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軍需品の輸出が急増

軍需企業「ルアク ( Ruag ) 」の弾薬部門。作業員が品質チェックを行っている Keystone

2008年前期にスイスの軍需企業が海外に輸出した軍需品の量は、前年の同時期に比べて63%以上増加した。輸出総額も2億1200万フラン ( 約221億円 ) から3億4800万フラン ( 約363億円 ) 近くまで増加。輸出が特に増えたのはバルカン諸国と東ヨーロッパ諸国だ。

今年前期最大の輸出先はパキスタンで、輸出額は6700万フラン ( 約70億円 ) 。輸出総額のおよそ5分の1を占めている。

武装する世界

 対パキスタン輸出の半分近くは、エリコン・コントラヴェス社 ( Oerlikon Contraves ) の対空防衛システム24基およびその弾薬類の対価1億5600万フラン ( 約163億円 ) が占める。この取り引きは2007年11月、パキスタンの政情が不安定となったことから連邦政府が中断を申し渡したが、今年4月に再開された。

 パキスタンの後にはデンマークの4300万フラン ( 約45億円 ) 、ドイツおよびベルギーの3500万フラン ( 約36億円 ) と続く。ベルギーはスイスからの輸入額を10倍以上に増やした。イギリスもまた2500万フラン ( 約26億円 ) と、昨年前半に比べてスイスからの軍需品輸入額を倍増させている。

 これまでスイスから大量の軍需品を輸入していたアメリカ、カナダ、ブラジル、アイルランド、ギリシャなどの各国では、輸入額が一部大幅に減少した。それに代わって増加しているのが旧東欧諸国やバルカン諸国だ。ただし、クロアチアやセルビア、スロヴェニア、ボスニアなどの輸入額は少ない。

 新たな大口顧客となったのはルーマニア。同国への輸出額は2200万フラン ( 約23億円 ) を超え、スイスが軍需品を輸出している国の中では7位まで上昇した。輸出額のおよそ半分はルーマニアが発注した31台の戦車が占めている。

 近東ではヨルダン、カタール、サウジアラビアへの輸出が目立つ。さらにアジアのマレーシアやシンガポール、韓国へも合計1300万フラン ( 約14億円 ) の軍需品が輸出された。

 「軍隊なきスイスのためのグループ ( GSoA ) 」はスイスの軍需品輸出の増加に「愕然」としており、中立を掲げる国が世界の武装トレンドを追っていると批判した。GSoAはこのような発展に断固として反対している。

swissinfo、外電

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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