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身体補助機器の最先端技術を競う世界大会「サイバスロン」 スイス初の開幕間近

サイバスロンに向けてトレーニングする「パイロット」、2016年7月 Keystone/ALESSANDRO DELLA BELLA

最先端のロボット技術などを用いた高度な補装具を身につけ、身体障害者たちが競技に挑む「サイバスロン(cybathlon)」が8日、チューリヒのスイス・アリーナでいよいよ開催される。義手や義足などを装着した「サイバー・アスリート」たちが世界各国から参加し、6つの部門で補装具の技能を競い合う。

 今回、第1回目の開催となる「サイバスロン」は、コンピューター制御や電動アシストなどの力を使って身体障害者が競い合う大会だ。人力でスポーツを競技するパラリンピックとは異なり、ロボット工学や生物機械工学技術がどれほど身体障害者の能力を補助できるかが焦点となる。

 競技は、強化義手や電動車いすレース、電気刺激バイクレースなどの6種目。コースには身体障害者が日常生活で難しいと感じている課題が並び、世界各国から集まった「パイロット」と呼ばれる選手たちが、各部門で正確さや速さを競う。例えば義手を使ったレースでは、わずか8分間で卓上電気スタンドに電球を取付け、パンは厚さ2センチに切り、缶詰を開けて朝食の準備をしなければならないほか、洗濯物を干すときはハンガーにかけるブレザーのボタンを2つかけなければならないといったルールがある。力加減や繊細な作業が勝負だ。

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 主催はスイス連邦工科大学チューリヒ校とスイス国立コンピテンスセンター・ロボティクス研究所で、身体障害者の社会参加を促し、それをサポートするための高度な技術の発展を目的とする。将来的には高齢者への実用化も見込まれているという。

 世界25カ国からロボット工学の研究者やベンチャー企業など、74チームが参加予定。新たなスポーツの世界大会として開催前から世界各国で注目されている。

スイスからは7チームが参加

 スイス連邦工科大学ローザンヌ校では、「ポリウォーク(PolyWalk)」というチームが歩行補助装置の研究を続けてきた。8日の大会では、事故で左半身不随となってしまったシルケ・パンさんが14キロの歩行器を装着して階段を上り、障害物を避けて歩くといった競技に挑む。他にもスイスからは7つの大学研究チームが参加を予定している。

 日本からは3チームが4種目に出場。強化義足部門にはベンチャー企業の「サイボーグ」、FESバイク部門と強化義手部門には「メルティンMMI」、電動車いすレース部門には和歌山大の中嶋秀朗教授によるチームが参加する。

(FES:脳卒中や脊髄損傷などで中枢神経が損なわれた人の末梢の運動神経や筋に電気刺激を与え、運動機能を復活させる電気刺激)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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