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DVD販売に映画館が異議

上映中の映画のDVDがレンタルできるとなれば、映画館は閑古鳥が鳴くであろうという懸念は深い。 fsc-ent.co.jp

映画館や映画配給会社は、DVDのレンタル業者や販売会社に対しDVDを早々に輸入して、上映中の映画でもレンタルしたり販売したりしているのは問題だと、訴訟を起こしている。

スイスの映画協会プロシネマによると、昨年の映画の興行収入は2億4,000万フラン(約204億円)で、前年よりおよそ9%減少した。また入場者数も1,650万人で前年より15%減少した。減少の理由の一つが、早期のDVD販売にあるとみている。

上映中の映画のDVDが簡単に消費者の手に入ることで、映画館の収益が下がることが懸念される。こうした映画業界の依頼を受けたロジェー・シェヴァラ弁護士は、スイスで上映されている映画のDVDがすでに、市場に出回り、販売やレンタルされていることは問題だと指摘する。この2、3年でDVDの輸入枚数は急増しているという。

特にフランス語圏で深刻

 シェヴァラ弁護士によると、特にフランス語圏では、カナダから輸入されたDVDが市場に出回っており問題だという。カナダ製のDVDは、フランス語と英語で言葉が選べる。カナダにはこうした米国製のDVDが米国から早々に輸出され、これがさらに、スイスに輸入される。フランス語圏ではフランス語で米国映画を鑑賞できるため、消費者のニーズも高い。

 一方、ドイツ語圏で映画が上映される前や最中に入手できるDVDは英語版のみ。英語で映画を鑑賞したいという映画愛好家のニーズは限られる。一般受けするドイツ語版は吹き替えがドイツで行われるため、結果的にスイスには映画館で上映された後に輸入される。そのため問題は、さほど大きくない。

2割の収入減

 シェヴァラ弁護士によれば、市場に出回っているDVDの2割がまだ上映中の映画とみられ、映画館の収入がおよそ2割減ることを意味するという。

 これまでスイスでは、DVDの並行輸入そのものが禁止されていたが4月に発効となった法律により、上映中の映画のDVDの販売のみが禁止されるようになった。規制が緩和されたにもかかわらず、この法律さえ守られていない。理由は、法の解釈による。

 今回被告となっているDVDの販売、レンタル店を弁護するパスカル・ユノ弁護士は「上映後という時間設定は、不明確だ。映画館によって上映期間は違う。また、再上映されることもあろう」と指摘し、法律は守られようがないと言う。さらにユノ弁護士は、「インターネットで米国からもDVDなどは簡単に入手できる時代だ。今回の訴訟は映画館が市場を支配しようと試み、消費者のニーズを阻害する行為だ」と反論している。

 一方、シェヴァラ弁護士は「以前のように、まず映画館で上映して映画館が収益をあげた後でDVD販売店やペイTVが上映する。その後、普通のテレビでも上映するというプロセスを守るべきである」と主張している。


スイス国際放送 ラムシィ・ツァリフェー (佐藤夕美 意訳)

映画館入場者数
2002年 1,900万人
2003年 1,650万人
映画館総入場料収入
2002年2億6,200万フラン(約222億7,000万円)
2003年2億4,000万フラン(約204億円)

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SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

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