料理ですね。 

 お味ですか、ええと、シオノハナはぁっ・・、硬いですね、これ。さすがぁっに柔らかな甘味っでぇ料理に奥行きがっ出るようですね。ハアハア。 

 隊長、コツはですね、まず骨にそってナイフのとんがったとこをぐさっと突き刺すことですっ。で、一気にぐいぐいやると肉が取れますよ。 ぱくっ。

 次回があれば、ずばりシンプルにフォアグラにパラリと塩の花をかけてというの、是非頂いてみたい。フォアグラには骨も無いことだし。

swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) & モモヨ

レストラン : ル・セール ( Le Cerf 、シカ )

住所 :  Rue du Temple 1304 Cossonay-Ville

電話 :  + 41 21 861 26 08

予約 :  必要

時間 : 日、月曜日と火曜日の昼を除いて、開いている

メニュー : 

ル・セール : 昼のビジネスメニューが1人88フラン ( 約8800円 )、その他1人180フラン ( 約1万8000円 ) と220フラン( 約2万2000円 ) のメニューもある。アラカルトでも注文できる。フォアグラのポトフ65フラン( 約6500円 ) など1品が60~70フラン( 約6000~7000円 )

ブラッサリー : 1品が20~30フラン( 約2000~3000円 ) 、55フラン( 約5500円 )のメニューや昼の特別メニューで20フラン ( 約2000円 ) というのもある。

予算 :  ブラッサリーの方で55フランのメニューに飲み物など足して2人で150フラン ( 約1万5000円 )

行き方 : ローザンヌ駅からイベルドン ( Yverdon ) 方面行きのローカル線でコソネ ( Cossonay ) 下車。そばにあるケーブルで1駅だけの終点、コソネ・ビル ( Cossonay-Ville ) まで。この終点から徒歩2分

店主のカルロ・クリシさんは、イタリア人のレストラン経営者を父に持つスイス生まれ。グラフィックデザイナーになりたかったというだけあって、使われる食器も友人の陶芸家と一緒に考案したもの。

「塩の花」もこうした彼のこだわりから、塩ブームが始まる前の1984年から使っている。しかし、さすがにパスタを茹でる時は、値段の安いグロセルと呼ばれる大粒の海の塩を使うという。

ル・セールは高級だが、肩がこらない雰囲気のレストランである。ちなみにミシュランで3つ星がついている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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