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伝統が強み スイスの銀行

富裕層がスイスに資産を預ける傾向が続いている Keystone

スイスの銀行は近年、グローバルマーケットに積極的に進出し富裕層の資金運用を増やしている。このほど発表になったスイス銀行家協会のレポートでは、スイスの銀行の本質にかかわる優位性が指摘された。

昨年のスイスへの直接投資額は2005年の4兆4000億スイスフラン ( 約425兆円 ) を上回るもようだ。スイス銀行家協会によると、スイスの銀行が常に飛躍しようと努力し、外国市場への積極的な進出と業務の多角化がスイスへの資金流入増の背景になっているという。

 世界で第3位を誇る資産運営センターとしてのスイス金融界の地位は、今後も確実なものであり続けるだろう。スイス国立銀行 ( SNB ) の昨年10月に発表された統計によると、スイスが抱える資金運用資産は総額4兆7700億フラン ( 約460兆円 ) 。スイスの銀行の国外支店数は2000年から5年間で3割増加した。

数は減少、額は増加

 一方、国際市場で活躍する外資系金融機関も積極的にスイスへ進出している。そのスイス国内における運営資産は290億フラン ( 約2兆8000億円 ) と2000年から5年間で倍増した。ただ、資産運営額が増大する中、金融機関数は15年前より32%減少し、個々の運営資産額がますます増えているのが現状だ。
 
 企業買収や合併の取引にスイスの銀行が以前より多くかかわっていることも指摘されている。グローバル化した市場の条件の変化に適応できたスイスの銀行の能力が今、発揮されているという。

スイスの伝統が強み

 スイス銀行家協会はスイスの金融機関を3つに分けて考える。まず、大手はあらゆる金融サービスを手がけ、小型の銀行はニッチ分野を専門とする。一方、中規模の顧客を対象とする金融機関は、コア以外のビジネスでは外注するなどして分業しているのが一般的という。スイス銀行家協会の報告によると、スイスの銀行の資産運用業務は、競争がますます激しくなるなか、マージン幅が狭くなってきていることや規制が強化されていることなどから、厳しい状況に立たされているという。

 しかし、同協会の広報担当者、ジェームス・ネイソン氏によると、スイスはこうした環境変化にも、うまく対応できる土壌があるという。「外国の金融機関も、もちろんプライベートバンキングの国際市場で、そのシェアーを拡大しようとしている。中には、熱心にスイスを手本にしようとする金融機関もある」しかし、簡単にスイスを手本にできるのだろうか。それは、長い年月を経て作られたものだからだ。「スイスの金融機関は特殊だ。富裕層の個人資産を運用するためには、スイスのような環境が欠かせない。つまり、個人資産運用の長い経験があり、常に革新的なビジネスモデルを持つことでサービスの質が高く保たれている。国際経験豊かなバンカーを抱えていることだ」と指摘した。

swissinfo、マシュー・アレン 佐藤夕美 ( さとう ゆうみ ) 意訳

<世界の個人資産運用額>

2004年30兆7000億ドルから2005年には33兆3000億ドルに増加した。
2010年には44兆6000億ドルまで増加すると見るアナリストもいる。
スイス銀行大手のUBSの資金運用額は2兆ドルで、その額は世界1を誇る。クレディ・スイスは1兆1300億ドルを運用する。
スイス国内の銀行数は減少傾向にある。1990年には484行あったが、2005年には337行となった。
スイスで運用される資金総額4兆4000億フランのうち、2兆6000億フランは外国からの流入。残りの1兆8000億フランはスイスの資産家の資産。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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