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スイス・ティチーノ州、出産手当て33万円を支給

新生児
スイスの一部の地域では、新生児に「ボーナス」が支給される © KEYSTONE / GAETAN BALLY

スイス南部・ティチーノ州は2019年から、出産や養子縁組をした親に3000フラン(約33万円)の一時金を支給する。少子化に歯止めをかけるためだ。

一時金は1月1日から支給され、年間世帯収入が11万フラン以下の家庭が対象だ。ティチーノ州健康福祉局外部リンクのパオロ・ベルトラミネッリ局長は「子供を持つことは喜びあり、負担であってはならない」と話す。

スイス連邦統計局外部リンクによると、同州の2017年の出生数は2774人と死亡数(3230人)を下回り、出生率も住人1000人当たり7.8人と全26州で最低だった。アッペンツェル・インナーローデン準州では11.6人、チューリヒ州は11.4人、ジュネーブ州は11.1人だ。

ベルトラミネッリ氏はスイスインフォに「2040年には州人口の3分の1が定年を超えるとの予測がある。ある程度世代間の釣り合いを保つことは大切だ」と語った。「子育て世帯を政治の中心に呼び戻すことも強く求められている」

スイスで10番目

子育て世帯への一時金を設けるのはティチーノ州がスイスで10番目だ。ルツェルン、シュヴィーツ、ウーリ各州や、フランス語圏のフリブール、ジュラ、ヌーシャテル各州では1000~1500フランを支給している。ジュネーブ、ヴァレー(ヴァリス)、ヴォー州では最大3000フランだ。

ベルトラミネッリ氏は「子供の発達のため、現代の家族には一種の柔軟性が必要不可欠だ。パートタイムやフレックスタイム、無給でも育児休暇を延長できる仕組みなどだ」と指摘し、新しい祝い金で「出産後1年に生じうる収入減をいくらか埋めることができるようになる」と説明した。

一時金への懐疑論

だが出産時1回限りの手当ては不要だと考える州が大半だ。ベルン州議会は2001年に一時金の導入案を審議したが、反対75票、賛成61票、棄権8票で否決された。

ベルン州健康福祉局外部リンクのグンデカー・ギーベル氏は、出産祝い金への反対論は今も根強いと明かす。

「1回限りの給付では、子育て世帯の経済状況を持続的に改善することにはならない。加えて、ベルン州は原則として世帯収入に関係なく子供手当てを支給しており、経済的に豊かな家庭も州の支援を受けている。固まった目標も持続的な効果もないのに、負担が大きい手法だ」。ギーベル氏はベルン州が出産一時金を導入しない理由をこう説明した。

高い子育て費用

スイスの子育てには、子供1人当たり月数百フランはかかる。例えば私立保育園の保育料は、ベルンやチューリヒなどの大都市では1日当たり60~150フランが相場だ。

子育て世帯を支えるため、スイスでは雇用主に従業員への手当て支給が義務付けられている。16歳未満の子供は月200フラン以上、16~25歳の学生・職業訓練中の子供(自身が年2万8200フラン以上を稼いでいる場合を除く)は250フラン以上が連邦法の決まりだ。州によってはもっと多くの手当てを義務付けており、ヴァレー(ヴァリス)州は16歳未満に375フラン、16~25歳に525フランが支給される。

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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)

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