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味わい深いのはやっぱり手紙

アンケート:ラブレターをEメールで送ると答えた人はわずか2% imagepoint

「手紙なんてもう誰も書かない」。本当にそうなのだろうか。確かにEメールの利用は増すばかり。だが、スイス人のハートを伝えているのは手紙の方だ。                                         

今やEメールのない世の中は考えられない。だが、手紙文化もまだ健在だ。

 新技術の発達によって手紙の量は減少している。このことは商品の改善や新サービス作りのチャンスとなる一方で、合理化や費用削減もやはり免れそうにない。

手紙とEメールについてアンケート

 手紙とEメールに関する顧客の習慣や好みを詳しく知るために、スイスポスト ( Swiss Post ) は無作為抽出アンケートを実施、先日その結果を公表した。それによると、Eメール利用者の4分の3は、Eメールよりも手紙の方がより個人的で感じがよいと答えている。これに比例して、新メディア ( Eメール、チャット、SMS ) が現れてからコミュニケーションが表面的になってしまったという意見も多数を占めた。

 典型的なEメール利用者の特徴も明らかになっている。30歳以下の男性でフルタイム労働、スイスの都市部に居住。平均して週18本のEメールを受信するが、不快な広告メール ( スパム ) はもちろん含まれない。

 手紙の方は女性にまかせていただこう。手紙の送り主の典型は50歳以上の女性、地方住まいでパートタイムか無職。 ともあれ、結婚式の招待状をEメールで送るという人は男女合わせても1%、ラブレターにはEメールがぴったりと考える人もわずか2%前後しかいない。

 銀行の口座残高通知書や給与明細でも、Eメールの利用はそれぞれ9%と16%とかなり低い。この方面に関しては、書面の方が信用度が高いようだ。

長所と短所

 手紙の一番の長所は個人的であること、一方、短所は郵送料金と配達時間だ。Eメールの方はあっという間に送信されるが、受信者が着信に気づかない可能性もある。

 チューリヒに住む映画監督のサミール氏もそんな経験をしている。「前作映画をドイツでプロモーションしたときに、ハンブルクでは招待状をすべてEメールで送り、ベルリンでは個人的な手紙にしました」。で、その結果は?「ハンブルクよりベルリンの方がずいぶん来客が多かったですね」

 ビジネスの世界に目を向けると、中小企業は現在も書簡を多く利用、大企業の方はEメールに集中している。しかし、「就職の応募書類は郵便で」という企業は全体の81%を占め、「仕事場で交信するEメールの数が多すぎる」と言う人も45%に上っている。

 このアンケートを実施した市場調査研究所「IHA-GfK」のペーター・ホーファ氏は、「ヨーロッパのほかの国との比較は難しい」と言う。スイス国民のインターネット普及率は非常に高い。「ですから、Eメールの量が爆発的に増加するのは自然なことです」

薄っぺらなコミュニケーション

 他方、コミュニケーション専門家のクリスタ・デュルシャイト氏は、Eメールでのやり取りは利用者の文章力を低下させると考える。「電子メディアで使われているような略式の短い文章ばかり書いていると、構造的な長い論文を書く能力が失われてしまいます」

 しかし、電子メディアというのは意思疎通を図る新しい手段の1つに過ぎないのではないだろうか。「Eメールやチャットでのコンタクトは表面的ですが、交際範囲は広がりますね」

 映画監督のサミール氏はEメールをファーストフードに、そして手紙を高級料理にたとえる。「しかし、そのときそのときで両方を使い分けなければいけません」と言葉を添えるのはデュルシャイト氏だ。

 手紙はEメールに押されて絶滅に瀕しているかに見えたが、どうやらその危機を乗り越えたようだ。いずれにしても、スイスポストのホームページには、結婚式から夕食の招待に至るまで、手紙を書く機会や書き方のヒントが豊富に紹介されている。

swissinfo、マリアーノ・マッセリーニ 小山千早 ( こやま ちはや ) 意訳

- アンケートが行われたのは2007年3月初旬。
- スイス全域で700人の個人と300社の企業に電話で質問。
- 実行したのは市場調査研究所IHA-GfK。

手紙は、より個人的で ( アンケートに答えた人の30% ) 保管可能 ( 14% ) 。受取人にも気がついてもらいやすい。短所としては、郵送料金が高く ( 26% ) 配達までに時間がかかる ( 24% ) 。手紙が本当に配達されたかどうかがわからない ( 15% ) 。Eメールはすばやい送信で時間の節約ができ ( 87% ) 、安い ( 15% ) 。特別な準備も不要 ( 15% ) 。

しかし、Eメールは着信に気づいてもらえないこともあり ( 46% ) 、表面的でそっけない ( 31% ) 。

ウイルス感染など、安全性の問題も見落とせない ( 25% ) 。

郵便局と手紙郵送物の85%はビジネス関連で、全体の4割を200の大企業が占めている。郵便部門はスイスポストの総収入の34.2%を占める。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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