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糖尿病でもおいしく食べたい!

正確に分量を計ってカロリーの量を考えて作るのがコツ swissinfo.ch

年末、年始にはホームパーティーや外食が多くなりがち。健康体の人でも、カロリーの摂取量が急増。スイスでも食べすぎが気になるシーズンだ。

糖尿病の人もクリスマスを家族で祝い、年末年始には友だちに招待されたり、招待したいのは当然だ。そんな人たちのための料理教室「糖尿病のパーティーメニュー」を覗いてみた。

種類はたくさん量は少し

 料理新聞をスイス全国に発行する「ベティ・ボッシ ( Betty Bossi ) 」では、今年初めて糖尿病に悩む人たち向けの料理教室を開催した。講師のナタリー・ツムブリュンさんによると、この企画が大好評だったため、年末にはクリスマス用にパーティーメニューのコースも開催することになったという。このコースに集まった11人は、糖尿病を患う人か糖尿病患者を家族や友だちを持つ人たちで、ほとんどが前回の「糖尿病の日常の食事」コースにも参加したという。 

 ツムブリュンさんは栄養士で、糖尿病患者用の料理本も執筆した。彼女のレパートリーの中から今日は、11種類の料理を教えてもらう。メニューは、前菜3種類とメインにはブタのヒレ肉とタマネギソースとピスタチオソースのニョッキ ( Gnocchi ) 、デザートもしっかりあって、一般向けのパーティーメニューとまったく変わりなく、たっぷりだ。

 「前菜からデザートまでフルコースを食べることで満足感を与えるような組み合わせです。そのかわり、一つ一つの量は少なめ。そして、サラダや野菜などから始めるのがコツです」
 とツムブリュンさんは説明する。

普通のチョコレートで大丈夫

 「サラダや野菜のスープでビタミンをたっぷり取りましょう。スープに使うウォッカはカロリーはありませんが、香りが良いので美味しさが増します」 
 糖分やカロリーについてポイントを押さえながらのツムブリュンさんの説明を受ける。
 38年前から糖尿病だというモニカ・カウフマンさん ( 53歳 ) が2種類のチョコレートムースを指し
「これには、糖分がありすぎかも?」
 と疑問を投げかけた。ツムブリュンさんは「糖分を計算してみますね」と答えながら
「糖尿病用のチョコレートは使いません。普通のチョコレートで大丈夫。チョコレートには十分脂肪があり、脂肪が糖分を包み、糖分が急激に血液に流れるのを防ぎます」
 と参加者の不安を取り除く。

 説明が終わると、11人は待っていましたとばかり料理に取り掛かり始めた。もともと料理好きで食べることが好きな人たちだ。自分たちの食体験や糖尿病の情報交換をしながら、「美味しいものを作るんだぞ」と料理を楽しんでいるようだ。

 友だちに糖尿病の人がいるというスザン・リートマンさん ( 50代 ) は
「ここで習った料理を友だちに作ってあげるのが楽しみ。わたしはグルメであらゆる料理は試しました。わたしが美味しいと思うものを彼女にも作りたいのです」
 と言う。また、レグラ・ブーハーさん ( 45歳 ) は
「夫が糖尿病ですが、痩せていて、ある程度食べなければならないのです。この前、教室で学んだことを夫に説明したら、納得してくれました」
 前回のコースで覚えた料理は全て試したという。今回もレパートリーが増えることが嬉しそうだ。

次は和食を試したい

 さて、試食の時間になった。パーティーをイメージして、テーブルはクリスマスツリーに飾る赤いガラス球とモミの木の枝が飾られ、赤いナプキンはグラスからこぼれ咲く花のようにアレンジされた。サラダは三角形の皿にカロリーを押さえたクリームチーズを載せたクラッカーで飾られる。レッド・ビーツのスープはエスプレッソカップに盛られ、タイムの枝が添えられる。ちょっとした工夫で、パーティーらしい料理になる。

 糖尿病ではなく、甘い物好きの筆者も試食。普通のパーティー料理と遜色ない。参加者の元気いっぱいなおしゃべりのせいか、美味しさもたっぷり。
「糖尿病の人たちを相手に教室を開くことができることは喜びです。糖尿病の人たちはこの病気を選んだわけではありません。彼らの日常が少しでも楽しくなるようにお手伝いできるのですから」
 とツムブリュンさんは言う。

 「次回は糖尿病用の和食コースも開いて欲しいわね」
 というカウフマンさんの提案に全員がうなずいた。

swissinfo、佐藤夕美 ( さとう ゆうみ )

<この日作った料理>干しトマトとチーズをパルマハムで包んだ前菜、オレンジドレッシングのサラダ、ウォッカ入りレッド・ビーツのスープ、ブタのヒレ肉とタマネギソース、添え物としてインゲンとポテトソテー、ピスタチオソースのニョッキ ( Gnocchi )、チョコレートムース、金柑のコンポート、フレッシュフルーツのチョコレート掛け、クリスマスクッキーが2種類。

1956年、オランダの大手食品会社「ユニリーバ ( Unilever ) 」の商品宣伝のため、同社の資本で料理新聞「ベティ・ボッシ・ポスト ( Betty Bossi Post ) 」をドイツ語とフランス語で発行し始める。1995年には、大手新聞会社「リンギエーAG ( Ringier AG )」 の資本下に。「料理のレシピは当時、母親から娘に代々、口頭で伝わったものだったが、レシピを文書化し、材料をリストアップし、主婦が買い物をしやすくしたことが大当たりした」と広報担当のコルネリア・ポプルツ氏。現在は、年10回発行され、スイス国内90万人の購読者に郵送されている。
現在、料理本の発行やドイツ語、フランス語のテレビの料理番組の製作も手がけている。大手スーパーとの食品開発で提携。1986年から一般向けの料理学校を開校した。チューリヒ市では、日曜日を除く毎日、料理教室が開かれている。モットーはスイスで手に入る食材でスイスの一般家庭の料理を失敗のないレシピで作ること。ポプルツ氏によるとスイス全土におけるベティ・ボッシの知名度は90%。
( Betty Bossi History Sheetより )

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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