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工事中のレッチュベルクトンネルを見学

30度の気温の中、架線工事が行われていた。レッチュベルクトンネルの中で swissinfo.ch

ベルンとヴァリス/ヴォー州間にあるアルプス山脈の地下奥深く、鉄道専用のトンネルでは世界一長いレッチュベルクトンネルが建設中だ。スイスを南北に縦断するアルペン縦断鉄道(NEAT/NLFA)計画に欠かせないトンネルの一つである。

すでにトンネル内のレール設置工事はほとんど終わり、現在は架線工事が進む。「トンネル内の気温は35度。見学する記者団が被ったヘルメットは頭を締め付け、事故防止のために着たジャケットがさらに暑さを増す。

 見学にトンネルに入ったのは、ほぼ午前零時。入り口から約15キロメートル。頭上には地上まで2000メートルの岩が覆いかぶさっている。架線の責任者であるヴュシュトさんが記者団に深夜にわたる工事を見学させてくれた。

時速250キロ

 架線工事はトンネルがコンクリートで固められ、レールが敷かれてから行われる。「わたしたちの仕事でトンネルは仕上がります」とヴュシュトさん。トンネルの南部の架線工事はだいぶ進んだ。レッチュベルクの架線工事は、比較的狭いトンネルの中で、高速度で電車が走ることに耐えられる条件が要求されるという点で、ほかのトンネルの場合とはちょっと違うのだという。

 レッチュベルクトンネルは単線。来年12月9日から毎日、時速250キロで走る電車がダイヤに従って規則的に走ることになる。しかし、「トンネル内の安全のため多くのテストが必要となります」と言うのは連邦交通局のマンフレット・レルシャー氏。通常以上の空圧がかかるため、架線工事にも慎重さが要求される。電車の走行による空圧のほか、高温、配線の複雑さなどが加わり、こうした条件での架線工事の例がないのだ。

 現在のところ、研究室でのテストが終わり、トンネル内にテスト区間が設置された。今年10月にはまず、時速200キロでのテスト走行が行われる。その後、テスト走行のスピードを時速275キロまで上げる予定だ。

 架線工事には、クンメル+マッターのほか、配電会社のアアレ・テシンやドイツの重工大手ジーメンスなど複数の企業がかかわっている。複数の民間企業が共同で行う工事のため、架線工事の達成には、企業間の調整も重要なポイントだ。

経済活性化の期待

 レッチュベルクトンネルが開通すれば、現在1時間半以上かかるベルンとブリーク(Brieg)間の所要時間が、1時間4分に短縮されることになる。ヴァリス/ヴォー州からベルンが通勤距離になることで、地方の過疎化も防げるのではないかという期待がある。また、観光業の振興にもつながるとのではないかと、経済の活性化への期待がいまからされている。

 深夜1時になって、見学はそろそろ後半に入ろうとしている。南部の入り口へ記者団は歩いて行く。技術設備が置かれると同時に、万が一の事故に備えて作られた乗客の避難場所がある、全長7.2キロメートルの副線のトンネルを見学する。ここはまだ、壁がコンクリートで固められていない。

 連邦議会がアルプス縦断鉄道の予算を削減したことから、技術的に必要最低限だと見られる大きさ、つまり原案の3分の1までトンネルの規模を縮小せざるを得なかった。レッチュベルクトンネルが複線となるように第2トンネルを建設する案は、遠い将来の計画となってしまった。

 深夜2時、見学が終わってトンネルの中から出てきた。外の新鮮な空気が肌に嬉しい。

swissinfo、クリスティアン・ラウフラウブ 佐藤夕美(さとうゆうみ)意訳

<レッチュベルクトンネル>
フリュティゲン(Frutigen)からラオン(Raon)まで線路の距離は35.6キロメートル。
トンネルを掘るのに1600万トンの土砂を発掘した。
2007年6月15日から16日の深夜にかけて公式に開通の予定。

アルプス縦断鉄道(NEAT/NLFA)はスイス南北に走る鉄道網の向上を図るもので、貨物運送をトラックから鉄道へ移行することを狙っている。
アルプス縦断鉄道の完成には、ゴッタルドトンネル(57キロメートル)とレッチュベルクトンネル(35.6キロメートル)の2本のトンネルの建設が要(かなめ)になる。
地盤が弱いなど、地層の問題などが浮上し、予算が大幅に増加。必要性が問われるまでになっている。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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