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国連人権委員会、年次総会が開幕

国連人権委員会の開幕で法輪功などのNGOが国連欧州本部で抗議に。 swissinfo.ch

15日からジュネーブの欧州国連本部で第60回、国連人権委員会(構成53ヶ国)の年次総会が始まった。

会期は6週間で4月23日まで。今年の議題の焦点は前年に続いてEUが提出する予定の北朝鮮非難決議案とアメリカが3年ぶりに提出するかもしれない対中非難決議だ。

マドリッドでの爆破テロの直後の開幕となった今年は「テロとどう対処するか」というテーマが重要だと今年議長を務めるオーストラリアのマイク・スミス大使が会見で語った。一方、テロ対策のため、当初オープニングに出席する予定だった仏のラファラン首相やスペインのパラシオ外相などの欠席が目立った。

北朝鮮非難決議案

 外交筋によると今年も、昨年に引き続き、英仏などの欧州連合(EU)諸国が議長国のアイルランドを中心に北朝鮮の人権状況を非難する決議案を共同で提出する方針を固めている。日本もこの決議案に共同参加国として参加する予定だが、決議案の内容はまだ明らかにされていない。昨年の決議案は拉致問題を始め、政治的理由による死刑、政治犯収容所や強制労働、脱北者への制裁など非難は広範囲に渡った。

 北朝鮮に対する非難決議案が取り上げられたのは昨年が初めてで、日、米、スイス、カナダなど賛成が28カ国、反対10票で採決された。昨年、韓国は投票時に退席したが、韓国からの報道によると、今年は6カ国協議での「刺激を避けるため」に棄権する方向であるという。

中国への非難決議は?

 日本にとってもう一つの議題の焦点は中国であるが、共同通信などは13日にパウエル国務長官が中国の外相に人権状況改善の重要性を強調する電話会談をしたことを伝えており、3年ぶりに中国に対する人権非難決議案を提出する可能性がある。

 米国務相が2月25日に発表した2003年版、世界人権状況報告書では2002年と比べ、人権問題が後退したとあり、チベットや人権活動家、宗教団体への圧力強化などが挙げられている。米国は2002年の中国の人権状況に改善がみられたとして昨年は決議案提出を見送っていた。米国は1990年以来、ほぼ毎年対中決議案を提出してきたが、中国の根回しなどにより採択されたことはなく、こうした政治的な動きができる人権委員会の制度を改正する声もNGOの間では出ている。

その他の議題

 テロ対策の他、今年注目されているテーマにキューバのグアンタナモの捕虜の扱いなどが含まれる「テロ防止目的ための人権侵害」、同性愛者差別に反対する「性的指向と人権」などといった幅広い議題が話し合われる予定だ。


スイス国際放送、 屋山明乃(ややまあけの)

- 国連人権委員会は毎年春、ジュネーブで国別、テーマ別に人権問題を集中討議する国連経済社会理事会の補助機関。個人や民間団体(NGO)の告発を受けて作業部会や小委員会が審査、調査を行った上で、特別報告者を任命して当該国の同意に基づき現地調査団を派遣。特定の国の非難決議案などにより状況改善を勧告する。ただし、法的拘束力はなく、政治的な圧力により改善を図るのが目的だ。

- 北朝鮮の拉致問題は「強制的失踪に関する作業部会」で取り上げられ、これまでも拉致被害者家族が陳述にジュネーブを訪れた。

- 昨年は初めて北朝鮮の人権状況に関する非難決議が提出され、採択された。EUを中心に日本、米国、スイスなども共同提案国として参加。賛成28票、反対10票、棄権4票で採決され、韓国は退席した。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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