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グリュイエールチーズの保護

スイス製かフランス製か。原産地統制呼称を求める両国 Keystone

エメンタールチーズと並んでスイスチーズの代表格として有名なグリュイエールチーズを、グリュイエール地方産のチーズに限ってその名称の使用を認める、原産地統制呼称 ( AOC ) を欧州連合 ( EU ) に対して求める動きがある。

このほどフランスからEUに対しての動きがあったことを受け、スイス政府は両国の要望を同時に扱うようEUに要請している。

 スイスとの国境に接するフランスで製造されるチーズは長年、グリュイエールチーズとして販売されてきた。スイスのグリュイエールチーズと酷似したチーズである。スイスとフランスではさまざまな協定が結ばれ、グリュイエールチーズは両国が共有することになっているが、実際には双方の主張がかみ合わず、問題が残っていた。

スイスとフランスの同等性

 スイスとフランスのチーズ製造者協会は、各々の当局と協力しお互いの「グリュイエール」の原産地統制呼称を求め続けすでに10年近くになるが、このほど新しい動きがあった。両国の当局は、双方の「グリュイエール」という名称は同等であることを認め、国境を越えて作られる2種類のチーズを、グリュイエールの名称で、しかし別々の条件で保護することが可能だという結論に至ったのである。
 
 スイスでは2001年からグリュイエールを原産地名として保護している。また、スイス連邦農業局 ( BLW/OFAG ) によると、フランスでは昨年春、グリュイエールの原産地統制呼称が認められ、しかも、このほど、EU委員会へはスイスとフランスのチーズが同等に保護されるように要請する正式な書類が提出された。このため、スイスでもEUに対して新しい一歩を踏み出す必要が出てきたというわけである。

EUとの交渉基盤

 スイスのグリュイエール製造組合 ( Interprofession de Gruyere ) はフランスの新しい動きを受け早速、連邦農業局と連携しEU委員会へグリュイエールの原産地統制呼称を要請したという。連邦農業局はスイスとフランスがお互いのチーズをグリュイエールと認めるという条件下で、両国の要請を同時に扱うよう添え書きをEU委員会に送ったと明かした。

 1999年にスイスとEUが結んだ農業協定には、EUとのこのような問題に関する交渉の道が保障されており、EUがスイスから要請があった場合は、交渉に向けて準備が進められることになる。

swissinfo、外電 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

農産物加工品が一定の地域の産物であった場合、原産地名を保護することができる。
原産地統制呼称 ( AOC ) は、その土地の農産物をその土地で加工した場合、AOCとして認められ、それ以外の農産物加工品をAOCとして販売することは禁止されている。

その土地以外の場所の農産物を加工し、加工が施された地名を商品に付ける場合は「保護された地域の名称の使用」として保護が可能。例として挙げられるのはグラウビュンデン州で加工された干し肉「ビュンドナー肉 ( Bündnerfleisch ) 」。

スイスでは21件のAOCもしくは保護された地域の名称使用保護の対象になる農産物加工品がある。スイス国内での規制であり、国外での有効性は低い。EUでは、保護された農産物加工品のリストがある。スイスの製品をEUのリストに加えるための交渉が行われている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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