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スイスの高齢者が自立するために

ホームヘルパー(シュピテックス)のサービスを受けることで、自宅で生活を続けることもできる。スイスの高齢者に対する福祉システムの一環。 Keystone

スイスの平均寿命は伸びている。しかも、高齢者は、10年前に行われた調査時と比較し、より健康で、介護施設に入る人は少なく、人に頼らず自立した生活を営む人が多くなっている。

スイスに住む50歳以上の人について、連邦統計局がジュネーブ大学とローザンヌ大学の両大学に委託して調べた結果がこのほど、発表された。

このほど発表された連邦統計局の調査「年齢と世代 スイスにおける50歳以上の人の生活」によると、スイス人はより長生きでより健康になった。1992年から2002年の10年間で、65歳以上の人がその先生きる年数は、男性で10.4年から12.3年に伸び、女性は11.4年から13.3年まで伸びた。

州による高齢化の進度の違い

 65歳以上の人口は1985年から2000年までの15年間で、1.2%増加したに留まっていたが、2000年から2015年までで4.5%増加し2015年から2030年で4.2%増加する。その後頭打ちとなり、2030年から2045年には0.9%の増加に留まると見られる。しかし、スイスにも起こったベビーブーム世代の絶対人口は多く、「団塊の世代」が近々老齢年金の受給者となる一方、60歳以下の人口は伸び悩むため、労働者による年金負担が増すことは明らかだ。 

 州により高齢化の進度は異なる。老齢年金受給者(65歳以上)の労働人口(20歳から64歳まで)に対する割合で見た場合、ティチーノ州(28.6%)、スイス西部のジュラ州(28.5%)でその割合は多く、最も多いのはバーゼル・シュタット州(34.1%)だった。チューリヒのベッドタウンの役割を果たしているツーク州やシュヴィーツ州、同じくベルンの郊外ともいえるフリブール州は少なく、それぞれ19.0%、21.2%、21.0%だった。

 老齢年金は連邦の制度なのでどの州に住んでも受給額は変わりないものの、高齢者の医療福祉施設については、州によって異なる政策が求められる。

懸念される貧富の差

 介護施設に入る高齢者の割合が多いのは中央およびスイス東部の州で、西部やグラウビュンデン州ではホームヘルパーが家の掃除や買い物を手伝ったりして、老齢者が自宅で生活できるよう支援するサービスが広まっている。調査では、福祉政策が高齢者が自立して自宅で生活できるかどうかの要になると指摘している。

 また、高齢になるに従って貧富の差や自立度の差が広がる。世代によってもその差異が広がるという。こうした生活の質の二分化が起こるのを避けるため、自治体による貧困対策や健康管理促進政策などは、その時の状況に応じ、また国全体として行われる必要があると訴えている。一つの案として調査は、近所の助け合いと地域の福祉サービスの確立を挙げている。

swissinfo 外電 意訳 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

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