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マネーロンダリング調査、スイスで急増

スイス当局のマネーロンダリング調査が急増 swissinfo.ch

犯罪や不正行為で得た利益を他人名義や偽名の口座に入金したり、口座を利用し海外送金したりするマネーロンダリング(資金洗浄)調査がスイスで急増中だ。当局はこうした不正資金の根絶に前向きな姿勢を強調するが、その効果を疑問視する声もある。

スイスの監督署によると、資金洗浄の調査数は昨年で、前年比57%増の245件にのぼった。このうち、7社の金融機関が摘発された。

不正資金の調査が増加した背景には、スイスの悪名高い銀行預金秘密番号口座制度(完全なる匿名)が関係している。この金融体制がテロ資金の温床になっているのではないかとの懸念から、テロ資金の封じ込め徹底に向け、取り締まり体制の整備で協力するよう国際社会から圧力が強まりつつある。

スイスの銀行の「匿名性」

 資金洗浄解決に向けたスイスの行動は他の国のよい模範になる——。

 国際的な汚職根絶を目指すNGO団体「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)」は、先月公表した年次報告書でスイス当局の姿勢をこう評価した。

 しかし、国際機関の金融活動作業部会(本部パリ)に勤めた経験もあるバーゼル大学のマーク・ピース教授は、「調査件数の増加が、不正資金による犯罪の解明に貢献していると結論づけるのはどうか」と疑問を投げかける。

 スイスの銀行の「匿名性」を悪用しているケースはまだ相当数あり、特に、外国政府高官が利用するこれらの口座に関する情報をスイスの金融機関が当局に提供していない例は多い、と同教授は指摘する。

 例えば、内紛が30年以上も続くアフリカ中部の最貧国アンゴラの大統領に関して、大統領の家族名義によるスイスの銀行口座にはこの2年間でおよそ400万ドル(約424億円)が、振り込まれているという。

 ピース教授は、「調査件数と有罪判決になる件数の‘落差’は世界的に依然として大きい」と話している。


 スイス国際放送 ビンセント・ランドン  安達聡子(あだちさとこ)意訳

スイスの資金洗浄監督署によると、昨年の資金洗浄の調査数は前年比57%増の245件にのぼった。

このうち、7社の金融機関が摘発された。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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