スイスの視点を10言語で

トップマネージャーの所得を知る

高額所得者であるトップマネージャーの報酬が明るみに Keystone

上院と下院議会の審議を通り、政府が提案していた上場企業の経営陣の所得の公開が義務付けられることになった。

大企業の経営陣の所得が高額であることは近年、スイスのメディアでも大きく取り上げられてきた問題だ。国民議会(下院)と全州議会(上院)との決定内容の調整がこのほど行われ、企業の決算報告の中で経営陣の所得の総額を公開することが上場企業に義務付けられることになった。

 UBS銀行のCEO(最高経営責任者)の年間所得は2127万3000フラン(約18億8700万円)、医薬品のノバルティスのCEOは2078万6300フラン(約18億4300万円)、クレディ・スイスの副CEOは1200万フラン(約10億6400万円)。一般のサラリーマンは目を見張るばかりの金額だ。経済週間新聞ハンデルス・ツァイトゥングがスイス大手企業206社の昨年の年報を基に出した統計によると、CEOの所得が100万フラン(約8800万円)を越える企業はおよそ9.2%を占めた。

総額のみ公表

 今後公開を義務付けられるのは、スイス証券取引所に上場しているおよそ300社が対象で、その経営陣全員の所得の総額と所得の最高額(ほとんどの場合CEOがこれに該当する)のみ。トップマネージャー一人ひとりの所得は公表される必要はないままとなる。

 公開されるべき所得として該当するものは、給料、役員報酬、ボーナス、クレジット、利益配当等、担保、企業年金などすべての収入にわたる。役員が会社からお金を借りている場合も含み、役員当人のほか役員の配偶者や親戚などでも公開の義務がある。一方、退職した役員で会社からの利益配当などを受けている場合は対象外となる。

 連邦議会では当初、左派が経営陣一人ひとりの金額を明らかにするべきだと要求していた。しかし、経営陣の所得については株主総会で承認を受けるので、ことさら公開するという左派の提案は認められなかった。

コーポレートガバナンスの強化

 連邦政府が上場企業の経営陣の所得の公開を義務付けることを提案したのは、経営陣が自分たちで所得額を決めるため、会社と役員の利害が対立する可能性があることに対応するため。また、株主がこれを知ることで、会社の経営に対するの監視がよりたやすくできるようにすることにある。さらに、経営陣の投資の実態も分かるようになるととなど、コーポレートガバナンスの強化が目的である。

 前出のハンデルス・ツァイトゥングによると、昨年の調査で100万フラン(約8000万円)の年間所得があるトップマネージャーは12人だったが今年は19人に増え、役員としての特別報酬の平均は6万8000フラン(約600万円)から7万3000フラン(647万円)に上昇したという。しかし、庶民がこのような金額を知っても、ただ羨ましいと思うだけではないだろうか。

swissinfo、外電 佐藤夕美(さとうゆうみ)

トップマネージャーの所得
UBS銀行、マルセル・オスペルCEO 2127万3000フラン
ノバルティス、ダニエル・ヴァセラCEO 2078万6300フラン
クレディ・スイス、ヴァルター・キールホルツ副CEO 1200万フラン

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部