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第36回ダボス会議開催

第36回ダボス会議 世界のリーダーたちが集まる会議で、世界がどれほど改善されるかは未知数 Keystone

スイス東部、スキーリゾートのダボスで恒例の世界経済会議(WEF/ダボス会議)が1月25日から29日まで開催中だ。今回のテーマは「創造の必要性」で、政治や企業に対する市民の膨らむ不信感に対する答えを出そうというものだ。

25日の開会式では、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が演説。社会、環境規制などでは各国共通のスタンダードの必要性を訴えた。一方、先進国が保護貿易措置を取ることを批判した。

 また、主催国であるスイスのモリッツ・ロイエンベルガー大統領も演説。「貧困にあえぐ人は生きるのに精一杯で、創造の必要性を訴えても無理」と語り、創造を促進するためにはまずセーフティーネット、思想の自由、人権の保護、教育が必要と訴えた。

今年もそうそうたる参加者

 今年で36回目になるダボス会議には、およそ90カ国から、約2400人が参加する。ドイツ首相など国家首脳が14人、大臣60人、国際機関の代表者65人のほか、常連となったマイクロソフトのビル・ゲイツ氏やUBS銀のマルセル・オスペル氏など世界の企業のリーダー735人が参加し、244の分科会に参加する。日本からは竹中平蔵総務相、中川秀直自民党政調会長らが出席する予定。

 招待されるVIPも多いが、そのほか参加できる人は限られている。たとえば、企業からは、売り上げが10億ドル以上の大企業から一人のみ。参加費は3万7600ドル(約440万円)という。

 メインテーマのほか会議では、中国、インドの台頭、石油高やガス供給問題をはじめとするエネルギーの調達問題などが話し合われる。

ダボス会議の変容

 1971年から開催され続けているダボス会議は当初、ダボスでスキー休暇に来ていた企業のトップが、スキーの合間にプライベートな会合を開いたことが始まりである。クラウス・シュヴァブ氏が作った極内輪の集会は1980年代に急成長し、1987年に「世界経済会議」と名づけられ、ますます世界から注目されるようになった。

 ダボス会議は世界の経済問題を取り扱うばかりではなく、政治にも大きく関与してきた。1990年には、東ドイツのハンス・モドロウ首相(1989〜90年首相)と、ヘルムート・コール首相(1982〜98年首相)が、1992年には南アのフレデリック・デクラーク大統領(1989〜94年大統領、1994年〜99年副大統領)とネルソン・マンデラ(1994〜99年大統領)が、1994年にはイスラエルのシモン・ペレス(1984〜 86年、1995〜99年首相)とパレスチナのヤセル・アラファト氏(2004年没)が会談する場にもなった。

 1999年からはしかし、インターネット、バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなど会議はニューエコノミーに目が向けられるようになっていった。グローバル化の象徴としてダボス会議が非難されるようになり、反対デモの参加者の暴動に悩まされるようになった。過去4年間で、セキュリティのコストは20万フランから860万フラン(1億800円から800億円)に増大。主催者は出席者の安全に不安があると2002年にはニューヨークで開催することで、ダボスからの撤退を匂わせた。しかし、次の年には再びダボスに戻った。今年も、ハリウッドスターなどの参加もあり、以前と変わりなく話題を提供し続けている。

swissinfo、 佐藤夕美(さとうゆうみ) 

1971年、クラウス・スヴァブ氏によって「欧州マネージメントシンポジウム」が開催される。
1987年「世界経済会議」と改名され現在に至る。
同会議の組織は基金で90カ国から1000企業が会員となっている。
今年は1月25日から29日まで「創造への必要性」がメインテーマ

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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