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第37回ローザンヌ国際バレエコンクール 日本人22人が予選通過

昨年1位になったスペインのアレックス・マルティネズさん Prix de Lausanne

今年の「第37回ローザンヌ国際バレエコンクール、プリ・ド・ローザンヌ 」には、DVDでの予選が始まった過去3年間で最高の日本人22人が選ばれ、1月27日から始まるコンクールに臨む。

31カ国192 人の応募者から送られたDVD を、10月に「アーティスティック委員会 」が審査し、最終的に75人が残った。フランス人8人などを除くと、今年も昨年同様アジア勢は日本人22人、韓国人8人、中国人6人と、半数近くを占めた。このコンクールはあくまで将来プロになる力を秘めたダンサーを見出し、奨学金を授与して国際的なバレエ学校への留学を可能にする場であり、競技の場ではない。

日々伸びていく力に注目

 「DVDの審査では、才能、テクニック、課題のバリエーション理解力、個々の動きを結びつける構成力、そして決勝まで残って練習をこなしていく力、いわばプロになるための潜在力を考慮した」
 と事務局長のパトリシア・ルロワ氏は説明した。

 さらに、同じバリエーションを踊っても、その踊り手の個性、文化背景などによりその表現はさまざまに異なる。それは非常に貴重なものだが、肝心なのはその個性的表現を通して「いかに人に訴えるものを出せるか」ということだとルロワ氏は言う。

 1月27日に始まるコンクールでは、昨年と同様15 ~16、17~18歳の2つの年齢グループに分かれ、審査員の前で毎日踊りが採点されることになるが、今年は特にダンサーが日々伸びていく力に注目し、
「コーチが前日に教えたことを、いかに適切に理解して自分のものとし、それを表現できるかというプロセスを見たい」
 と言う。結局このメッセージを的確に理解する能力こそが、将来プロになるために必要な才能の1つになるからだ。

 そのため採点法も、練習期間中のクラシックとコンテンポラリーのバリエーションの点数がそれぞれ4分の1ずつ、またこの2つのバリエーションの完成度の点数がそれぞれ4分の1ずつ計算され、練習最終日の1月31日に決勝進出者約20人が選ばれる。

出会いと成長の場

 今年は審査委員長に「カナダ・ナショナル・バレエ」のカレン・カイン氏が選ばれた。カイン氏は、同コンクールのコンテンポラリーバリエーションを創作したジョン・ノイマイヤー氏の下で長年プリンシパルを務め、ノイマイヤー氏の創作を良く理解しており、それが委員長に任命された理由だという。

 また、審査委員には、1983年にこのローザンヌ・バレエコンクールで入賞し、英国ロイヤル・バレエ団のゲストプリンシパルで現在、熊川哲也氏の「Kバレエカンパニー」に所属する吉田都( よしだ みやこ )氏もいる。

 こうした優れた先輩や、世界一流のコーチ、さらに同じものに情熱を傾ける世界の若者に出会える場がローザンヌだ。また、すでに完成しているものを持ち寄って競い合う場ではなく、6日間という短い期間でも多くのものを吸収して成長し、将来の可能性を発揮して見せる場がこのコンクールだと関係者は口をそろえる。

 また、たとえ入賞しなくても、参加していると多くの一流のカンパニーや学校から招待の声が掛かったりもする。こうして、入賞者はもちろん、過去37年間にこのローザンヌ・バレエコンクールを経験したダンサーたちは、現在世界中で偉大なダンサーとして活躍しているという。

swissinfo、ローザンヌにて 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) 

1973年ローザンヌで創設された「ローザンヌ国際バレエコンクール、プリ・ド・ローザンヌ 」は、15~18歳の若いダンサーを対象にした世界で唯一の国際コンクール。その目的は、伸びる才能を見出し、その成長を助けることにある。「英国ロイヤル・バレエ・スクール」、「スクール・オブ・アメリカン・バレエ」など、世界60カ国以上の学校、バレエ団が協力している。

今年は31カ国192 人 ( 男子42人、女子150人 ) の候補者の中から、21カ国75人 ( 男子22人、女子53人 ) が選ばれた。

予備審査は10月10日、11日の2日間ローザンヌで行なわれ、コンクールの「アーティスティック委員会 ( artistic comittee ) 」がDVD を観て審査した。

今年も昨年と同様、2つの年齢グループに分かれて練習を行い、練習点と完成度の点の合計で、練習最終日の1月31日に決勝進出者約20人が選抜される。

選抜の指標は、才能、身体、技術的条件、自分を表現する力、感性と想像力を持って曲に乗る力、明確な理解力、さまざまなダイナミックな表現に合わせて動ける技量、動きを自分のものとし、それぞれの動きを組み合わせる力など。

2月1日の決勝では20人全員が踊り、約7人の入賞者が選ばれ、同額の奨学金を受け取り一流の国際的バレエ学校やカンパニーに留学できる。

なお、2007年まではバリエーションを3つ踊っていたが、昨年からクラシックのバリエーション1つと、コンテンポラリーのバリエーション1つを課題に選ぶことに決まった。

今年はコンクールの特別展が1月14日から2月1日まで「オラム・ド・オテル・ド・ビル ( Forum de d’Hotel de Ville ) 」で開催されている。過去の入賞者の名前が写真付きで展示され、その横に入賞者がサインしたバレエシューズが並べられている。

2月1日15時の決勝の切符は、電話+41 21 310 16 00 ないしは、http://www.prixdelausanne.org で入手できる。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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