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高齢者にもっと敬意を

スイスでは65歳以上の人口が2050年までに、およそ2倍になる Keystone

スイス社会保険局 ( BSV/ FSIO) が高齢化社会問題のガイドラインを発表した。それによると、高齢者による社会的貢献はもっと評価されるべきだという。

さらに、尊厳ある生活が送れるような物質的サポート、自立と社会参加を育成すること、異なる世代間の連帯を高めることなどを基本のコンセプトとしている。

 このガイドラインによると高齢化社会問題は単に老齢年金問題だけではないという。中高年者の各世代ごとの問題や生活全般に関わる問題、例えば健康問題、住居問題、交通や移動問題、雇用問題などを、統合して検討する必要があるという。

高齢化のプロセスは個人的

 こうして高齢者の生活全般を包括しながら、同ガイドラインは最終的に、以下5つのテーマ、健康とその管理、住まいと移動、仕事と定年へのプロセス、経済状況、社会参加、に分け高齢化社会の問題と対策を検討している。

 その結果、スイスの高齢化社会問題解決への2つの方向性を提示した。1つは、高齢者の潜在的能力を育成しながら、自立性と社会参加を促し、彼らの活躍に敬意を払うこと。2つ目は、尊厳ある人生を送れるよう個々人に合った要求を満たしてあげること。後者は特に重要だ。なぜなら高齢化していくプロセスは非常に個人的なものだからだという。

 スイス連邦議会は、「スイスの高齢化社会対策」を課題の1つに挙げていたが、今回のガイドラインの提出を受け、近いうちその検討を始めるという。

高齢労働者対策

 ところで、スイスのリクルート会社「アデコ ( Adecco ) 」の研究によれば、スイスの高齢労働者対策は他のヨーロッパ諸国に比べかなり遅れを取っているという。ヨーロッパ8カ国を比較する指標によると、スイスの企業より高齢労働者対策で遅れているのはフランスの企業だけである。

 さらに同研究は、2010年までにスイスの労働人口の55%は40歳を超えることを示している。2006年3月におよそ800以上の企業を対象に行われた別の調査では、70%の企業が高齢労働者のポストを確保し続ける対策を行っているという。それは、2020年までに50歳以上の労働者が4分の1から3分の1に増えることを見越してのことだという。

swissinfo、外電 里信邦子 ( さとのぶ くにこ )

スイスの人口は2036年には820万人に達し、その後減少し2050年には810万人になる。

この間、65歳以上の高齢者は、90%増加し220万人に達する。それは総人口の27%にあたる。

欧州連合 ( EU ) は全体として、2050年までに60歳以上の高齢者が全人口の3分の1になる。つまり、スイスも同じ傾向を示していることになる。

2003年の統計によれば、スイスでの55~64歳の労働人口比は他のOECD諸国の労働人口比より高い。スイス70%、日本63%、アメリカ55%、ベルギー27%。

スイスでの定年は男性が65歳、女性が64歳である。

2005年の平均寿命は男性78.7歳、女性83.9歳で、前の年のより多少上昇傾向を示している。

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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