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スイス、組閣で大地震

新閣僚として就任の宣誓。3本の指を立てて誓うのがスイス式。 Keystone

12月12日の全州議会と国民議会の合同会議の選挙で、クリストフ・ブロッハー司法相に代わり、同じく国民党( SVP/UDC ) 員のエヴェリン・ヴィトマー・シュルンプ氏が当選した。翌13日、同氏はこの議会の決定を受理した。

同氏は、1979年から1989年まで閣僚だったレオン・シュルンプ氏を父に持つ。これで、7人で構成される閣僚のうち3人が女性となった。

 12月12日の全州議会と国民議会の合同会議の選挙でヴィトマー・シュルンプ氏は125票、ブロッハー相は115票の得票となり、過半数票を得たヴィトマー・シュルンプ氏が選任された。しかし、同氏は、議員ではないため議会に出席しておらず、入閣受理の意向決定は13日早朝に持ち込まれていた。

議会の協力を求める

 入閣を受理する意向演説の中で、ヴィトマー・シュルンプ氏は
「非常に重い責任を負った。この任務を果たすためには、各方面からの支援が必要である。ここで開かれる議会は、常に異なった意見が交わされる場だ。意見の違う者同士が尊重と寛容の念を持って臨むことを願う」
 と語った。ヴィトマー・シュルンプ氏が入閣を受理した場合、国民党の議員は同氏およびサムエル・シュミット国防相を支持しないという意向を念頭に置き、それでも協力を望んだものと見られる。
 
 担当する省庁については、今後7人の閣僚で決定される。ヴィトマー・シュルンプ氏は
「どのような省が与えられても、喜びを持って仕事をしたい」
 と語った。現在同氏は、グラウビュンデン州の財務大臣を務めている。

国民党の行方

 昨日の投票では、左派の社会民主党 ( SP/PS ) 、緑の党 ( Grüne/Les Verts ) のほか、キリスト教民主党 ( CVP/PDC ) はヴィトマー・シュルンプ氏に投票することを党内で決定。急進民主党 ( FDP/PLD ) の一部も同氏を支持したと見られている。
  
 一方、国民党書記長のグレゴール・ルッツ氏は、ヴィトマー・シュルンプ氏の入閣受理演説の直後
「国民党は野に下る。総選挙で国民の支持を受けて国民党は、国民議会では最大党になった。今回の合同議会の決定は、ブロッハー司法相を支持した国民を裏切る行為だ」
と演説。12日夕方にもヴィトマー・シュルンプ氏が入閣を受理するのは裏切り行為だと公言していた。国民党が指す「野党に回る」という具体的な意味は今後明らかにされる。

 スイスの連邦政治は大連立とも言える、右派と左派の4党から閣僚を選出し、バランスの取れた政治を行ってきた。これが、スイスの政治の安定性を生んだ。歩み寄りや話し合いがスイス政治手法の伝統でもあった。今回の選挙の結果を受け国民党が野党に回ることになると、議会の議論はさらに活発になり、国民投票の議題がさらに増えることになると見られる。

 なお、副大統領は、ハンス・ルドルフ・メルツ蔵相が兼任することも決定した。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

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連邦大統領 パスカル・クシュパン ( 急進民主党 ) 197票
連邦副大統領 ハンス・ルドルフ・メルツ ( 急進民主党 ) 193票
官房長官 コリナ・カサノヴァ ( キリスト教民主党 ) 124票
モリッツ・ロイエンベルガー環境・運輸・エネルギー・通信相 ( 社会民主党、1995年就任 ) 157票
パスカル・クシュパン内務相 ( 急進民主党、1998年就任) 205票
サムエル・シュミット国防・国民保護・スポーツ相 ( 国民党、2001年就任 ) 201票
ミシュリン・カルミ・レ外務相 ( 社会民主党、2003年就任 ) 153票
クリストフ・ブロッハー司法警察相 ( 国民党、2004年就任 ) 115票、落選
ハンス・ルドルフ・メルツ財務相 ( 急進民主党、2004年就任 ) 213票
ドリス・ロイタルト経済相 ( キリスト教民主党、2006年就任 ) 160票
エヴェリン・ヴィドマー・シュルンプ( 国民党、2007年就任 ) 125票

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