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ジュネーブ国際モーターショー、エコへと大きなうねり

スイス、リンスピード社のフランク・リンダルグネヒト氏は「水中を飛ぶように動く車をどうしたら実現できるか」と30年間考え続けた rinspeed

3月6~16日開催の第78回ジュネーブ国際モーターショーでは、ヨーロッパ初公開の79車中2割を、ハイブリッド車、天然ガス自動車などのエコカーが占める。

ガソリン車も小型化で二酸化炭素 ( CO2 ) 排出量を大幅に抑えたり、クリーンディーゼルに変えるなど、環境に優しい車種の目立つショーとなった。

 欧州連合 ( EU ) は2012年から、自動車のCO2排出量を走行距離1キロメートルにつき130グラム ( 現在の排出量は平均190グラム ) にする目標を立てている。「それに加えヨーロッパ市場に出すディーゼル車は、『ユーロ・フォー ( Euro4 ) 』という粒子状物質などを規制する排ガス規制法に合致していないと、そもそも売り出せない」とホンダの広報担当、日下部多門氏は語った。

環境団体も支持する方向性

 ハイブッリド車「シビック」を昨年ヨーロッパで1万台販売したホンダは、運転を楽しみながら環境にも優しいというハイブッリドのスポーツカー「 CR-Z」をメインとしてヨーロッパで初公開した。また、今年の夏アメリカでリース販売予定の燃料電池車「FCX Clarty 」もエコカーの1例として発表した。

 ハイブッリド車「プリウス」でエコカーのパイオニアとなったトヨタは、昨年プリウスをヨーロッパで3万2000台販売。今回、家庭でも充電可能なタイプのハイブリッド車「Plug-in HYBRID」をヨーロッパで初公開した。

 ハイブッリドを継続しながらも、なんといっても今回のトヨタの目玉商品は「アイ・キュー ( iQ ) 」。世界初公開のこの車は全長3メートル以下で、4人乗りでは世界で1番小さい。またガソリン車だが、CO2排出量が99グラムと従来のハイブッリド車より少ない。環境問題に敏感な都会のインテリ層をターゲットにして、名前もiQとした。

 ホンダのIQは環境対策を考える中で、非常に現実的な選択といえそうだ。
「電気自動車も電気が原発で作られるのでは意味がないし、天然ガスもそれで直接車を動かすより、一度電気発電に回すほうがエネルギー効率がよいともいわれている。多様で、模索を続ける今のエコカーの状況では、従来のガソリン車を軽く小型にしてCO2排出量をグッと抑えるほうが現実的」
 という環境保護団体、グリーンピースのシリル・シュトゥデール氏の考え方に近い選択だからだ。

スイスのエコカー

 今回のモーターショーで最も話題になったスイスの車は、リンスピード社 ( Rinspeed ) の潜水するエコカー「スキューバ ( sQuba ) 」。電気自動車で、陸上を時速120キロで走る。水中では深さ10メートルまで潜水し、時速3キロで動くという。
 
 「ジェームス・ボンドが陸上を車で走っていて、暑くてたまらなくなり車ごと水に飛び込む」という1977年の映画のシーンをエコロジーと結びつけて実現した。リンスピードは車の部品製造が専門だが、こうしたコンセプトカーもすでに幾つか世に送り出している。
 
 ところで、車産業を持たない国スイスも今年のモーターショーで、そのエコ貢献度をアピールした。天然・バイオガス生産会社「ガスモビル ( gazmobile ) 」もその1つで、同社は国外でのガス自動車生産とスイスへのガス自動車輸入を促進させ、またガス供給スタンドを広げる努力もしている。今回は、フランスのPGO社と協力して2人乗りのスポーツカー「PGO Cévennes Turbo-CNG」を展示した。

 現在スイスではおよそ100カ所にガス供給スタンドが設置され、すでにインフラが充実。政府の援助もあり、2007年には2517台を販売し、トータルで5830台のガス自動車がスイスで走っている。ちなみに、ガス自動車はガソリン車より平均25%、CO2排出量が少ないという。

swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 

パリやフランクフルトのショーに比べ展示面積は小さいが、車を生産しない「中立な国」で行われること、またその年で一番初めに行われこと、そして未来のコンセプトカー展示が多いことなどで知られる。

今年の第1の特徴は、エコカーが主流を占める点だが、小型で安価な車と高級車も第2、第3の特徴として挙げられる。

今年は、30カ国のおよそ260の会社が1000台の車を展示している。

今回初めて出展を行ったのは、中国のBYD、ノルウェーの「シンク・グロバル ( Think Global ) 」、日本の「インフィニティ ( Infiniti ) 」の3社。BYDはハイブリッド車、シンク・グロバルは電気自動車とエコカーを、そしてインフィニティは高級車を発表した。

スイス国内のエコカー販売を促進する協会「イー・モバイル( E’mobile )」によるとハイブリッド車は2007年3221台売れ、現在までのトータル販売台数は7803台。またガス自動車は2007年2517台売れ、トータル販売台数は5830台。電気自動車はトータルで600台売れている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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