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米国大統領選挙にOSCEから監視団派遣 団長のへーリング氏に聞く

「米大統領選挙へ監視団を派遣することで、OSCEの信用も向上するだろう」 バルバラ・ヘーリング氏 Keystone

欧州安保協力機構(OSCE)に所属し、スイス国民議会議員でもあるバルバラ・ヘーリング氏が、米大統領選挙監視団の団長として派遣されることになった。

米国出発前のへーリング氏はスイスインフォのインタビューに応じ、監視団の役割、米国の選挙制度に対する信用性やOSCEの活動について語った。

——OSCEはこれまでに、アフガニスタンやグルジアなど途上国の選挙を公的に監視する使節を送っていますが、なぜ今回は米国なのでしょうか。

 先進国に監視団を送るのは今回が初めてというわけではありません。英国やスペインなどがOSCEの監視団の派遣を要請したことがあります。今回も米国政府の要請で派遣されます。

——米国は前回の選挙で選挙制度への信用を失ったということでしょうか。

 米国への選挙監視団を派遣する目的として、いくつかの点が挙げられます。まず、米国政治の信用を高めることです。また、一方で、OSCEが国際機関として、その信用を高めるということもあります。OSCEの信用を高める必要があるというのは、特に東側諸国が、OSCEは西側諸国の価値基準でものごとを計っていると常に苦情を述べているからです。西側諸国に対しても同じ基準で対応しているのだということが示せるからです。今回の派遣についていえば、監視団を受け入れる米国市民が、自国の選挙制度に対する信用を高め、それにより米国の政治基盤を強化することにあります。

——OSCEの選挙監視団は、米国から歓迎されているのでしょうか。

 公的機関からは、非常に歓迎されています。われわれが接触したすべての公的機関からは、協力を得られました。今回の米大統領選挙戦は非常に混沌としていますから、選挙監視団を派遣することについては、政界やメディアでは当然のことととらえています。しかし、他方面から非難されているのは確かです。

——米国の選挙制度は他国と比べ操作しやすいのでしょうか。

 各州が責任を持つスイスの選挙制度とは異なり、米国は連邦政府が管理しています。さらに、米国に限らず、投票者がコンピュータを利用して行う電子投票が益々増えてきていますが、電子投票のような新しい選挙方法を導入すると、必ず新しい問題点も出てきます。

——選挙前にすでに操作があったという痕跡がありましたが。

 それについていまは、なにも言えません。たぶん11月4日になると思いますが、選挙が終了したらすぐ監視団の調査報告を発表します。それ以前にわたしが言うことは何もありません。

——11月2日監視団は具体的にどこで何をするのでしょうか。

 選挙日当日だけではなく、監視団は選挙のキャンペーンの内容、各候補者のメディアに対する対応の仕方、選挙民の登録方法、選挙方法なども見ています。選挙日当日には、監視団は10州の投票場に出向いてその動向を監視します。わたし自身は少人数のチームと一緒に、オハイオ州の投票場へ行きます。

——もし、投票操作があると確認されたら、その場で指摘するということもありますか。

 いいえ。OSCEには警察のような役割はありません。監視結果を報告し、操作があった場合の内容を明らかにし、今後の助言をします。対策は次回の選挙に向けて検討され、その責任は米国連邦政府にあります。

——フロリダ州では2週間前に投票場が開かれましたが、すでに問題が浮上しています。幸先が良くないように見えますが。

 このことについても、現在ノーコメントです。もちろん、われわれは、メールやメディアを通して知らされる選挙動向を非常に注意深く見守っています。

——スイスの国民投票などにOSCEの監視団が送り込まれるという可能性はありますか。

 スイスが要請すれば、OSCEは監視団を派遣します。西側諸国がOSCEの価値基準を決めているのではなく、西側諸国自身がOSCEの監視を受け入れるという態度を取ることは、歓迎すべきことです。

スイス国際放送 聞き手 ガビ・オクセンバイン 佐藤夕美 (さとうゆうみ)訳

バルバラ・へーリング 
チューリヒ出身 社会民主党
1990年から国民議会議員特に安全保障問題に取り組む。
OSCE議会の副議長を勤める。

米大統領選挙監視団は、OSCE加盟国55カ国の中から、60人で構成される。
米国の10州を監視。
選挙民の3割が、技術的には電子投票を行うことができるほど、電子政府が広がっている。
OSCEは20年前から各国に選挙監視団を派遣し、選挙の公正性を監視している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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