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ジュネーブの高級ホテルの改修工事熱

有名なデザイナー、ジャック・ガルシアが担当したラ・レゼルブの内装はアフリカの自然保護区がテーマだ。(La Reserve 提供) swissinfo.ch

ジュネーブは5つ星の最高級ホテルがスイスで最も多い街だ。現在、デ・ベルグホテル、ボー・リヴァージュホテル、ド・ラ・ペホテルなど次々と改修工事を行い、一時休業しているところもある。

多くのホテルが贅沢な顧客のニーズに合わせ、設備を新しくし、サウナやプールといった付加価値を付けている。この背景にはここ3、4年で多くの古い高級ホテルが外国資本のオーナーに変わった事がある。                             

 ジュネーブの5つ星ホテルの相場は一泊400フラン〜600フラン(約3万5千円〜5万3千円)。多くのホテルは月曜日から木曜日が混んでいてビジネス客が中心だ。関係者によると、今後どのようにして観光客に週末に来てもらうかが、生き残り作戦の焦点だという。

歴史に生きるホテル

 高級ホテル改修工事熱はプレジデント・ウイルソンホテルが火付け役だったという。「ジュネーブのホテルはニューヨークやロンドンに比べ、クラシック過ぎて古臭くなっていた」と語るのはド・ラ・ペホテルの改修工事を指揮するホテルチェーン、コンコルド社の総支配人、ドニス・プルシェ氏だ。同ホテルはスイスに幾つもホテルを持つマンツ家が、コンコルド社に経営を委託した。プルシェ氏は「1865年に創立された伝統的なホテルでも近代的な設備と顧客の今風の趣向に合わせる必要がある」と語る。

 昔は女優のグレース・ケリーやウッドロウ・ウィルソン米大統領など世界の有名人が訪れたド・ラ・ペホテルも現在は埃を被って改装中だ。玄関ホールを堂々と飾るシャンデリアは70年代にロックスターが自殺するために吹き抜けの5階から飛び降りた際、途中で引っ掛ったという代物。昔の栄光を取り戻すには「歴史を感じる」だけでは足りないようだ。

外国資本が買収

 1834年創業のデ・ベルグホテルはサウジアラビアのアルワリド王子が1億2,000フラン(約107億円)で2004年春に買収した。改修工事のため10ヶ月休業中だ。日刊紙ルタンによると修復費は3,500万フラン(約31億円)と見積もっている。買収の際、ホテルを見て10分で決めたと言われているアルワリド王子は他ならぬパリのジョルジュ・サンクホテルのオーナーであり、フォーシーズンの株主だ。

 1875年創業のリッチモンドホテルはロッコフォルテグループのロッコ・フォルテ氏が9,800万フラン(約87億円)で買収し、5,000万フラン(約44億円)の大改修工事が行われる予定だ。同時に多くのホテルが休業すると市の宿泊設備のキャパシティーに影響するためジュネーブ市の要請で工事は2006年にずらされた。

 外国資本が参入してきていることに対して前出のプルシェ氏は「ジュネーブ市にとっては良いこと。つまり、ビジネスに見込みがあるということだ」と語っている。しかし、ホテル業の経営コンサルタント、アンヌ・シェゾ氏は「高級ホテルは投資額が大きい割には収益性が低く、長期的な視野がないと難しい。売上だけ見れば二つ星、三つ星の部屋数が多いホテルのほうが投資家にとってお勧めだ」と分析する(レブド誌2004年10月号)。

サービスが勝負の近代ホテル

 国家首相などがお忍びで訪れると言われるラ・レゼルブホテルは最近、人気が出てきている。ソーセージで財を成した仏のミッシェル・レイビエ氏が1999年に2,400万フラン(約21億円)で中国人オーナーから買取り、2年間の大修復を経て再オープンしたモダンなホテルだ。中心街から離れた国連側の湖畔にある緑豊かな敷地にある。建物に入ると、アフリカのジャングルを思い浮かべさせる内装は有名なデザイナー、ジャック・ガルシアが手掛けた。

 同ホテルはビジネス客以外の客も引き入れる為に室内外プールにスパ(温泉やマッサージ施設)フィットネスがあるだけでなく、湖のボートタクシーサービスや保育室などサービスが充実している。日本人客を見込んでスリッパや浴衣、日本の朝食がついているだけでなく、スイートルームのトイレには日本のウオッシュレットが付いている。

世界一高いスイートルーム

 世界一高いスイートルームがあるのもジュネーブだ。経済誌フォーブズの2003年のランキングのによると一泊33,243ドル(約345万円)でプレジデント・ウイルソンホテルのロイヤルスイートが世界のトップに輝いた。

 同ホテルはロイヤルスイートルームの値段を公表していないが、この値段は「8階全部で1,200平方メートルあり、全部の窓に防弾ガラスが張られ、カメラ、非常口やアラームなどセキュリティが万全」という説明だ。つまり、命を狙われるほどのV.I.P.かお金持ちでなければ泊まる意味がないということだ。


swissinfo  屋山明乃(ややまあけの)

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