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国連人権委員会が北朝鮮非難決議を採択

北朝鮮の核拡散防止条約(NPT)脱退声明を支援する群衆が金正日(キムジョンイル)総書記のポスターを掲げる。2003年1月、ピョンヤンのキムジョンイル広場。 Keystone

ジュネーブで開催中の国連人権委員会(53カ国)は15日、日本人拉致などを含めた北朝鮮の人権侵害を強く非難する決議案を賛成29票、反対8票、棄権16票で昨年に続いて採択した。

北朝鮮非難決議案は前回と同様、欧州連合(EU)が提案し、日本、米国、スイスなどが共同提案国として加わった。昨年の決議の内容に加えて北朝鮮の人権状況を調査する特別報告官の任命が盛り込まれ、外国人拉致については「明確かつ透明な形で緊急な解決」を求めている。

採択決議

 EU主導の北朝鮮非難決議に反対したのは中国、ロシア、インドネシア、エジプトやキューバなど8カ国。中国は「非難するよりも改善を促すべきであり、この決議案は状況を悪化させるだけだ」と述べた。また、多くのアフリカ諸国が棄権した。韓国は昨年は投票時に退場したのに対し、今年は「棄権」票を投じた。人権委員会でのスピーチで韓国は「我々の棄権票は無関心からくるものではなく、南北朝鮮の和解の努力をしており、北朝鮮側が理解を示すように求めている」と述べた。日本も「昨年の人権委員会から何の進歩もなく、拉致問題に関しても建設的な対話が行われなかった」ことを指摘し、北朝鮮へ対話を呼びかけた。

決議案の内容

 決議案の内容は組織的で広範かつ深刻な人権侵害の報告があることに深い懸念を表明し、特に強制労働、政治犯の死刑、人身売買などを挙げた。また、同国に国際機関の関係者らの入国制限をやめるように求めている。外国人の拉致問題については「緊急な」という部分が新たに加わったのみで前回とほぼ同じ内容だった。

 これに対して、北朝鮮は「この決議案は核問題に絡めた米国主導の政治的陰謀である」と反論し、「これに乗せられたEUは面子を失った」と罵り、「米国のイラク占領を人権侵害と思わないのか」とまくし立てた。

国連人権委員会の非難決議

 国連人権委員会は毎年春に6週間にわたり、世界各国の人権状況を協議する国連経済社会理事会の補助機関。現在は日本を含む53カ国の各国代表で構成されている。決議案は政治的に国際社会の反響を与えるものの法的拘束力がなく、特別報告官の設置にあたっても北朝鮮側の協力がなければ実施が難しい。

 なお、今年は3年ぶりに米国が中国政府の人権抑圧を憂慮する対中国決議案を提案したが、中国が「不採決」動議を提起し、ロシアや途上国の支持を得て採決が見送られた。委員会に参加している非政府組織(NGO)の間ではこのような「政治的手腕」で大国が決議案を回避できる現行制度を改革すべきだとの声も出ている。


スイス国際放送、屋山明乃(ややまあけの)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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