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個人情報流出:病院のぜい弱な患者情報システム?

専門家は病院の情報システムはハッカーには楽勝だという。 Keystone Archive

チューリヒのデータ保護専門家が実験してみたところ、簡単なプログラムを使って、80%ものスイス病院の入院患者の極秘情報にアクセスできることが分かった。

堅い銀行秘密で知られるスイスだが、データ保護専門家のミシェル・ベニ氏は「銀行秘密保護に関する情報に対しては万全の警戒策が取られ、政治的な意志も強いのに、プライバシーに関わる個人情報だと全く努力がされていない」と嘆く。

情報保護問題は万国共通?

 日本でも住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の本格稼動で個人情報の漏洩問題が話題になっているが、スイスでもハッカー問題は深刻だ。今回の実験ではチューリヒ大学病院の近くに止めた車内からラップトップで病院の何百人もの患者情報が収集されているコンピュータシステムにアクセスできた。

ハッカー楽勝

 「お茶の子歳々」だったというこの実験は「インターネットで誰でもダウンロードできるプログラムで、特別な知識も要らない」とベニ氏は説明する。もう1人のデータ保護専門家のブルーノ・ベーリスビル氏に実験結果について聞いてみたところ、「ちっとも、驚いていない。実験は氷山の一角に過ぎない。新しいテクノロジーはプライバシーへの脅威という新種の危険をもたらしている」と警鐘を鳴らす。

病院、政治家、誰の義務?

 ベニ氏によると、病院は患者の情報を保護する義務があるが、義務を果たすための資金、能力がない。このため、政治家や病院経営者がこの問題に真剣に取り組まなければならないという。一方、スイス病院協会の広報官、シモン・ヘルツアー氏は実験結果について懸念を示しているものの、「情報漏洩については用心しており、一般にスイス病院の個人情報が危機に曝されていとは思えない」と弁明した。


スイス国際放送、サマンサ・トプキンズ、イゾベル・ジョンソン 
    意訳 屋山明乃

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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