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スイスソーセージには「トミー」のマスタード

最近のテレビコマーシャルから

スイスのブランド「トミー」 ( Thomy ) といえば特徴的なアルミチューブ入りのマスタードとマヨネーズ。発売から75年以上を経た今も大人気の商品だ。

スイスの夏はバーベキューや野外イベントで賑わう。ソーセージやサンドイッチ、サラダにはトミーの製品が欠かせない。トミーの歴史が分かるギャラリーもお楽しみください ( サイト右側のギャラリーをクリック ) 。

 「トミーを常に使ってくださっている家庭は230万戸。スイス人の9割9分が知っているブランドで、スイスの家庭になくてはならない商品です」と言うのは、親会社ネスレ ( Nestlé ) で広報を担当しているフランソワ・グザヴィエ・ペルー氏だ。

「トミーのマスタード」

 「今では、射撃やシュヴィンゲン ( 相撲に似た競技 ) など数多くの大会のシンボル的な存在にもなっています」

 トミーの製品はバーゼルで生産されており、そのルーツは1930年にさかのぼる。この年の5月23日、このブランドは「トミー ( Thomi ) のマスタード」として登録された。

容器を変えて

 製造を行っているのは「トミー+フランク( Thomi+Franck ) 」社。創設者のハンス・トミー氏はまもなく、競争相手の先を行くにはこれまでと違う容器が必要だということに気がついた。そして、マスタードを長持ちさせるアルミチューブを取り入れた。

 トミーという苗字の最後は「i」で終わっているが、トミー氏はそれを「y」に変えた。その方が宣伝効果があり、見た目もよいと思ったからだ。

 「トミーは社会が持つある種のニーズに応えたのだと思います。家ではもちろんのこと、戸外へも持ち運びのできるマスタードやマヨネーズが必要だったのです。また、比較的経済的である上、1年を通してマスタードやマヨネーズが簡単に手に入るようにもなりました」

コマーシャルの成功

 このブランドがこれほどの知名度を得た理由の1つはコマーシャルの成功にある。コマーシャルの中のマスタードチューブは単なる「モノ」ではなく、動くキャラクターだ。1980年代から1990年代のテレビコマーシャルでは、ソーセージや肉がこのキャラクターを大声で呼びつけたりする。一風変わったこの賑々しいCMは、スイス人の記憶にしっかりと刻み込まれた。 ( 1992年のビデオ参照 ) 。

 今年になって、これらのキャラクターが新しくコマーシャルに再登場した。賑やかなディスコで踊るマスタードには新しいねじぶたがついている ( 最近のビデオ参照 ) 。誰もが知っているこのブランド、まだコマーシャルが必要なのだろうか。

 ペルー氏は、「ブランド商品の製造業者は、その商品を売っていることを常に世間にアピールしなければならない」と言う。それはどんなヒット商品でも同じだ。

 「視聴者の元へ帰る努力、視聴者に何度も商品の存在を訴える努力をしなければ、競争に落ちこぼれて消費者に気に入ってもらえなくなるかもしれません」

マスタード・ブルー

 店頭で消費者の目を引くため、昔からトミーのマスタードは主にブルーの、マヨネーズは黄色のチューブに入って売られている。

 マスタードの製造はものすごく複雑な技術を必要とするわけではない、とペルー氏は言う。「肝心なことさえきちんと押さえておけば、あとは簡単です。私たちは有名なフランス製マスタードのほとんどの銘柄を知っていますし、特別なマスタードを売っている小さな食品雑貨店へ行くために200キロメートルでもいとわず車で走っていく愛好家がいることも知っています。しかし現実的に考えると、ごく普通の消費者にとってみれば、トミーのマスタードは理想的な商品といえるのではないでしょうか」

swissinfo、ロバート・ブルックス 小山千早 ( こやま ちはや ) 意訳

2006年現在の数字によると、スイスは毎年、約3000トンのマスタードと6600トンのマヨネーズを消費している。

1人当たりの消費量はマスタードが約500グラム、マヨネーズは1キログラム。

市場をリードするトミーは、年間1500トンのマスタードと3700トンのマヨネーズを何百万本ものチューブに分けて販売している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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