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地球温暖化で、アルプス病む

地球温暖化で最悪の影響を受けそうな地域の1つは、アルプスだそうだ。気温の上昇で、ウィンタースポーツと環境が破壊されそうだというベルン大学の調査報告が発表された。

地球温暖化で最悪の影響を受けそうな地域の1つは、アルプスだそうだ。気温の上昇で、ウィンタースポーツと環境が破壊されそうだというベルン大学の調査報告が発表された。

ベルン大学気象地理学研究所のレポートによると、アルプスは気象の変化に大変繊細だ。実際、地球上で気温が1度から4度上昇すると、アルプスでは5度上昇する。同研究所のハインツ・ワナー教授は、これには3つの要因があると説明する。気象観測におけるアルプスの古来の伝統、アルプスの地理的状況のユニークさ、山脈自体の複雑な構造の3つだ。その上、アルプスは海と大陸のほぼ中間に位置し、欧州の南北のほぼ中央に位置する。そのため、いかなる気象の変化も、比較的狭い地域内で集約され、強く表れると教授は解説する。

調査は、グリーンハウス効果を中心に8年間行われた。ワナー教授は、温暖化の影響は、遠い未来におこるかもしれないことではなく、すぐそこに迫っている現実だと言う。「大気のゆっくりとした温暖化の後、短期間の寒冷期があり、また温暖化へと向かう。これにグリーンハウス効果と、大気中にもっと他のエネルギーが加われば、温暖期と寒冷期の差は、さらに極端なものになる。」

同研究所では、1992年から様々なモデルの調査を行った。最も極端なシナリオは、今後50年で、スイスアルプスの平均気温が5度上昇するというものだ。ワナー教授によると、このケースでは、先ず氷河が溶解し、雪崩がおきる。そして気温が上昇すれば、大気中の水分が増えるため、アルプスに集中豪雨が降る。結果、ウィンタースポーツは、壊滅的な被害を受ける。環境上の影響は、さらに大きい。50年という短期間に、これだけの変化が起きたら、現在の森林地帯は50年以内に消滅してしまうと教授は言う。スロープの維持と水の調節に大切な森林が、アルプスから消えるのだ。

が、地球温暖化の影響を覆せないとは限らないと、ワナー教授は言う。地球温暖化は、人によって引き起こされているのだ。大気圏で煙りをまき散らし、化石燃料を燃しているのは人間だ。

スイスアルプスが受ける影響を抑止するか減速させるかする手段は、地球規模でとられなければ意味がない。30日スイス政府は、ユネスコにアレッチュ氷河の世界文化遺産登録を申請する。これを機会に人々がアルプスの大切さに目覚め、アルプスが直面している危機を認識する事を期待したい。





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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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