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京都議定書を達成するために

ディーゼルエンジンから排出される煤塵は特に危険だ Keystone

アルプスと湖で代表される風景を思い起こすと、スイスの空気もきれいだと思われがちだが、実はスイス全土に渡り1年を通じ、煤塵 ( ばいじん ) が許容量を超えている。

連邦環境局 ( BAFU/OFEV ) はこのほど、ディーゼルエンジンなどから排出する微粒子で、人体に有害な影響を及ぼす煤塵の空気中の含有量が許容量を大幅に上回っており、危険な状態にあると警告し、規制を厳しくする必要を訴えている。

 今年も家庭に暖房が入る冬になり、肺がんの原因にもなる空気中の煤塵の量が再び急増すると予想されている。連邦環境局は、排ガスなどと一緒に排出される煤塵の規制は政府の緊急課題だという。一方、連邦議会は、二酸化炭素税の導入案を可決し京都議定書の目標を達成しようとする政府の姿勢が議会にも可決され、国民にも受け入れられてきたようだ。

気温逆転層に溜まる

 普通、気温は上に行くほど下がるが、実際には上空へ行くほど、逆に上昇する場合もある。これを気温の逆転というが、こうした層では上下の空気混合が起こりにくくなり、煤塵などが滞留する。

 今シーズンもこうした気温の逆転が続くようであれば、2006年の冬のように煤塵の量が増加するであろうと懸念されている。前回のように自動車の速度規制、暖炉の使用禁止など緊急措置が州ごとに取られ、ディーゼルエンジンにフィルター装置がない車の走行禁止などの措置も取られることになるだろう。

 連邦政府は今年6月、煤塵、ディーゼル、すすの排出に集中して環境汚染対策に取り組む方針を発表した。特に、欧州連合 ( EU ) の排ガス規制「EURO 5」を取り入れることになっているが、問題は州ごとによる規制に頼らなければならないというスイスの連邦制だ。小さい国土の中で、一部の規制では排ガスの削減にはならないからだ。

二酸化炭素税

 2010年までに、1990年の二酸化炭素排出量の10%を削減するという京都議定書の目標を達成するため、連邦両議会は今年12月8日の会議で、二酸化炭素排出税の導入案を可決した。国全体での環境対策が可決したという意味でも、評価される今回の決定だ。

 今後排ガス量が測定可能なほど大幅に減少しない場合、2009年から灯油1リットルにつき0.06フラン ( 約5.83円 ) 、2010年からは0.09フラン ( 約8.75円 ) 課税されることになる。当初の課税案は、灯油の価格が1リットル0.64フラン ( 約62.19円 ) ( 現在の価格0.76フラン ) に下がった時点で税を導入するというものだったが、この案は否決された。

 都市の賃貸率が6割以上になるスイスでは、暖房費は家主が支払うが、二酸化炭素税により各家庭の暖房費の上昇は否めない。家主たちは二酸化炭素税に反発しているが、断熱などの措置を取り省エネすることも大切だと政府は国民に訴えている。

swissinfo、外電、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

排ガスの中には二酸化炭素のほか、一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、粒子状物質 ( 煤塵 ) などがある。
京都議定書では2010年までに二酸化炭素の量を1990年の排出量から10%減らすことを目標としている。

排ガス規制の基本となる法律。2000年5月1日発効。
京都議定書の目標を達成するための法律。京都議定書の目標が自主規制によって達成されない場合に、同法が適用される。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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