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ネオナチ登場の新「ハムレット」、初演前に議論白熱

これがネオナチ・ハムレット。5月6日のリハーサル Keystone

チューリッヒの市立劇場ショーシュピーレハウスで10日、スキンヘッドのネオナチ(極右)が登場する新解釈のドイツ語劇「ハムレット」の初演日を迎えるが、各方面から批判が集中し、関係者には脅迫状が送りつけられている。

「ハムレット」は初演前から、政治勢力、また劇場役員内部からの強い批判を引き起こした。それに、スイス各紙の活発な報道が議論に拍車をかけ、社会の多方面から怒りの反応を引き起こす結果となった。が、ショーシュピーレハウスのバーバラ・ヒッグス広報課長は「活発な議論を刺激するのは劇場の任務の一つだ」と、社会やマスコミの反応を歓迎すると述べた。

「ハムレット」のドイツ人監督クリスチャン・シュリンゲンジーフ氏は、チューリッヒ市中の一人歩きは恐くてできないと言っており、プロダクションチームの1人は脅迫状を受け取ったという報道に対し、ヒッグス広報課長は「脅迫については真剣に考翌オているが、上演中止はない。」と明言した。

ドイツで最も挑発的な映画・演劇ディレクターとされるシュリンゲンジーフさんは、「私は極右と直接コンタクトしているため、潜在的人種主義者とか反ユダヤ主義者だとの攻撃を受けているのは承知している。また、極右の一部は私の芝居を活動のプラットフォームとして利用しようとしているのも認識している。」と認めながら、彼自身はそのような意思は全くないと否定した。さらに、ネオナチはハムレットの劇中劇の俳優として登場するが、彼自身はこのパートをコメディーとして描いたと述べた。

シュリンゲンジーフ監督は最近、チューリッヒの野外弾劾演説大会でスイス連立与党の1つスイス人民党(右派)の禁止を呼び掛け、スイスで物議をかもしだした。皮肉な事に、「ハムレット」はこれまでのシュリンゲンジーフ監督作品と全く異なった新境地の開拓だといわれる。長年シュリンゲンジーフ監督と一緒に仕事をしているスクリプト・エディターのロバート・コールさんは、「彼は、全く破壊的でない、古典的なアプローチをとった。ドイツ語訳はシェイクスピアの原作に忠実だ。戯作の解釈は、原典にそっている。」と語った。

「ハムレット」の上演日程は、5月10日、12日、13日、19日、31日。Zurich Schauspielhausで。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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