スイスの視点を10言語で

バスケットの英雄、セホロシャ選手

「スイスは僕の出身地、そしてやがて戻っていく所」とセホロシャ選手 Keystone Archive

ヴォー州ヴヴェ ( Vevey ) 出身のタボ・セホロシャ選手は、、米プロバスケットボール協会 ( NBA ) で、スイス人として初めてプレイする。

NBAは世界最強のプロバスケットボールリーグである。

NBAでプレイするという名誉を手にしたセホロシャ選手は、今年また、スイスとアメリカの交流を図る機関「スイス・ルーツ ( Swiss Roots ) 」の大使に選ばれた。23歳のセホロシャ選手に、アメリカバスケットボール界での生活、将来の展望などを聞いてみた。

swissinfo : ご両親が国際結婚され、お母様がスイス人で白人、お父様が南ア出身の黒人ということですが、スイスで人種差別を受けた経験がありますか?

セホロシャ : 少しはありましたが、たいしたものではありませんでした。僕は学校で唯1人の黒人か、数少ない黒人の1人であった時期があり、扱われ方に違和感を感じたことはあります。変な風に見つめられたり、傷つく言葉を投げかけられたりといった。一度警官に身分証明書を見せろといわれたこともありましたね。

swissinfo : 昨年の9月から、人種差別が強いといわれるシカゴに在住ですが、人種差別を感じたことがありますか?

セホロシャ : まったくありません。僕の属しているシカゴ・ブルス ( Chicago Bulls ) には、ラテンアメリカやヨーロッパ出身の選手もいます。アメリカのバスケットボール界はあらゆる人種が混ざっている世界ですから。

swissinfo :  シカゴ・ブルスのコーチが「セホロシャは他の多くのNBAの選手が持っていない特別な身体的な利点を持っている」と評価していますが。

セホロシャ : 確かに僕は運動能力がすぐれているし、防御が強いので、抜擢されたのだと思います。長身にもかかわらず、動きが速いので。

swissinfo : スイス人として初めてNBAで戦うということですが、他の選手やファンたちはスイスのことを知っていますか?

セホロシャ : 時計とチョコレート以外はそれ程知られていない。まあ小さい国ですから当然ですね。

swissinfo : スイスが恋しくなることがありますか?

セホロシャ : ええ、少し恋しくなります。NBAのシーズンは8~10カ月続くので、スイスの家族や友達から離れて過ごすことが多いのです。でも定期的に電話で話すようにしているし、幸運にも今年はガールフレンドが一緒にいてくれます。

swissinfo : ところで、この8月にスイスとアメリカの交流を図る機関「スイス・ルーツ ( Swiss Roots ) 」の大使に選ばれましたが、この役をどう受けとめますか?

セホロシャ :  「スイス・ルーツ 」のお手伝いができるのはとても名誉なことです。 アメリカの企業を助けたりする企画はとても大切なことだと思っています。

swissinfo : スイスでのキャリアの後、イタリアやフランスのチームでも活躍し、NBAに抜擢されましたが、ヨーロッパとアメリカのバスケットの違いは何ですか?

セホロシャ : ヨーロッパではチームワークが大切。ところがアメリカでは1人の選手が対戦チームの1人の選手に立ち向かうという、1対1の競技が重視されます。それとアメリカではチーム内に数人のヒーローがいて、残りはヒーローを助けるだけといった役割分担がある。また、アメリカバスケットは攻撃を重視し、そのため肉体的強さが非常に大切です。ヨーロッパより、ずっと肉体的に強靭で、たくましい選手を選んでこの攻撃性に力を入れています。

swissinfo : NBAの世界を支配している膨大な量のお金や、宣伝がいやになりませんか?

セホロシャ : まったく気になりません。ここではバスケットボールの世界はこうして動いているということです。もちろん、今まで知っていた世界とは異なりますが、「郷に入れば郷に従え」ということです。

swissinfo : バスケットボールをやめた後のことを考えたりしますか?

セホロシャ : 毎日考えているわけではありませんが、考えるべきでしょうね。バスケット選手のキャリアはかなり短い。引退の平均年齢が33~34歳です。色々コンタクトをとっていかないといけない。コーチとか、スポーツに関係する職業を考えています。

swissinfo : 腕に2つの刺青がありますが、どういう意味ですか?

セホロシャ : 1つは「ゲームが僕を選んだ」、もう1つが「神が僕の歩を進める」です。はじめのは、なぜスイス生まれの僕がNBAにえらばれたのか理由が分からなかった。そのうち、ゲームが僕をここまで連れてきたのだと分かったからです。2つめは、僕はどの宗教の洗礼も受けていませんが、神の存在、精神的なものは僕にとって非常に大切だからです。

swissinfo、 聞き手 マリ・クリスティンヌ・ボンゾン、里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 訳

タボ・セホロシャ選手

1984年、スイスのヴォー州ヴヴェ ( Vevey ) で音楽家の南ア出身の父と画家でスイス人の母との間に生まれる。

1990年代半ば、バスケットボールを兄と一緒に始める。兄クゴモツォ選手もスイスナショナルチームのメンバー。

2002年、フランスのチーム「シャロン・シュール・サオン ( Chalon-sur-Saôn ) 」に入る。

2005~2006年、イタリアのチーム「アンジェリコ・ビエラ ( Ahgellico Biella ) 」に入る。2006年、スイス人としては初めて米プロバスケットボール協会 ( NBA ) に入り、「シカゴ・ブルス ( Chicago Bulls ) 」に属する。最初の年、シカゴで、80試合をこなした

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部