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西洋式薬草治療の原点 アッペンツェルの薬草展

オトギリソウは薬草として代表格。肉体性、精神性のいずれの病気にも効力を発揮するため、古くから服用される。 Keystone

アッペンツェル地方は手をかざすだけで止血したり、頭痛を治したりするヒーラーが多く住んでいる場所といわれる。薬草に関しても深い知識があることでヨーロッパ全土で有名だ。

アッペンツェル・アウサーローデンの州シュタインにある民族博物館では、「薬草とそのエキス」と題した展示会が開催されている。アッペンツェル地方の自然の力による昔ながらの治癒方法を展示した。

同展示はアッペンツェル地方ではなぜ、自然の力を借りて病気を治癒する知識が豊かなのかを探っている。薬草を使った治癒方法や治療施設のレベルの高さは、ヨーロッパ全土に知れ渡っている。

ヒーラーを認めた法律

 アッペンツェルの当局は19世紀、ヒーラー(主に自然の力で病気を治す治療師)や薬草による治療を厳しく取り締まろうとしていた。中には患者のいぼを触り十字を切って神様に祈るだけでいぼが取れると放言するような、いかがわしいヒーラーが多く出回ったことなどにも原因があるようだ。しかし、1871年、州民の意思により、病人の治療行為の自由を保障する州法が承認された。それほど、薬草など自然の力を借りた治療方法は、同地方に溶け込んでいたといえよう。
 1965年には健康法が改定され古来の治療法の一部は禁止となったが、アッペンツェル地方ではこうして、薬草治療法がさらなる発展を遂げたと展示は説明している。

薬草の芳香も堪能できる展示

 薬草を使った治療の歴史のほか、訪れた人に薬草を実際に知ってもらおうと、同博物館は特別に様ざまな薬草を植えた花壇を作った。また、ハーブティー、薬草からとったアルコール液(チンキ剤)、塗り薬、ジュースの作り方も教えてくれる。
 薬草による治療方法はアジア特有の治療と思うなかれ。スイスでは高山植物を含め数多くの薬草がいまでも、治療に利用されていることを知るのに良い機会を与えてくれる展示である。

スイス国際放送 佐藤夕美 (さとうゆうみ)

「薬草とそのエキス」展 
4月30日から11月7日まで
アッペンツェル民族博物館 
アッペンツェル・アウサーローデン シュタイン
10時から12時と13時半から17時まで
日曜日は昼休みなし 月曜日は午後から 

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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