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スイス政府「バーゼルの時計・宝飾見本市に、アジアからの出展者の参加禁止」を決定。

4月3日から開催のバーゼルの時計・宝飾見本市からアジアの出展者が余儀なく去っていった。 Keystone

スイス政府はバーゼルとチューリヒで開催される第38回バーゼル時計・宝飾見本市の開催日(4月3日〜10日まで)の前日、アジアで蔓延している重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染防止措置として感染地域諸国からの出展禁止を決定。

この措置はすでにスイスに到着していた香港などからの出展者を困惑させている。香港貿易発展局の代表者は「この見本市の準備で880万フラン(約7億6千万円)相当を使っており、出発前に警告が無かったのが理解できない」と語り、法的措置も考えていると怒っている。

スイス政府の言い分

 連邦公衆衛生局は「この決定はとくにアジア人だけを対象にしたものでなく、3月1日以降に中国、香港、シンガポール、ベトナムに渡航した人全員が対象で、3月上旬に香港で開催された見本市に出席した多くのスイス人も出展できない」と説明。いずれの国も、世界保健機構(WHO)に死者が報告された国だ。ただ、これらの国からの観光客は見本市を客として訪れることはできる。一方、出展を禁止したのは「出展者がスタンドで時計に触ったり、見せたり、客と直接の接触があるため危険と判断した」と述べた。

 謎の感染症SARSの拡大が広まるに従って、開催地であるチューリヒ州とバーゼル州がスイスでの感染拡大を懸念し、緊急閣僚会議を開くように要請したので決定が遅くなったという。SARS感染はスイス国内では4人の疑わしい例が報告されているが、いずれもSARSと確定されていない。

困惑するアジアからの出展者

 3日、香港貿易発展局(TDC)はスイス政府や主催者に対して損害賠償訴訟をすると発表した。TDCはスイスがSARS感染を心配するのは分かるがこの措置は「常規を逸して」いる上、「遅すぎた」決定で、全く受け入れられないと息を荒くしている。TDCの代表者、フレッド・ラム氏は「この見本市は業界内では重要で、参加しないということは一年間の売り上げの20から30%を失うことになる」という。香港の出展者はスイスに次いで大きく、317のスタンド、2500人が参加する予定だった。
 
バーゼル時計・宝飾見本市

 毎年この時期に開催されるバーゼル時計・宝飾見本市はその年のトレンドやデザイン傾向を決定する重要なフェアとして位置付けられている。世界14カ国から2千人余りの出展者が参加し、80万人もの来場者がある。今年は初めて、チューリヒ会場も併せて開催されたが、各国パビリオンからアジア勢を失うと全面積の半分に当たるため、公式開幕は延期されている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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