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温暖な気候のスイスアルプス南部・私の住むルガーノという街

ティチーノ州でヤシの木があちこちに繁殖している様 swissinfo.ch

皆さんはじめまして。スイスの最南端、北イタリアとの境目に位置するティチーノ州(Canton Ticino)のルガーノ(Lugano)という街で暮らしているリッソーネ光子(かねこ)です。初めて投稿する今回は、「私の住む街」を紹介しますが、これからは、「スイスイタリア語圏ならでは」という情報もどんどん配信して行こうと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 さて、ルガーノの街を紹介する前に、簡単にティチーノ州の説明をしたいと思います。

スイスの全26州のうち一部の地域だけでイタリア語を使う州というのは存在するのですが、ティチーノ州は唯一、州全域でイタリア語のみを公用語として使用している場所です。ですから、スイス国内を移動中に他の州からティチーノ州に入った途端、道路標示やお店、会社などの看板もイタリア語表記のものばかりに変わります。よく見かける街中を走るパトカーもガラっと印象が変わり、車体にある「警察」という文字も、フランス語圏だと「Police(ポリース)」、ドイツ語圏だと「Polizei(ポリツァイ)」だったのが、ティチーノ州になると「Polizia(ポリツィア)」になります。

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 ティチーノ州は、スイスの中では最も日照時間が長く気候も温暖なため、ヨーロッパ各地の人々から「避寒リゾート地」として知られ、沢山の別荘族や観光客が訪れます。スイスと言えば一般的に「雪山」とか「寒い」というイメージを持たれがちではありますが、ティチーノではそれを打ち消すかのようにヤシの木や亜熱帯植物が多く繁殖し、四季を通じて多種多様の花や樹木も楽しむ事が出来ます。

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 ティチーノの人々は、そんな温暖な気候のためなのか、とても陽気でフレンドリー。どこからともなく「チャオ」という言葉が聞こえてきます。ランチタイムやカフェタイム、そして青空が広がる気持ちいい日には、村や町に自然と人々が集まって来ます。愛犬の散歩をする人、パラソルが立ち並ぶオープンカフェでお茶をする人、広場で立ち話をする人、綺麗に刈られた緑美しい芝生で遊ぶ子供たちや寝転がって本を読む人、湖を眺めながらベンチに座ってひなたぼっこをする人、そしてパニーノ片手にウィンドウショッピングする人などさまざまです。イタリアを思わせる町並みや飛び交う言葉がイタリア語のせいか、まるでイタリアにいるかのような錯覚を起こす程です。日本にいる友人などがここティチーノに遊びに来ると皆口々に「ここって本当にスイスなの?」と聞いてきます。ティチーノ州は、自然も素晴らしいですが文化や歴史も自慢のひとつです。スイス全体でユネスコ登録されている世界遺産は11カ所ありますが、そのうちの2カ所はここティチーノ州にあります。ひとつは自然遺産の「サン・ジョルジオ山(Monte San Giorgio)」そしてもうひとつは、ティチーノの州都ベリンツォーナにある文化遺産の「3つの古城と街を囲む城壁」です。機会があったら是非訪れて欲しい場所です。

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 そんなティチーノ州にあるルガーノという街は、近隣の町村らとの合併以来、ティチーノ州でいちばん大きな都市となり、今ではチューリヒ、ジュネーブに続きスイスで3番目に大きな銀行都市に発展しました。ルガーノ駅のある小高い丘からは、山々に囲まれた湖とその周辺に建つ家々など、ルガーノの街全体を見下ろす事が出き、そこから徒歩かケーブルカーで下って行くとルガーノの旧市街に到着します。歴史的な建造物が多く残るこの街の中心には、黄色い外壁が目印のルガーノ市庁舎があります。

 目の前にある広場はいつも人で溢れ、お洒落なレストランやカフェが軒を連ねます。私も友達が来ると必ず連れて行く場所です。市庁舎を背にすると、右にモンテ・サン・サルヴァトーレ、そして左にはモンテ・ブレの二つの山が向き合うように立ち、そのふたつの山に優しく包まれるように青く広がるルガーノ湖(またはチェレーズィオ湖)があります。

過去に多くの芸術家や作家達が滞在していたという歴史的背景もあり、そしてその美術館や展示会などの多さからも伺えるように、文化や芸術に熱心に取り組んでいるルガーノ市らしく、ルガーノ湖畔にはルガーノを愛する多くの芸術家達による彫刻などの作品が飾られ、色とりどりの花々が沢山植えられているため、のんびりとお散歩するには格好の場所です。

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 その昔、ルガーノは漁が盛んで魚を捕るために筌(うけ=イタリア語でナッサ (Nassa))を使っていたそうです。筌を引き上げていた船着き場は、今やルガーノで1番有名なショッピングスポットの「ナッサ通り(Via Nassa)」となっています。湖と平行しているこの通りには、高級ブティックや宝石店が立ち並び、とてもファッショナブルで歩いているだけでウキウキします。

 また、ルガーノには、その歴史は浅いものの、スイスに存在する数少ない公立大学のひとつであるルガーノ大学があります。実は、私もその大学の卒業生です。大学規模が小さいため、教授との距離がとても近くフレンドリーに接してくれ、リラックスして勉強する事が出来ました。生徒達は国際色豊かではありますが、大学で使用されるのは主にイタリア語、そして英語でした。私が通っていた頃は大学始まって以来唯一の日本人だったためそれなりのストレスもありましが、今考えるとルガーノ大学でのキャンパスライフは、環境や気候、そして人々の温かさも含め、大変素晴らしいものでした。

 スイスの南部といっても未だにピンと来る人は少ないのかも知れませんが、イタリア語を話すティチーノ州、そして私の住むこのルガーノの地を機会があれば是非訪れてみてください。スイスなのにイタリアにいるような不思議な体験も出来ますよ!

リッソーネ光子(かねこ)

マリンスポーツ界でアスリートやレポーターとして世界中を飛び回り、1998年にロケで訪れたイタリアに魅せられそのままミラノに移住。その後、縁がありスイスイタリア語圏のルガーノへ移り住んで11年。社会人としてルガーノ大学を卒業後、同大学の大学院でメディアマネージメントを専攻。現在、イタリア語の通訳・翻訳者としてメディアやスポーツ業界の他、多方面で活躍中。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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