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空から見たスイス、よりリアルになって登場

写真
連邦議事堂(ベルン)の画像比較でも違いは一目瞭然。連邦地理局版(上)とグーグルマップ版(下) Swisstopo/Google Maps

グーグルマップなんてお呼びじゃない?少なくともスイスを空から眺めるなら、連邦地理局(swisstopo)が完成させた国内全土の高解像度航空写真がおすすめだ。

編集部注:この記事は、2020年8月にドイツ語版で配信された記事を翻訳したものです。

これまでになく鮮明で詳細。スイスの最新の航空写真外部リンクを見れば、そんなうたい文句も納得できる。それというのも、よくある衛星画像ではなく低空飛行の飛行機から撮影されているからだ。

これをグーグルマップと比べるのはアナログ放送をハイビジョン(HD)放送と比べるようなもの。連邦地理局(swisstopo)が2017年から撮影を進め、このほど全体が公開された。

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同局広報担当のサンドリン・クロッツリさんは「最新版の航空写真はスイスの景観について貴重な情報をくれる」と話す。とりわけ土地利用計画や考古学、氷河観測、農林地利用などの分野の専門家にとって大きな意味を持つ。一般市民も楽しめる内容だ。

自然災害のモニタリングにも役立つはずだ。「山崩れの際など地形の異常が観察できる」とクロッツリさん。ただし「これらの画像はリアルタイムのものではない」と注意をうながす。「データは基本的に前年に収集されたもの。それでも画像を経時的に比較できるため、地形の変化やずれを観察できる」。

連邦森林降雪国土研究所(WSL)のような研究機関もその恩恵を受けられる。クロッツリさんによると、連邦統計局(BFS)も航空写真を土地利用統計に利用しているほか、各州政府が様々な形で活用している。

ハイキングの計画ツール

クロッツリさんは「観光業界でも、観光客向けに詳細をシェアできる高品質画像は歓迎だ」と考える。自宅やその周辺を上空から見たい人や「スイスの有名観光地をより詳しく知りたい」人も多いようだ。特に今はコロナ禍の影響で国内旅行への関心が高い。

ハイキング客に便利な情報もある。登山やマウンテンバイクのルートの閉鎖や迂回情報が画像に表示されるのだ。ただし、そういった措置が1週間以上続く場合に限られる。声明外部リンクによると、データは毎日更新されている。

飛行機
連邦地理局の高解像度写真撮影に使われる飛行機「ツインオッター」 © Keystone / Anthony Anex

宇宙飛行用の航空カメラ

撮影は全国を州単位で3つのエリアに分割して行われた。2017〜2019年に毎年1エリアずつ撮影飛行を行い、最終的にスイス全土の高解像度航空写真を完成させた。連邦地理局のウェブサイト外部リンクには「この分割方法のおかげで1つの州や自治体の全域を同じ年の画像データでカバーできる」とある。

連邦地理局によると、撮影技術は宇宙航空分野で使われるものから来ている。「このため道路の状態、植生の種類、そして天窓やソーラーパネルといった建物の詳細に至るまで認識が可能」(連邦地理局外部リンク)という。

平野部やジュラ、ティチーノ(ロカルノ周辺)、あるいはブリークまでのローヌ川流域やクールまでのライン川流域など人口密度の高い地域では、10センチメートルという地上解像度を実現するため高度約2千400メートルで飛行した。一方、解像度を25センチメートルとした山間部地方の撮影では高度約6千メートルで十分だった。

カメラ
撮影には宇宙飛行にも使われるライカジオシステムズの空中写真カメラ「ADS100」を使用 © Keystone / Anthony Anex

ひたすら上がる解像度

スイスで航空写真の撮影が始まったのは1920年代。最初白黒だった写真はカラーに変わり、解像度は上がり続けた。連邦地理局によると外部リンク、デジタル撮影に切り替わった2005年以来、解像度は25倍にもなっている。

新型のカメラは、最長100キロメートルに及ぶいわゆる「フィルムストリップ」をたった1枚の画像に収めることができる。こうした撮影を行う場合、飛行機は東から西へと飛ばねばならない。

1つのエリアを最適な形で撮影するには、各フィルムストリップを最低30%オーバーラップさせる。また、全てのストリップを鉛直、前、後ろの3方向で撮影することで3D画像の作成が可能になる。

鮮明さを増した画像はスパイにとっても好都合なのでは?という質問に、クロッツリさんは首を横に振った。「画像の公開が例えば国家の安全保障や機能に差しつかえるとなった場合は、アクセスを制限すれば良い」

(独語からの翻訳・フュレマン直美)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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