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新しい「ロシア革命」にスイスも加担

コロムナ(Kolomna)を訪問したヨハン・シュナイダー・アマン経済相(左から2番目)とミシュリン・カルミ・レ外相 Keystone

スイスはロシアの経済インフラの改善に協力している。スイスのヨハン・シュナイダー・アマン経済相は7月13日、訪問先のロシアでエルヴィラ・ナビウリナ経済相とロシア経済の近代化を目指して両国が協力していくことに合意、調印した。

この宣言により、昨年、新たに2013年まで延長された既存の活動計画が拡充された。スイス側は、ロシアのインフラと経済を改善していくためにスイスの工業や研究に関する知識を提供する。

 10日から4日間ロシアに滞在したシュナイダー・アマン経済相は11日、モスクワ商工会を訪問した。その際、「近代的な経済構造を有し、ノウハウや革新的なハイテク製品にまだ発展の可能性を秘めているスイスは、近代化を目指すロシアにとって貴重なパートナーとなるに違いない」と述べた。

 また、スイスのミシュリン・カルミ・レ大統領とロシアのドミートリー・メドヴェージェフ大統領も列席した調印式の後、「これからロシアの市場に入り込んでいくためのパートナーを見つけるのはスイス企業の仕事だ」と述べ、このような協力体制はスイス国内における職場の確保にプラスに働くだろうと強調した。

スイスの目的

 訪問団は今回、政治には関与せず、経済改革に向けた協力に専念した。具体的には商業関係者の訪ロ、チューリヒ・テクノパークの協力など。また、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ/EPFZ)はモスクワ近郊のスコルコヴォ(Skolkovo)に建設されるハイテク産業パークの構築に関わる予定だ。

 しかし、それだけではなく、スイス政府はロシアの世界貿易機関(WTO)加入にも力を注ぐ意向だ。ロシアと世界貿易機関は20年来交渉を重ねているが、先行きは依然として不透明だ。

 「スイスの対外経済戦略は多国的なものを目指している。そのため、国際的に認められている貿易ルールやグローバルな経済界へのできるだけ多くの国の関与を促進したい」とシュナイダー・アマン経済相は言う。

ロシアの支援

 一方で、国際社会におけるスイスの利益保護も忘れてはならない。「スイスはG20に参加すべき、あるいは少なくともそのための話し合いに参加するべきだと考えている。G20の議長国フランスが準備の話し合いの場を作ってくれたこともあった」。2013年にはロシアが議長国になる予定だ。

 また、国際通貨基金(IMF)で現在スイスが占めている理事国という立場を今後も維持していくという意図に関して、ロシアの理解を得ることができた。シュナイダー・アマン経済相は「スイスはロシアにとって重要な国々の代表的存在だと思う。スイスが理事に固執していることを明白にするのは大切だ」と語る

 その重要性は、スイスの大統領でもあるカルミ・レ外相がシュナイダー・アマン経済相の訪ロに同伴し、メドヴェージェフ大統領と会談したことからも明らかだ。

2008年の金融危機はロシアにも大打撃を与えた。それ以後、スイスとロシアの間の貿易量は増加の傾向にある。

2010年のロシアへの輸出額は前年比26%増の26億フラン(約2517億円)。ロシアからの輸入額は前年比41%増の10億フラン(約968億円)。

対ロシア直接投資額は2009年末の時点で62億フラン(約6000億円)。同時期、スイス企業はロシアで7万5000人を雇用。

スイスは欧州自由貿易連合(European Free Trade Association)の加盟国であり、関税同盟国のロシア、ベラルーシ、カザフスタンとの自由貿易協定交渉に関与している。

スイスとロシア間の経済協力3カ年計画は2013年末まで延長された。 

(独語および英語からの翻訳・編集、小山千早)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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