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ナイジェリア・アバチャ資金で銀行員、弁護士ら事情聴取へ

故サニ・アバチャ・元ナイジェリア大統領 Keystone Archive

ジュネーブ司法当局は、アバチャ・故ナイジェリア元大統領一族の公金着服およびスイス国内の銀行での不正蓄財隠匿幇助で、大勢のスイスの銀行員、弁護士らから事情聴取することを明らかにした。

6日付けの仏語紙「ルテンプス」が今年後半にかけて約60人の弁護士、ファンドマネージャーらがアバチャ資金関連でジュネーブ検察当局から事情聴取されると報道したことに対し、ベルナルド・ベルトッサ判事は、正確な人数をあげることはできないが「アバチャ一族からの入金を受けた銀行員、アバチャ資金の隠匿に協力した弁護士など大勢の人間から話を聴く」ことを明らかにした。ナイジェリア政府は1999年、スイスにサニ・アバチャ元大統領とその一族、側近らの不正蓄財に関する捜査協力を依頼した。これまでに5人がスイスで有罪判決を受けている。

ジュネーブ当局は、資金源が犯罪に関連しているかどうか判断するため国内のアバチャ資産を凍結し送金ルートを辿る捜査をしてきた。ベルトッサ判事は、次の捜査段階として、アバチャ資金の隠匿に協力した金融仲介業者らに、どのようにして、また何故それらの資産の入金を受け入れたのか説明を求めると語った。「我々はスイスの金融仲介業者によってマネーロンダリングされたかどうかを明らかにしたい。多数のスイス人がアバチャ資産隠匿に協力しているが、当時から資金源が違法であることは分かっていたはずだ。」とベルトッサ判事は述べたが、疑惑の銀行員や弁護士らの名前は明らかにしなかった。

6日付け「ルテンプス」紙は、アバチャ資金3億4000万スイスフランがどのようにしてスイスの銀行に入金されたかについて解説している。それによると、アバチャ元大統領の息子モハマド・アバチャとその側近アブバカール・バグドゥは、ナイジェリアのロシアへの負債を買い戻した。この負債は、大規模鉄鋼所建設費用としてナイジェリアがロシアから借入したものだったが、問題のアジャオコウタ鉄鋼所が操業されたことはないという。この資金をスイスの銀行に入金するにあたり、最初に打診されたメリルリンチには拒否され、Goldman Sachsチューリッヒ支店に入金されたが、1997年9月バージンスブラザース銀行ジュネーブ支店に移された。バージンス側はこの金がアバチャ政権に関連があることを知って来たが、ロンドンのシティーバンクなど複数の銀行や会社からのモハマド・アバチャとバクドゥの信頼性を保証した紹介状から、入金を受け入れたという。

が、98年、金融機関に不審な入金の当局への報告を義務付けた反資金洗浄法がスイスで導入されると、バージンスブラザースはアバチャとバグドゥに資金をどこかへ移すよう要請した。そこで二人は、ジュネーブの金融グループHBKと法律事務所シェレンベルグ・ウィットマーに資金の新たな預金先を相談した。これについてシェレンベルグ・ウィットマーは、1、2件の法的アドバイスをしたにすぎないと証言している。98年6月、資金のうちの2億3、400万スイスフランはドイツ銀行ジャージー島(英領チャンネル諸島)支店に入金された。チャンネル諸島当局は、この送金がマネーロンダリングのためのものかどうか捜査中だ。

アバチャ資金疑惑に関わったとされる会社は、疑惑に関するいかなる証言もしようとしない。が、ベルトッサ判事は、一連の疑惑捜査における英当局の役割に関して批判的だ。「スイスで発見されたアバチャ資金の総額以上の金が、英国金融市場を通して世界に送金されている。スイス当局としては、英国当局の積極的な行動を期待する。」と、ベルトッサ判事は言う。

昨年のスイス連邦銀行協会リポートで、アバチャ一族から2億5000万ドルの入金を受けたクレディスイスらスイスの銀行6行は「組織的な過失を犯している」と強く非難された。「ルテンプス」紙によると、上記6行の他にも、アバチャ関連の資金源チェックの怠慢、犯罪関連資金の警告無視の2件の銀行の過失が確認されたという。

ナイジェリア政府によると、アバチャ元大統領は93年の大統領就任から98年に死亡するまで、30億ドル(51億3、000万スイスフラン)を国外の銀行に持ち出した。送金は家族、側近、取引相手を使って行われた。持ち出された資金のうち約10億スイスフラン(5億8000万ドル)はスイスで、残りはルクセンブルク、リヒテンシュタイン、ジャージー島の銀行に入金された。99年、ナイジェリア政府の司法協力要請を受け、スイスはアバチャ関連の全資産約10億スイスフランを凍結し、うち6000万スイスフランをすでにナイジェリアに返還した。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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