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来年の開催は?どうなるダボス会議

クラウス・シュワブWEF総裁 Keystone Archive

やるべきか、やめるべきか。米同時多発テロ後、何時どこで何が起こるかわからないという危機感が強まる中、毎冬ダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF)の年次総会、通称「ダボス会議」をめぐり、主催者と地元民の間で討論会が開かれた。

ダボス会議は、毎年グラウビュンデン州の小さなリゾート地ダボス村に世界の政・官・財のトップが集まり、非公式なセッティングで重要なテーマを討論する国際会議だ。が、近年国際会議というと暴徒化した反グローバリゼーション勢力に妨害を受ける事を考慮し、今年はスイス警察が威信をかけた第2次大戦以来の厳戒体制をもって臨んだ。スイス全州と隣国リヒテンシュタインから何百人もの警官がダボスに動員され、村の1本のメインストリートは封鎖され、会議場から森の中まで有刺鉄線が張り巡らされた。生活を犠牲にされ、今や利益より損失の方が大きくなったダボス村民は、今年の会議終了後、ダボスでの開催に反対する声を上げた。
今年も次回フォーラムの準備問題が持ち上がる頃、9月11日のテロが起き、ダボスの人々は、2002年のダボス会議開催に強い懸念を表明している。

世界経済フォーラムの創設者で総裁のクラウス・シュワブ氏は20日、ダボスを訪れ地元の住民達と公開討論会を開催した。討論会後、swissinfoの取材に対しシュワブ氏は、ダボス会議中止はテロリストへの降伏を意味するとし「テロリストに降伏するべきではない。WEF年次総会の中止も延期も適切ではない。」と語った。また、シュワブ氏は、現在の世界情勢から会議に出席したがらない招待者が多く、2002年の年次総会出席者は前回よりも大幅に減少するという噂について、「ダボス会議が我々の新しい世界のためのビジョンに貢献できると皆が感じているという事実が、フォーラムは何よりも重要だという事を意味している。だから我々は、招待者は全員出席すると信じている。今のところキャンセルしてきた人はいない。」と打ち消した。

シュワブ総裁はこのように確信に満ちているが、ダボスの住民達はフォーラム開催に強い懸念を抱いている。ダボス観光局のアルミン・エッガー局長は、基本的にはダボスでのフォーラム開催を支持しているが、フォーラムは以前ほどダボスにとって有益ではなくなったのは確かだという。「WEFはダボス観光に大きな恩恵をもたらしてきた。世界のメディアで報道され、ダボスの知名度も上がった。が、今後はどうなるかわからない。皆が不安に思うのはWEFだけの問題ではない。世界情勢全体が不安で、予測不可能なのだ。」とエッガー局長は語った。

昨年のダボスを要塞化したほどの厳戒体制で商売上大きな損失を受けた地元の自営業者らは、フォーラムをどこか他所で開催してもらいたいと強く願っている。ダボスのメインストリートにある小さなデザイナーズブティックを経営するサブリナ・リスさんは、フォーラム開催は商売に大損害を与えると次のように怒りをぶつけた。「今年の会議開催時、この通りは封鎖され警察は安全を保障できないという理由で私達にフォーラム期間中店を閉めるように言った。私達は窓が壊された場合に備えて余分な保険金を払わなければならなかった。損失は6万スイスフラン以上で2週間分の売上げに相当した。ウィンターリゾートのダボスでは、夏季に埋め合わせができる金額ではない。」。CDショップの店員ヨルグ・プッツィさんも「今年のフォーラム開催中、ダボスの店は全部休業させられ、武装警官が小さな村に溢れていた。2002年にはこんな事は起きてほしくない。」と語る。美容院経営者のクリスティナ・ソンダリーニさんは「ホテルなどにとっては稼ぎ時でしょうが、うちのような商売は上がったりだ。もう、ダボスではやってほしくない。」という。

グラウビュウデン州政府とダボス村当局は、2002年の年次総会開催を承認するかどうかのジレンマに直面している。WEF計画委員会のメンバーでもあるクラウス・フーバー・グラウビュウデン州議は、最終決定を下す前に当局は多くの警備上の問題について答えを出さなければならないという。「ダボス商店街の懸念は十分理解しているし、私自身がある程度彼等と同意見だ。我々の最大の懸念は、安全が保障できるかということだ。安全が保障できないならば、フォーラム開催は許可できない。」とフーバー氏。フーバー氏がいうには、最大の頭痛のタネは警備に十分な警官を手配できないという事だ。「スイスには国家警察がないので、他の州警察に応援を頼まなければならない。他州の警察が来年も応援に来てくれるかどうか、まだわからない。」。

さらに、グラウビュウデン州当局は、来年もダボスでフォーラム開催をするならば連邦政府にもっと支援をしてほしいと希望している。警備の費用は約1000万スイスフランと推定され、連邦政府は約半分を負担するとしているが、グラウビュウデン州議会は連邦政府負担分をまだ承認していない。また、グラウビュウデン州は、連邦政府に国際情勢の分析を要請しているが、連邦政府からの返答はまだない。これに対し外務省報道官は、国際情勢とそのフォーラムに及ぼす影響は分析中だが、最終報告はまだ出せないとしている。

州や連邦政府の意向がどうあれ、ダボス住民の多数派は、フォーラム開催に関して結論を出している。反対だ。先述のブティック経営者サブリナ・リスさんにとって、9月11日のテロ、そしてテロ事件から発せられるWEFへの警告は、フォーラム反対の決定的な要素だ。「商売だけの問題ではない。ここに住み、ここで子供を持ち、友人達もいる私達にとって、起きるかもしれない事を心配するのは当然のことでしょう。私の意見が客観的でなく大変主観的な事はわかっている。が、ダボスは自分が住んでいる時分の土地だ。フォーラム開催をやめろとは言いたくないが、ここダボスでは嫌だ。」と語った。

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