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ノバルティス、熱帯病でシンガポールに研究所を開設

途上国で猛威をふるう熱帯病の撲滅を目指し、ノバルティスが研究所を開設した。 Novartis

スイスの製薬大手ノバルティスは5日、バイオ医薬の研究や生産で「アジアのハブ」を目指すシンガポールに、熱帯病撲滅を目指して研究所を開設した。

名称は「ノバルティス熱帯病研究所」。当初は、途上国で感染が急速に拡大しているデング熱や薬剤耐性結核に対する治療薬の開発を目指す。

同研究所は、ノバルティスとシンガポール経済開発委員会との提携事業で、シンガポールのバイオ医薬の研究所が集まるバイオポリス(「生物学の大都市」の意)に設立された。このバイオポリスには海外からの研究所が多く集まっており、ノバルティスはこの豊かなネットワークも活用する狙いだ。

広まる熱帯病

 世界保健機構(WHO、本部ジュネーブ)によると、東欧と中央アジアの地域を中心に、毎年30万人余りが薬剤耐性結核に感染しているという。現行の抗生物質が効かないため、新たに強い治療薬の開発が急がれている。

 蚊によって媒介される急性熱性感染症のデング熱も同じで、治療薬がまだない。WHOによると、毎年約50万人がデング熱にかかり入院している。

 ノバルティスのダニエル・バセラCEO(最高経営責任者)は、「途上国でこうした感染症が急速に拡大しており、新たな治療法の確立が欠かせない」と訴える。

 このため、ノバルティス熱帯病研究所では当初の目標として、2008年までに最低2種類の新薬で臨床試験を行い、2013年までには新薬の製品化を目指すつもりだ。

目指すバイオ立国

 ノバルティスがシンガポールに進出する背景には、同国が政府主導でバイオ医薬産業の育成に力を注いでいることが大きい。シンガポールに進出すれば、外国の企業でも免税や研究費の補助金などの恩恵が受けられる。

 ノバルティス熱帯病研究所が入居した同国のバイオポリスも、シンガポール政府が多額の国家予算を投じて建てられたものだ。

 バイオポリスでは、実験室などを共同で使用できるため、企業には設備負担が少なくてすむ。また、バイオポリスの敷地内に政府の研究機関や海外の大手医薬品メーカー、バイオベンチャーも多く集まっているため、その中でのネットワークの促進も図れるという。


 スイス国際放送、外電    安達聡子(あだちさとこ)意訳

ノバルティス熱帯病研究所:

ノバルティスとシンガポール経済開発委員会との提携事業。今後8年間の予算総額は約2億フラン(約177億円)に上る。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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