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ノバルティス、鎮痛剤をオーストラリアで回収

バーゼルに本社を置くノバルティス。消炎鎮痛剤で死亡事故発生 Keystone

オーストラリア当局によると、服用により2人の死者が出たことを受け製薬会社「ノバルティス ( Novartis ) 」は、同社が製造する消炎鎮痛剤「プレクシージュ ( Prexige ) 」を同国で回収することにした。

プレクシージュは欧州連合を含む世界50カ国で認可された医薬品で、スイスでは認可を申請中であり、アメリカでの認可はこの秋に予定されていた。

 プレクシージュが回収されるのはオーストラリアが初めて。回収はオーストラリア当局の指示に従ったものである。プレクシージュは世界50カ国で認可され、EU諸国では2006年11月から販売されている。

死亡事故後も「信頼」とノバルティス

 オーストラリア当局は、プレクシージュ服用後、重症の肝疾患にかかった8人のケースを調査したという。このうち2人は死亡、2人は肝臓移植が必要の重症だという。オーストラリアでは約6万人に対し、関節炎、手術後の痛みの緩和など激しい痛みにプレクシージュが処方されている。服用者に対してオーストラリア当局は、肝臓機能の検査をするよう勧めている。

 ノバルティスによると、肝疾患にかかった人はプレクシージュの摂取量が1日200ミリグラムで、1人は400ミリグラムと大量だったという。オーストラリア以外の認可国においては、1日の摂取量は100ミリグラムとなっている。
 
 ノバルティスは回収発表後も、プレクシージュは引き続き安全だという見解にあると発表している。同薬は大ヒットが期待できる商品と位置づけられており、2007年上半期の売上高は、5200万ドル ( 約62億円 ) だった。EU諸国での認可が下りたことで、売り上げを伸ばした。

ライバルも回収されていた

 プレクシージュは、「Cox2阻害薬」と呼ばれる比較的新世代の消炎鎮痛剤で、専門家によると、胃にかかる負担が従来の消炎鎮痛剤より軽いといわれている一方、心筋梗塞、脳梗塞といった副作用も指摘されている。

 同等の消炎鎮痛剤でドイツの製薬会社「メルク ( Merk ) 」の「ヴィオックス ( Vioxx ) 」はすでに、世界的に回収に追いこまれた。最低18カ月服用し続けた患者が、心臓病のリスクが高まったというのが理由だった。また、アメリカの製薬会社「ファイザー ( Pfizer )」の関節炎剤「ベクストラ ( Bextra ) 」も2005年、アメリカとヨーロッパで販売中止となった。これも心筋梗塞の副作用があることが指摘されたためだった。これら2つの医薬品は、それぞれの製薬会社に対して多くの訴訟が起こる原因となった。

swissinfo、スイス通信 イヴァン・リブヘール 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

<ノバルティス>
( Novartis、本社バーゼル )
2007年上半期業績
売上高185億3000万ドル ( 前年同期比15%増 )
利益41億9000万ドル ( 同14%増 )
140カ国に販売製造拠点を持つ。従業員9万1000人。スイスにおける従業員数は1万1100人。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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